表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生黙示録  作者: 水色つばさ
1章  転生と出会い
21/63

19話 ココナの願い

 ココナは俺にナイフを向けている。

  何故だ? 何故ココナは俺にナイフを向けている?

 ココナを縛っていたワールはもういない。

  どうしてまだ戦う必要があるのだ?

 そんな疑問が頭を巡る。理解ができない、ココナの考えがわからない。

 

「ココナ? 何してるんだ?」

「何って決まってるじゃん。戦うんだよ、私とカエデ君で」

「ココナさん! もうカエデ様と戦う必要は無いのです! それに、本当はいけない事だけど、私がココナさんをかくまいます!」

「ありがとうアリア様……いや、アリア」

「あ――」


 ココナはアリア様を呼び捨てにした。

  なんで――なんでそんな笑顔なんだよココナ!

 

「なんで笑ってるだよ……ココナ」

「何でだろうね? 私もわからない。だけど――」


 ココナは少し間を開ける。

 

「私はアリアやカエデ君に会えて良かったなって」

「これからも一緒に居ましょう!」

「そうだ! なんで俺とお前が戦わないといけないんだ!」

「私のこの傷は致命傷なんだよ、助からない」

「私が医者をご紹介します! それに私も多少は傷を治すことだって!」


 ゆっくりと首を横に振る。

 

「何をしても手遅れなんだよ」

「そん……な」


 アリア様はその場に崩れる。

  その目には大粒の涙が流れている。

  そして、俺の目からもとめどなく涙が出ている。

 

「あはは……なんでカエデ君まで泣いてるの?」

「だって、ココナは――」


 ココナは助からない。

  そう思うだけで、俺は涙を止める事ができない。

 

「ごめんね? でもお願い。私と戦って?」

「だからなんで……戦わないと……いけないんだ」

「なんで。か。それはね私の夢なの」

「夢?」


 夢ってなんだよ。

  俺と戦う事がココナの夢と何の関係が――

 

「私の夢はね……私が愛した人の手で死ぬこと」

「ッ!?」


 それが……ココナの願いなのか。

 

「お願い……カエデ君」


 強く唇を噛み下を向く。

  俺だってココナが好きだ、愛している。

  だけど、その愛している人の願いが、俺に殺されることだというなら。

  ココナはもう何をしても助からない程の、致命傷を負っている。

  それなら――

 俺はその願いを叶えるために戦おう。

 

「わかった」

「ありがとう」


 俺は袖で涙を拭いて刀を構える。

  そして、ココナも構えを取る。

 

「さて、開始の合図だけど……」

「私がします」

「アリア?」

「アリア様?」

「私だってココナさんが大好きです! だから! 最後を見届けさせてください!」


 アリア様の目は泣いていたため赤くなっている。

  しかしその瞳はとても強い。

  あぁ――やっぱりこの人は強い人だ。

 

「わかった。じゃあお願いできる? アリア」

「はい!」


 アリア様は俺とココナの間に立つ。

 

「お二人とも準備は宜しいですか?」

「あぁ」

「大丈夫よ」

「では……はじめ!」


 俺は一気に駆け出しココナに斬りかかる。

  ココナ俺の攻撃を体を横にずらす事で避ける。

  そしてそのままナイフで斬りつけくる。

 俺はすぐさま刀でガードするが、攻撃は一度だけでは収まらず、何回も斬りつけてくる。

 

「くッ!」


 怪我をしていながら、これほどの動きをまだできるのか。

 俺は一度距離を取ることにした。

 

「やるな」

「はぁはぁ……私を誰だと思ってるの?」

「そうだな。この町を騒がせていた殺人鬼だったな」

「その通り」


 ココナは攻撃を仕掛けてこない。

 

「はぁはぁ」


 ただ止まっているだけだが、ココナの体力はどんどん失われていってる。

  その理由は明白だ。ワールに撃たれたところからボタボタと血がとめどなく流れている。

 このままだと本当に出血多量で死んでしまう。

  そうなる前に俺の手で――ココナを殺さなくては。

 

「どうしたの? 早くかかってきなよ」

「言われなくても!」


 俺は先ほどと同じように俺はココナに駆け出す。

  そして刀を振るう。

  しかしやはり簡単に避けられてしまう。だが、避けられようと俺は連続で斬りつける。

 何度も何度も何度も何度も!

 

「ふふ……そうだよ。もっと息つく暇なく攻撃して、今の私ならいずれ殺すチャンスが来るはず」

「くッ!」


 その言葉に悲しみが押し寄せてくる。

  だが俺は涙を我慢する。

  泣いてはダメだ。

  これは暗殺者に襲われて戦っているのだ。

  そう――相手はココナじゃない暗殺者なのだ。

  だから泣くのはおかしいのだ!

 

「はぁ!!」

「どうしたの? 動きが少し鈍ってるよ?」


 ナイフを振るってくる。

  俺は紙一重のところで避ける。

 

「まだまだ」

「ッく!?」


 形勢逆転。今度はココナが連続で斬りつけてくる。

 

「……どうしたの? いつもなら軽くあしらえるでしょ?」


 確かにいつもなら、軽くあしらえたかもしれない。

  だが俺は何故か、いつも通りの動きができないでいた。

  いや――理由ははっきりしている。

  俺がまだココナを殺す事に戸惑い、覚悟を決めかねているからだ。

 

「まだ、迷ってるんだね?」

「あ……」


 ココナに気持ちを言い当てられてしまった。

  そして思わず目を逸らす。

 

「そう――でも敵を前にして目を逸らすのは感心しないな!」

「え? ッ!?」


 腕を斬られる。

  斬られたところから血が流れ出てくる。

 

「私は暗殺者だよ? 暗殺者にむざむざ殺されたいの!」

「わかってる」

「わかってない!!」


 大声を出して傷口に響いたのだろう、少し顔が痛みに歪む。

 

「わかって……ないよ。カエデ君は私の事を暗殺者として見てない。ココナ・エンドゥとして見てるんだよ」


 その通りだ。

  俺はココナを暗殺者としてみていない。ココナ・エンドゥとしてみている。

 だが、それは仕方ないのだ。

  俺が今まで一緒に過ごして来たのは、暗殺者としてのココナではない。

  優しくて、世話焼きでいつも元気を与えてくれるココナ・エンドゥと過ごして来たのだから。

 

「やっぱり無理だ……」


 俺は刀を離し地面に落とす。

 

「俺にはココナを殺す事は出来ない」

「……」


 ココナは静かに俺に歩み寄る。

 

「そう、なら死ね」

「え?」


 ココナはナイフを逆手に持ち俺を押し倒す。

  そしてそのままナイフを振り下ろす。

 

「こ、ココナ!?」


 俺は反射的に振り下ろされたナイフを掴む。

 

「ココナァ!」

「……」


 ココナは無表情で俺にナイフを俺に刺そうとする。

  そして、俺はそのナイフを必死に抑える。

 

「やめ……ろ」

「もっと」

「え?」


 ココナはさらに力を込めてくる。

 

「時間が無い」

「さっきから何を言ってるんだ!」

「……」


 ココナは答えない。

  そしてナイフに込める力はどんどん強くなっていく。

 

「くッ!」


 たとえ女子の力だとしても、全体重を掛けてくれば相当な力になる。

  俺はココナの力に負けないようにナイフを押し返す。

 

「今……だね」


 ふっと突然、力が緩む。

  俺はココナに負けないように全力で押し返していいた、そして今ココナは力を緩めた。

  そうなった場合どうなるか――

  そう、ナイフはそのままココナの元へと向かう。

 

「ぐッ!」


 ココナの胸に刺さる。


「ココナ……何で」

「これでいいんだよ、カエデ君」


 俺はココナを下におろし抱きかかえる。

 

「ココナさん!」


 アリア様がこちらに近づいてくる。

 

「ごめんね。アリアにも言いたい事沢山あるんだけど……」

「良いのです! お時間はカエデ様にお使いください」

「ありがとう」


 アリア様にお礼を言いうと。ココナは俺の目をじっと見つめる。

 

「カエデ君。ごめんね、私のわがままに突き合わさせて」

「いい……いいんだ!」

「今日までの日々楽しかった」

「あぁ……」


 ココナはゴポッと口から血を出す。

  そして、俺のポケットの方に目線を向ける。

 

「このペンダント……本当に効果あったんだな」

「そうなのか?」

「うん、だってカエデ君に会えた。そして私を殺してくれた」


 ダメだ――俺は泣くことを耐える事ができそうにない。

 

「あはは……ごめんね? 泣かせちゃって」

「ココナぁッ!」

「よしよし、本当にごめんね」


 俺は情けなくもココナ抱きつく。

  そして、そんな俺の頭を撫でるココナ。しかしその撫でている手はとても弱々しい。

 

「本当にありがとう、大好きだよカエデ君」

「ココナ……俺も、俺も! お前の事が!」


 好き――そう言おうとした時、ココナの唇が俺の口を塞ぐ。

 

「ココナ……?」

「カエデ君それ以上はダメだよ?」

「え?」

「それ以上言っちゃうと、私……死にたくないって思っちゃうから」

「あ……」

「あはは……わがままばっかりでごめんね? でも私はカエデ君と会えて過ごした日々が、とても楽しかったし幸せだった。だか……ら、なにも悔いは……な……い」


 俺の頭に乗せていた手がパタリと落ちる。

 

「ココナ?」

「ココナさん!?」


 俺とアリア様の言葉に反応しない。

 頭ではわかっている、わかっているのだが、信じたくないのだ。

  それはアリア様も同じなのだろう。俺と同じ様にココナの名前を何度も呼んでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ