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久々、王都歩き

スマホ復活!

久しぶりの更新です!(*^^*)


活動報告に、オチに考えていた

ヨルンヴェルナとシェイラのやり取りも載せておりますので、よろしければご覧くださいませ。

m(_ _)m

 冬休み中も、月の日は休日と設定されている。

 シェイラは、ゼクスとコディを薬店へと案内していた。

 エイミーを紹介して商談を進めるためなのだが、久しぶりに街をそぞろ歩けば楽しい気持ちになった。足取りも軽快に石畳を鳴らすと自然に心が踊る。何もかも、余裕が出てきたおかげだろう。

「ゼクス、すっかり元気になったね」

 露店をひやかしていたゼクスを覗き込むと、彼は弛んだ口元を決まり悪げに引き結んだ。

「まぁな。剣を振ると気分がスッキリするからな」

「うんうん。心の余裕って大事だよね」

 したり顔で頷くシェイラに、ゼクスは今度こそ頬を引きつらせた。

「……お前らに迷惑かけた自覚はあるが、ニヤニヤされるとやっぱりムカつくな」

「ゼクス、僕らは迷惑なんてかけられてないよ。心配は凄くしたけどね」

 コディが控えめに、清らかな笑みを浮かべる。シェイラとゼクスを顔を見合わせて黙り込んだ。

 何だかんだ、シェイラ達はコディに弱い。ゼクスとのじゃれ合いは楽しいけれど、彼の笑顔を曇らせるのは本意ではなかった。穏やかな笑み一つで戦意を喪失させる彼は、ある意味凄いと言える。

「せっかくだし、どこか寄って行こうか? そういえばシェイラ、前に買いたい物があるって言ってたよね?」

 まだ王都に不慣れだった頃、彼らに案内をしてもらったことがある。当時行きそびれてしまっていたことを、コディは覚えていてくれたらしい。

「あの時欲しかった物は、もう買ったんだ。ただ、他にも欲しいものがあってさ。王都って、中古品を扱う店ってあるのかな?」

「あるよ。じゃあ、案内ついでに少しだけ覗いてみようか」

「ありがとう」

 エイミーと約束している時間まで、まだ余裕がある。シェイラ達は中古品店へと足を向けた。

「ところでシェイラ、何を買いたいの?」

 歩きながらコディが問いかける。

「えっと、ソファが欲しいの。こう、仮眠とかできそうな、肌触りのいいヤツ」

 デナン村にはない未知の家具だったが、フェリクスの屋敷で使って以来シェイラはすっかり気に入っている。ゴロゴロしすぎて執事のリチャードにたしなめられてしまうほどだった。

 至福のひとときを思い出しニヤニヤしていると、コディが意外そうに首を傾げた。

「ソファ? 寮に入れるの?」

「イヤイヤ。僕の部屋狭いから、さすがに入らないよ。クローシェザード先生の教員室に欲しいんだ」

「え。そんな大きなもの、勝手に買っちゃって大丈夫なの?」

「大丈夫。許可はもらってるから」

 実際には返事すらもらっていないのだが、何をしても構わないという意味だと解釈している。

 シェイラの言い分を素直に信じたコディが、それならばとこぶしを握った。

「クローシェザード先生もお使いになるものなら、真剣に選ばなくちゃね。及ばずながら手伝わせてもらうよ」

「大げさだし仰々しいよ」

「大げさじゃないよ! 日々忙しくしていらっしゃるクローシェザード先生が、ほんの一時でも仕事を忘れて癒されるためには、最上級のソファが必要だもの。どうしよう、中古なんて申し訳ないから、特注で職人に作らせるべき……?」

 明後日の方向に話を展開させていくコディを放置している内に、中古品店に到着した。同じく友人の熱量についていけないゼクスを先頭に、シェイラは薄暗い店内に入る。

 まず、独特の匂いを感じた。店頭に並ぶ商品には、どんなに綺麗に洗浄しても、以前の所有者の生活感がうっすら残っているようだった。

 ラベンダーの香りがほのかに残る枕は、女性が使っていたものだろうか。年期の入ったランプには油が染み込んでいる。無造作に置かれた深みのある焦げ茶色の椅子から、途方もない歳月を感じた。

 年かさの店主は、店の奥でパイプをくわえながら読書を楽しんでいる。字が読めるということは学があるのだろう。

 高価な書物は平民にとって嗜好品に近い。パイプといい、なかなかの洒落者のようだ。

 興味深く店内を見回していると、ソファが並べられた一角にたどり着いた。

「おぉ。結構あるもんだね」

「大物の家具は、中古品店に流れてくることが多いんだよ。引っ越しの時、捨てるより処分が簡単だからな」

 小さく漏らした感嘆の声を、ゼクスが拾った。

 不要になったものは、国が定めた廃棄場に持っていかなければならないらしい。それが王都の外れにあるため、大した額にならないとしても中古品店に売る方が楽だというわけだ。

「お前が暮らしてた村ではどうしてたんだ?」

「何でもボロボロになるまで大事に使ってたよ。壊れたものは『今までありがとう』って感謝しながら焼却処分」

「なるほど。最新の流行や高級品には、やっぱり興味がないんだろうな」

 思案げなゼクスの呟きに、シェイラは苦笑しつつ答えた。

「女の子達は化粧とかお洒落とか、興味津々だよ。そこは王都の人達と変わらないと思うな。ただ、興味があっても買いに行けないからね~」

 取り入れようにも、デナン村に伝わってくる頃には、王都での流行は既に廃れていることだろう。だから年頃の娘達は、できる範囲でのお洒落で十分だと思っている。

 ――身なりには気を遣えって、友達によく言われたっけなぁ。

 村にいた頃、世話焼きな女友達に『狩りばかりしないで少しは自分を磨きなさい』と呆れらていた。『嫁の貰い手がなくなるよ』と。

 実際それが現実になっているのだから、シェイラとしても笑えない。

 微妙な気持ちになりつつ、改めてソファを選ぶことにした。艶のある革張りのものが幾つかあったが、それらは値段が高い。貯めた給金では手が届きそうになかった。

「かといって明らかに中古品です、みたいなのは運び入れにくいしなぁ……」

 確認したことはないが、クローシェザードは十中八九貴族だ。彼のお眼鏡にかなうものは買えないだろうが、せめて見苦しくないものを選びたい。

 三人で手分けして、一つひとつ丁寧に見て回る。

 傷の目立つものやこすれて変色したもの、毛羽立ちの酷いものを省いていく。

 残ったのは数点。その中からシェイラは、二人掛けの布張りソファを選んだ。落ち着いた深い緑色は、クローシェザードにきっと似合う。

 値段の手頃さにゼクスも納得し、高級品に固執していたコディも最終的には頷いた。

 学院へ届けてもらうよう手配して、シェイラ達は店を出る。そのまま真っ直ぐ薬店へと向かった。

 馴染みの食堂に行きたいとゼクスが騒がないのは、この先で商談が待っているからだろうか。雪かき中にそれとなくしておいた、シェイラの忠告が活きているのか。

 大通りから逸れた薄暗い路地に入ると、蔦が盛大にはびこった古い建物が見えてきた。

 友人達は不気味な佇まいに尻込みしたようだったが、すっかり慣れたシェイラは気軽に店舗へ足を踏み入れた。コディとゼクスも恐るおそるといった様子でついてくる。

 外観にはおどろおどろしいものがあるが、店内はごく普通。乾燥中の薬草からほのかに漂う香りと、暖炉で温まった空間がシェイラ達を出迎えた。

「こんにちは、少し早い時間なんですけど、大丈夫ですか?」

 店内に客はおらず、カウンターではほっそりした腰付きの美女が微笑んでいた。

「こんにちは。いらっしゃいシェイラちゃん、それにお友達も。お客さんなんていないようなものだから、遠慮しないでどうぞ寛いでちょうだい。今お茶を淹れるから」

 一瞬エイミーに見惚れていたゼクスだったが、低い声を聞いた途端に顔を青ざめさせた。

「男……?」

 思わずといった呻き声を聞き咎めたエイミーは、綺麗に整った眉を跳ね上げた。

「あら、失礼な反応ね。ガーラント家のご子息だって聞いていたけれど、商談相手に対してなってないんじゃないかしら?」

「うぐ、失礼しました」

 初対面なら驚くのも無理はないのに、すかさず謝ったゼクスはさすが商家の息子だ。エイミーもコロリと機嫌を直した。

 お互いに自己紹介を済ませると、彼女はお茶を用意するために奥へと引っ込んでいく。シェイラはとりあえず、窓際のテーブル席に二人を案内した。

 好奇心に瞳を輝かせながら店内を見回していたゼクスは、再び姿を現したエイミーに笑顔を向けた。

「居心地がいいし、とてもいい店ですね。店長も美人ですし」

「あら、嬉しいわ」

「口さえ開かなきゃもっといいんですけどね」

「あーら。そんな失礼なこと言う坊やは、出入り禁止にしちゃうわよ」

「坊やって言わないでください」

 早くも明け透けなやり取りを始める二人をハラハラしながら見守るコディだが、止めることはなかった。これから行われる話し合いに関しては部外者なため、余計な口出しを控えているのだろう。

 全員の前に置かれたのは、湯気の上る薬草茶。

 エイミーが対面に着き、商談が始まった。



読んでいただき、ありがとうございます。

これからストックを作っていくので更新はまだゆっくりペースですが、徐々に元通りにしていきたいと思っています。

どうなるか分かりませんが(>_<)

これからもよろしくお願いします!

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