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転生黙示録  作者: 水色つばさ
2章 双子の皇女と黒の剣聖
26/63

2話 朝食

 翌朝、まだ日が出て間もない時間に目が覚める。

  師匠との修行がいつも朝早かったからそれが習慣着いてしまっているのだ。

 しかし困った今の俺には何もすることが無い。帝都に向かってる時はそのまま歩きだせば良かったのだが、ここは帝都にある城だ。

  流石にここでは素振り等もできない。

  棚に本があるみたいだし、それでも読んで暇を潰すか。

 

  コンコン

  三冊目の本が読み終わろうとしていた時だった、部屋の扉がノックされる。

 

「どうぞ」

「失礼します上代様。朝食のご用意が出来ました」

「わかりました」


 そうか、本を読んでいて気が付かなかったが、外がだいぶ明るくなっている。

  俺は椅子から腰を上げると昨日この部屋に案内してくれたメイドさんの元へ向かう。

 

「それでは、食堂へご案内いたします」

「お願いします」


 俺はゆっくりと先を歩くメイドさんの後ろを付いていく。しばらくすると一人のメイドさんが立っている大きな扉の前に辿り着く。

  どうやらここが食堂の様だ。

  そして俺を案内してくれてメイドさんは立っていたメイドさんとは反対に立つ。その後洗礼された動きで扉を開ける。

  最初に目についたのが長テーブル、そしてその次が一番奥の真ん中に座る二人の女の子と、更にその後ろに立つ背が高くガッチリとした体つきをしている男性の姿だ。

 

「おはようございます楓様」

「おはよう」

「……」


 扉が開けて最初に挨拶をしてきたのはアリア様だ、その次に挨拶をしてくれたのはメアリー様。アランは挨拶をしなかった。

 

「おはようございます。アリア様、エリー様」

「挨拶はちゃんとできるのね」


「ふんっ」と鼻を鳴らし俺に対する嫌味を吐き捨てる。

 昨日は無言でいる事も多かったからな、この態度も仕方がないと言える。

 何よりこっちが先に無礼を働いているから、こっちからは何も言えない。

 

「お姉様……」

「これぐらいは許して頂戴」

「わかりました。ですが――」

「わかっているわ、今日からこいつ――上代楓はここで使用人としてしばらく働くんだから、あまりこういうことはしないわ」

「はい。ありがとうございます」


 自らの姉にお礼を言うと、再び俺に顔を向ける。

 

「さぁ! 楓様。席に座ってください」


  アリア様の横の席にはフォークとナイフが並べられている。その他の席は何も置かれていなのでおそらくあそこが自分の席だと思われる。

 

「わかりました」


 俺は返事をしてゆっくりと歩き出す。

  そしてアリア様の隣の席に着くと近くに居たメイドさんが椅子を引いてくれた。

  そのメイドさんに軽くお礼を言って座る。

 

「で、俺は今日からここの使用人として働くんだが? 朝食を姫様達と食べるんだ?」

「私は反対したわよ。でもアリアが」

「はい! 確かに今日から楓様は使用人として働いてもらいます。ですが、お食事くらい一緒に召しあがりませんか?」


 なるほど、名目上使用人として雇うが扱いとしては食客として大差ないようにしたな。

  本当にアリア様は……何故、俺にこだわる?

 

「わかりました。ではお言葉に甘えますね」

「はい」

「そろそろ食事を始めるわよ」

「ごめんなさいお姉様」


 姉に謝罪を言うと無言になり二人はゆっくりと食べ始める。。

 しかし俺はいまだ食事を始めない、それは何故か? 俺はテーブルマナーを知らないのだ。

 

「どうかされましたか?」


 俺が一向に食事を始めないのが気になったのだろう、アリア様が心配そうに聞いてくる。

 

「もしかして苦手な物でもありましたか?」

「い、いやそういう訳ではないです」


 困ったな、ただテーブルマナーを知らなくて食事を始められないだけなのだが、変な心配をさせてしまった。

  ふと、メアリー様と目が合う。そして深いため息をこぼした。

 

「外側」

「え?」

「カトラリーは外側から使っていけばいいのよ」


 カトラリー?

  俺が何のことなのかわからずに頭を傾けていると、続けてメアリー様が口を開く。

 

「フォークとナイフ」


 二つの単語を言うと。察しなさいよと顔をこちらに向けてくる。

  もしかして、カトラリーとはこのフォークとナイフの事なのだろうか? だとすれば、先ほどメアリー様が言っていた外側から使えばいいというのは、俺に使う順番を教えてくれていたのか。

 

「え? え?」


 メアリー様の発した言葉の意味を理解出来ず困惑しているようだ。


「アリア様」

「はい?」

「苦手な物は入っていません。ただ、少し考え事していまして、今から食べますね」

「は、はい」


 俺はメアリー様が教えてくれた通りに外側から使っていき、わからない事が出てきても先ほどと同じ様にメアリー様が手助けしてくれて、無事朝食を終わらす。

 

「楓様」

「何ですか?」

「宜しければ今夜お部屋にお邪魔してもよろしいですか?」

「ダメです」

「何故ですか!?」

「それは教えられません」


 アリア様は意外と抜け目がない人だからな。もしかしたら、俺が本当は覚えているのでは疑っている可能性もある。

  まぁ実際覚えてはいるのだが、それで探りを入れられるのは面倒なのだ。

 

「わかりました」


 しょんぼりとしてしまった。

  なんだか申し訳ない気持ちもあるがここは我慢しておこう。

 


 ☆☆☆


 今日一日の仕事が終わった。と言っても殆ど仕事という仕事をさせてもらっていない。

  やらされたのは部屋の掃除と買い出しくらいだ。

  流石にこれが使用人の仕事じゃない事くらいわかる。

  いや確かにこれも使用人の仕事の一つかもしれない。しかし、これが全てではないはずだ。

 少し納得はいかないが、働いてる事には変わりはない。

 

「全く……アリア様ももっと俺をこき使ってもいいのにな」


 とりあえず、今はある人にお礼を言いに行かないとな。

  身だしなみをしっかり整えて自分の部屋を出る。

  そして俺は奥の方にある二つの豪華な扉がある場所に向かう。

 

  「えっと。確かこっちの部屋だったよな」

 

  俺は昼間教えて貰った事を思い出しながら、扉をノックする。

 

「はい」


 ノックをしてしばらくすると、中から声がする。

 うん。この声は間違いなく彼女の声だ。

  部屋を間違えなくて良かった。

 

「誰?」

「上代楓です」

「あーアンタね。何か用?」

「今朝のお礼を言いに来ました」

「今朝? あーあれね、別にいいわよあれくらい。でもそうね、丁度いいかもしれないわね。入ってきなさい鍵は開いてるから」


 丁度いい? 俺は疑問を浮かべながらも扉を開ける。

  そして目に入ったのが、俺の部屋とはくらべものにならないくらいの高級そうな家具に、ピンク色の可愛らしいベッドだ。

 

「何じろじろ私の部屋を見てるの?」


 俺は声のした方へ顔を向ける。するとそこにはこの部屋の主の姿があった。

  そう――メアリー様だ。

 

「いや、俺の部屋より高級そうな家具があると思ってな」

「そう……」


 どうやら先ほどまで本を読んでいたようで、手に持っていた本をパタンっと閉じて棚に戻す。


「それで今朝の事をお礼言いに来たんだったけ?」

「はい。今朝は助かりました、ありがとうございます」


 俺は深々と頭を下げる。

 

「頭下げなくていいわよ。それに本当に大した事無いから。それよりも」

「ん?」


 メアリー様は先ほど自分が座っていた椅子をベッドの近くまでもっていく。そして自らはベッドに座り椅子を指をさす。

 

「ん」

「え?」

「この椅子に座りなさい」

「は、はい」


 俺はメアリーに言われた通りに椅子に座る。

 

「貴方本当はアリアの事覚えてるじゃない?」

「……」

「沈黙は肯定とみなすよ?」

「……」


 沈黙は肯定と言われても俺は沈黙する。メアリー様試しているのだ、もし仮にここで否定してもさっきの沈黙は何だったのかということになる。

  そうなると、否定も肯定に捉えられる。

  だから俺は先ほどと同じように沈黙を選ぶ。。

 

「引っかからないか」


 やはり試されていたようだ。

  アリア様もそうだけど、この姉妹想像以上に頭が回る。

 

「何がですか?」


 ここはあえてわかってないように演じる。

  ここも反応してしまったら、メアリー様の考えを読み無言を選んだ事がバレてしまう。

 

「ふーん」


 まただ……またこの目をした。

  昨日も彼女は同じ目をしていた。この目はとても怖い、だけどその目は人を魅了する目だ。


「正直な話。私は貴方が嘘をついていると思っている。だけど、貴方は否定もしなかった。だから昨日付いた嘘は見逃してあげる」


 嘘をついている事が彼女の中では確定しているようだ。

  あの嘘は俺に俺に関わってくるアリア様を遠ざけるための嘘だ。

  メアリー様は特に俺に関わろうとしていない。だから嘘を付く事ない。

 

「お話はそれだけですか?」

「いいえ。少しだけアリアの事教えてあげる」

「え?」


 俺は驚いた顔をした。


「何を驚いているの?」

「いえ……こんなどこの誰かもわからない奴にアリア様の事教えてもいいのですか?」

「アリアが心から信頼してるんですもの、少しくらいなら問題ないと判断したのよ」


 メアリー様は本当にアリア様が好きなんだな。

  でなければ、妹が信頼しているからって、自分も信頼するなんて普通出来ない。

  いや――少し違うかもしれないな。

  彼女が信頼しているのは俺ではないな――アリア様だ。

  俺には一切信頼していない。


「アンタとアリアの間に何があったのか知らない。だけど、アリアがアンタが覚えてないと言って見せたあの顔、あんな顔は見たくないのよ」

「……」


 俺は答えない。いや――答えられなかったのだ。

  アリア様はココナと仲が良かった。そしてココナを通じて俺はアリア様と出会った。

  俺とはそんなに関わりは無かった。だけどそんな短い時間でも彼女が優しいという事はわかる。

  彼女だって俺が嘘をついている可能性を考えないわけがない。だけど彼女はそれに触れてこなかった。

  メアリー様の様に「本当は覚えているんじゃないですか?」と言ってきてもおかしくないのだ。

 

「上代」

「はい」

「アンタもわかっていると思うけど、アリアは優しい子なの」

「はい」

「だから、これからアリアの事を少しだけ話す。それを聞いたうえでアリアとの接し方をもう少し慎重にしてもらえないかしら? さっきも言ったけどあんな顔は見たくないから」


 俺だって見たくない。ココナの友達をあんな風に扱いたくない。

  むしろあの時覚えていると言いたかった。普通の何でもない会話をしたかった。だけど、ダメなんだ。今の俺はあの聖女の様な子と関わってはダメなのだ。

  俺の手が血で汚れているから? それもある。だけど一番の理由は――俺はいつ死んでもおかしくない道を進んでいるだらだ。

  俺が彼女と仲良くなれば俺が死んだとき彼女を悲しませてしまう。だから俺は彼女と距離を取るのだ。

 

「……わかりました」

「……その言葉だけ信じるわよ?」


 そう言ってメアリー様はゆっくりと語り始めた。


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