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転生黙示録  作者: 水色つばさ
1章  転生と出会い
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20話 ココナ・エンドゥ

 私はココナ・エンドゥ。

  暗殺者の家系に生まれた長女……。

  私はこんな家庭に生まれたくなかった。

  普通の家庭に生まれたかった。

  どうしてこんな家庭に生まれたのだろう?

  小さいころに一度、お母さんに聞いてみたことがあった。「どうして私はみんなと遊んじゃダメなの?」と。お母さんは涙を流しながら抱き寄せ「ごめんね」と何度も言った。

 それからは私は何も言わない事に決めた。お父さんはともかく、お母さんは優しくて、大好きだったから。



  だから、そんなお母さんを泣かせるようなことを言うのをやめることに決めた。

  それから数年が経ち初めて私に人殺しの依頼が来た。

  私に人殺しをさせることをお母さんは反対した。その度にお父さんに暴力を振るわれていた。

 私はお母さんを殴るお父さん――ワール・エンドゥを許さなかった。

  だから、初めて私に人殺しの依頼が来た時。反対してお母さんに暴力を振るっているアイツの前に出て睨む。




  その時のアイツの顔は覚えている。まだ齢12の私に怯えていた。

  その後、完璧に依頼をこなした。

  初めて人を殺すはずなのに、全く躊躇いが無かった自分に異様感を覚えながら、帰宅すると、そこには一人の鷲の顔をした魔族が立っていた。

  お父さんはその人物に尊敬の眼差しを向けていた。まるで信仰している教祖が自らの目の前にいるかの様な表情だ。あんな顔は今まで一度も見たことが無かった。

  そしてその横に血を流しながら倒れているお母さん――。

  驚き直ぐさま状況を確認した。そして、気が付く。魔族の手が血で汚れている事に――だけど、怒りに任せてその魔族を攻撃しようとは思わなかった。

 


  何故なら。見た瞬間わかったから。この魔物はちょっとやそっとの実力者じゃ相手にならないと。

  悔しかった。そして無力な自分が許せなかった。

   その魔族は振り返る。おそらく私の殺気を感知したのだろう。

  そしてまるで面白い物を見つけたかのような笑顔を向けると、私に近づいてくる。


  そして耳元で呟く。「辛いか? 悲しいか? だったら私を恨むといい。そして、自らの妻を差し出した君の父親を恨むといい。君が大きくなって、再び私の前に現れれば、その恨みを受け止めてあげよう」そんな呪いの様な言葉を残してそいつは出て行った。

 


  あれから五年――

  私は鷲の姿の魔族を恨み、自らの父を恨み、そして、任務をこなすたびにこの世界の醜さを目にして、世界を恨んだ。そして裏の世界では、私の名前を知らない人はいない程に実力をつけていた。

  そんなある日、私は一人の男の子と出会った。

  それは、いつも通りに依頼をこなして家に帰った時だ。

 


 彼は居た。

  そして彼と目が合った。その時だ――私の胸は大きく高鳴った。

  彼の瞳、姿に目が離せなくなった。彼は私と同じ『瞳』をしている筈なのに、この世界の人間とは思えなかった。

  まるで、この世界とは違う世界から来た人の様にすら思えた。

  その後、彼の名前が『カミシロカエデ』という事を知った。




  私はカエデ君と会った時の胸の高鳴りが気になり、聞こえは悪いが彼に付きまとう事にした。

  しかし、カエデ君と接すれば接するほど、私は胸の中が満たされている気がした。

  そこで初めて気が付く。私のこの気持ちが恋であると。

  だけど、今だから分かる。私は彼と出会った時点で彼に恋する運命だったんだって。

  カエデ君は言った。「人って誰かに決められて動くものじゃないだろ? 自分で考えて動くものだ」と。

  その言葉を聞いたとき初めて会った時のような胸の高鳴りを感じたのだ。

  だから、あの時一目ぼれしなくても私はカエデ君に惚れていた。




  まぁ……今そんな私の大好きな人を泣かせてしまっているんだけどね。

 

「あはは……ごめんね? 泣かせちゃって」

「ココナぁッ!」


 カエデ君は私に強く抱きつく。少しだけ傷が痛んだけど、それ以上に幸福感が溢れていた。

  そして私はカエデ君の頭に手を置き、撫でる。

「よしよし、本当にごめんね」


 カエデ君本当にごめんね。君を泣かせるつもりは無かったんだよ? でもね、こうするしかなかったんだ。

 

「本当にありがとう、大好きだよカエデ君」

「ココナ……俺も、俺も! お前の事が!」

 あ――マズイ。そこから先を口にされたら、死にたくなくなる。

  そんな予感が過る。

  そして私は何かを発しようと開いた口を唇で塞ぐ。

 

「ココナ……?」

「カエデ君それ以上はダメだよ?」

「え?」

「それ以上言っちゃうと、私……死にたくないって思っちゃうから」

「あ……」

「あはは……わがままばっかりでごめんね? でも私はカエデ君と会えて過ごした日々が、とても楽しかったし幸せだった。だか……ら、なにも悔いは……な……い」

 

  あー、だんだん意識が遠くなってきた。

  視界も薄れていく。

  どんどん、体から力が抜けていく。

  もう――限界が近い。

 

  私はどうせ死刑確定。結局死ぬなら、私は好きな人に殺されたかった。だからこれでいいんだ。

  そんな辛いことを君に押し付けてしまった事は申し訳ないと思ってる。でも私を殺してくれて嬉しかった。

  そしてありがとう――

 

 

  一瞬アリアが視界に入った。

  アリア――ごめんね。

  そして、どうかカエデ君の事よろしくね。

  無責任だとわかっている。だけど、アリアならカエデ君を任せられると思った。

  まぁ……喋る力が無いから伝わってはいないと思うけど。



  だけど、アリアならきっとカエデ君の面倒見てくれると思う。

  そしてカエデ君。私を殺したことを気に病まないで……。

  アナタは私みたいな人殺しにならないで。

  そしてどうか幸せになって……。

  本当に今まで、こんな私に良くしてくれて、ありがとう。アリア、カエデ君――。

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