5話 双子とお出かけ
「ふんふんふーん」
「……」
俺の右となりは鼻歌を歌い。左隣はちょっと不機嫌な顔をしながら、窓の外を見ている。
「何で……俺が真ん中なんだ?」
「そんなの知らないわよ」
うわー機嫌悪いな。
まぁメアリー様は反対だったしな。
何故こんな状況になったのかそれは約5分前くらい戻る。
俺はメアリー様やアリア様来るのを玄関で待っていた。そしてしばらくすると二人同時に現れたのだ、それから玄関に出ると一つの馬車があった。そこまでは良かった、しかしその馬車を見たメアリー様が声を上げる。
なんでこれなの! っと。
最初は俺は怒る理由がわからなかったが、話を聞いていると納得した。
今回使う馬車は、いつも姫様達が使っているものより小さかったのだ。
もちろんメアリー様はただ小さいから怒っているわけではない。いつも使っているのは広くて上下に座るところがあるのだ。
しかし今回用意された物は座る場所は少ない。
アリア様だけならまだ良かっただろう、しかし今回は俺もいるのだ――。
そしてもちろんこれを仕組んだ張本人はアリア様だ、俺とメアリー様講義したが、押し切られてしまい、挙句の果てに座る位置まで決められてしまった。
そういった経由をへて今現在に至るのだ。
「あのーアリア様?」
「はい、何でしょうか?」
「腕を離してくれませんか?」
「嫌です!」
「そうですか……」
なんでアリア様は俺の腕に引っ付いいるのだ? というかこんな事してアリア様になんの得があるんだろう?
「姫様到着いたしました」
「はーい! わかりました」
「やっと着いた……」
元気なアリア様とは対照的に疲れ切っているメアリー様。
正直、俺もちょっと疲れた。
「さ、行きましょう! 楓様」
「ちょ、ちょっとアリア様!」
「早く早く!」
俺はアリア様に腕を引かれて馬車を下りる。
「へー」
帝都は相当広く場所によって売っている物が変わっている。
そしてここは現代風に言うなら商店街だ。
少し周りを見渡すだけで、色々な物が売っている。
「それで今日は何を買いに来たんですか?」
「それは決まっています! お洋服です!」
「まぁ最初からそう言ってたからね。楓諦めなさい」
「はい……」
そして俺たちはゆっくりと歩き出す。
しかしここは本当に色々な物が売っているな。オルレットでも見たことがない物が沢山ある。
「あ! 楓様あちらに美味しそうなものありますよ!」
「え? ちょ、ちょっと!」
「アリア!?」
突然アリア様は俺の手を引き一つの屋台に向かう。
「いらっしゃいいいいいい!?」
屋台のおっちゃんは随分と驚いた声を上げる。
まぁ当然だよな、この帝都に住んでいてアリア様の事を知らない人はいないだろう。
「あ」
「あ?」
「ああ」
「ああ?」
「アリア姫!?」
「はい!」
「は、初めまして。本日はどのような御用でしょうか?」
見た目的に丁寧な言葉を使う人には見えないが、相手が相手だけに丁寧に対応している。
「はい! 本日はショッピングに来たんですけど、とても美味しそうな匂いがしたので、釣られてきてしまいました」
「そ、それは光栄です!」
屋台のおっちゃんはアリア様のその言葉だけで、とても嬉しそうだ。
「これはなんという食べ物なんですか?」
「こ、これはですね――」
活き活きとアリア様に説明している。
しかし俺はその食べ物を知っていた。
鶏肉を串に刺して、たれを鶏肉に付け焼く。
うん。完全にこれ焼き鳥だよな。
というか、こんな所にも焼き鳥なんてあったんだな。屋台があること自体も結構びっくりだったがな。
「まぁそれは美味しそうですね!」
「本当に美味しいですよ! 良ければお食べになりますか?」
「いいんですか!」
「ええ、どうぞ」
そう言っておっちゃんは一つの焼き鳥をアリア姫に渡した。
「わぁ! 美味しそう。いただきます」
パクッ
「美味しー!!」
「そうですか! 良かったです」
「はい! 本当に美味しいです!」
「アリア、そろそろ行くわよ」
「あ、ごめんなさいお姉様」
「め、メアリー様!?」
「うちの妹がごめんなさい」
「い、いいえ。とんでもないです! むしろ姫様に食べていただいて光栄です! 宜しければ、メアリー様も一ついかがですか?」
「あら? いいの?」
「勿論です! あ。後ろにいる護衛の方もどうぞ!」
護衛の方というのはどうやら俺の事の様だな。
まぁ特に断る理由もないし。ありがたく頂くか。
「はい。じゃあ頂きます」
そう言って俺も焼き鳥をおっちゃんから受け取る。
パクッ
あ――久々に焼き鳥を食べたけど、美味しい。
まさかこの世界で焼き鳥を食べれる日が来るとは思わなかったな。
「あら、美味しいわね」
「本当ですか!」
「ええ、私は嘘は言わないわ」
「ありがとうございます!」
屋台から出てきて、深々と頭をメアリー様に下げる。
しかしこれを見て、改めてこの二人が偉いんだなって実感する。
何度も言うようだが、このおっちゃんが丁寧な言葉を使うようには見えないのだ。むしろフレンドリーにへいらっしゃい! なんて言っても全く違和感がない。
だが、そんな見た目の人ですら、この二人の姫の前ではペコペコと頭を下げる。
「本当にすごいな」
俺は小さく呟く。
そのあとは三人とも焼き鳥を完食した。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま」
「ごちそうさまです」
「ありがとうございます!」
「それで、おいくらですか?」
「そんな! 姫様達にお支払いなんてとんでもない! 無料でいいですよ!」
「ダメです! 確かに私は姫ですけど、姫だからといって無料にしてもらったら、それは食い逃げと同じです!」
「そういう事。だからおいくらか教えてもらえるかしら? ちゃんとお支払いするから」
「は、はい。一本銅貨一枚ですから、三人分で銅貨三枚です」
「はい」
メアリーは銅貨三枚をおっちゃんに渡す。
「ありがとうございます」
「とても美味しかったわ。これからも頑張って」
「ありがとうございます!」
おっちゃんはメアリー様のその言葉に何度も何度も頭を下げてお礼を言う。
「行くわよ、アリア」
「はい! また機会があればこちらに来ますね。本当にごちそうさまでした!」
アリア様は手を振っておっちゃんにお礼を言う。
俺も手を少し上げてから歩き出す。
その後、俺たちが少し離れると、その屋台にたくさんの人が集まるのが見えた。
流石のおっちゃんもこれにはびっくりしたのかあたふたとしている。
まぁ姫二人が美味しかったと賞賛したのだ。周りで聞いていた人たちが集まるのは必然だろう。
「さて、それじゃあ。本来の目的地に向かいましょうか」
「そうですね」
「何処にいくんですか?」
メアリー様がジト目でこちらを見てくる。
あの目はおそらく、そんなわかりきったことわざわざ聞くなという顔だ。
「いや……服を買いに行くのはわかってますよ? ただ、どんな所なのかなと」
「そうですねーとても可愛らしいお洋服がたくさん置いてる場所です! なので私達よく行くんですよ!」
「そうなんですね」
「ええ、それで楓様」
「何ですか?」
「期待してますね!」
あー、やっぱり俺が選ばないといけないか……。
まぁ初めからそう言って、というかそう言われて連れて来られたからな。
「さぁ行きましょ?」
「は、はい」
「お姉様も」
「え?」
アリア様は俺の手を掴み、もう一つの手をメアリー様の方へ伸ばす。
いきなりの事で少し戸惑ってはいたが、伸ばされた手を取る。
「わかったわ」
「はい!」
まぁ今日くらい良いか。
アリア様が真ん中で右に俺、左にメアリー様がアリア様の手を繋いでいる。
「ここです!」
「へー」
「どうです? 可愛らしい建物ですよね!」
確かにおしゃれで可愛らしく、女性に人気がありそうだ。
というか、男が入っていいお店なのか? 凄く入りずらいのだが――
「どうかしました?」
「え? い、いえ」
「別に入っても大丈夫よ。ここ、恋人同士で来てる人とか結構多いから」
俺の心読んだように、的確に助言をくれる。
「そ、そうなんですね」
「ええ、まぁアンタは使用人として来てるんだから、どうどうとしてればいいのよ」
「そうですね……」
「さぁ! 入りましょう」
俺のとメアリー様の手を引っ張りお店の中に入る。
「凄い」
「凄いですよね」
「相変わらずの品揃えね」
入ってすぐに俺は驚いてしまった。
建物だけ見てれば可愛い物が多いのかと思ったが、可愛い感じの物だけでなく、様々な服を取り扱っていた。
これだけ多いと、このお店だけで欲しい物が手に入ってしまうだろう。
「さて、楓様?」
「な、なんですか?」
「選んでください」
「本当にこいつに選ばせるのね……」
やっぱり俺が選ばないとだめなのか。
仕方ないか……とりあえず、アリア様が似合いそうな服を選ぶとするか。
うーん何がいいかな。
今着てるやつも、とても似合ってはいるが、白色だからな、もう少し他の色があってもいいかもしれないな。
お、あれとか良いな。
俺は少し奥においてあるワインレッド色のドレスを手に取る。フリルが付いて首元には可愛らしいリボンがある、これならアリア様に似合いそうだ。
「これなんてどうでしょう?」
「はい? どれです? あ――」
「へー」
アリア様は俺が見せたドレスに目を輝かせ、メアリー様は感心した顔をする。
「すごくかわいいです!」
「ええ、アリアに良く似合いそうね」
どうやら、俺が選んだ物はお気にめしたようだ。
「じゃあ。私試着してきますね!」
「ええ、行ってらっしゃい」
俺からドレスを受け取ると、奥の試着室へと入っていった。
「アンタ意外とセンスいいのね」
「どうでしょうね……おそらくですが、誰が来てもあのドレスを選んだと思いますよ」
「それは無いわね。モニカとかならもしかしたらあれを選んだかもしれないけど、流石に全員が同じ物を選ぶことは無いわ」
「そうですか」
それから、会話が途切れ、メアリー様と俺はアリア様が出てくるのを待っていた。
「お待たせしました!」
しばらくしてアリア様が試着室から出てくる。
その姿に俺は思わず見とれてしまう。
可愛い――純粋にそう思った。
隣を見てみると、メアリー様微笑んでいる。
俺が視線を感じたのかこちらの顔を向ける。そしてすぐに照れ臭そうに顔を逸らす。
「どうですか? 楓様、お姉様」
「凄く似合っています」
「ええ、似合っているわ、流石私の妹ね」
「お二人ともありがとうございます」
俺たちにお礼を言うとアリア様はメアリー様の方に顔を向ける。
「な、なに?」
「次はお姉様が選んでもらう番ですね!」
「え!?」
その言葉にメアリー様は固まる。
「わ、私はいいわよ! 自分で選ぶから!」
「せっかくですから、選んでもらいましょうよ!」
「だからいいって!」
「楓様私が抑えておきますので、選んできてください」
「ちょ、離して! 選ばなくていいからね、楓!!」
困った……俺は一体どっちに従えばいいのだ。
ふと、目線を横にずらすと、一つのドレスが目に入る。
「あのドレス……」
俺は何かに誘われるように、黒色のドレスに近づき手に取る。
「まぁ!」
「それって、まさか……」
「どうですか? メアリー様?」
「いいじゃないですか! ねぇ? お姉様」
「かーえーでー私は選ばなくていいって言ったよね?」
めちゃくちゃ睨まれた。結構怖い。
「とりあえず着てみてくださいよ、きっと似合いますから」
「そうですよ! さあさあ!」
アリア様は俺からドレスを受け取ると、メアリー様を連れて試着室へ連れて行った。
「わかった! わかったから! 自分で着替えられるから――あん! どこ触ってるの!?」
「うわー、相変わらずお姉様の体、綺麗ですね」
「ちょっと変なとこと触らないで! というか声が大きい、楓に聞こえたらどうするの」
「大丈夫ですよ。むむ……双子なのになんで私より胸が大きいんでしょうね……羨ましい」
「そんなの知らないわよ! 本当にもう触らないで、くすぐったい」
声がまる聞こえなんだがな……。一体あの試着室で何が起こっているのだろうか?
男としては純粋に興味はある。まぁ、突撃なんてしないが。
「お待たせしましたー!」
「はぁはぁはぁはぁ」
出てきたメアリー様は何故か息が上がっている。本当に何があったんだ。
「ちょっと」
「はい?」
「背中がすーすーするんだけど?」
「まぁ……そういうドレスですから」
そうなのだ、あの黒いドレスは背中が開いているタイプだった。
おそらく、メアリー様の性格だ、そういったドレスは着たことが無かったのだろう、ちょっと顔が赤くなっていて、恥じらいを感じる。
「変態」
「いや、そういうドレス着ている人いますし、あと俺は変態じゃないです」
「あはは、お姉様照れてるんですよ、でも、良くお似合いですよ? ね、楓様」
「そうですね、とても似合っています」
「うー」
先ほどより顔が真っ赤になっている。
気が強い姫だとは思っていたが、意外と可愛らしいところもあるんだな。
「まぁお気に召さないのなら、買わなければいいだけですから」
「いいえ、買うわ。一応、選んでくれたものだし、デザインは好きだから、観賞用に部屋に飾っておく」
「そうですか」
俺は苦笑いを浮かべる。
ドレスなんだしできれば着てほしんだけどな。
「ふふッ。あ、私ももちろん選んでくださった、このドレス買わせていただきます!」
「ありがとうございます」
そこ後は再び二人は試着室に入り、服を元々来ていたドレスに着替えて、俺が選んだドレスを持って会計を済ませた。




