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84.十蒼希の現状Ⅱ

 問うた直後、エミリアは訊き方を間違えたと悟った。

 何故なら、眼前、純一と凜が互いに顔を見合わせ、黙ったからだ。

 数秒の沈黙の後、凜が何も言わないと決め込んだのを表情から読み取った純一が、空を仰ぎ見てから、


「あー……つまりは神話の事だよな? その、なんだ……スゴイナーッテオモウ」


「純一純一、言わせてもらうけど対応が下手くそ過ぎない?」


 二人の様子から、エミリアは、

 ……何か間違えたでしょうか……。

 日本の一般的な家庭に、神やら何やらを説きに来る人物が大体の場合厄介者扱いされる、などという事情をこの時エミリアが知るはずも無い。

 どうしようかと次の言葉を考えている時だ。


「レガリアの話を聞いた事があるなら知っているはずだが。初代蒼王が五人の乙女と共に神々の戦いに参加した、なんて話をな」


「……あ、その話か。それならちょっとだけ聞いたことあるかも」


 右手を軽くあげ、凜が答えた。


『というか純一、貴様ラインベルニカに到着する直前に、その話をしていただろう』



●●●



 ネインに言われ、俺は三ヶ月前のことを思い出す。


「……あぁ、そういえばそんな話だったな」


「言い伝えでは、初代蒼王は神々の戦いに加勢し、勝利に貢献したという事で、神王なる存在から力を授かったとされていますね。

 その際、彼を支えたのは、五人の乙女と配下の兵だけではありませんでした。それが、六人の神子(みこ)と呼ばれる者たちです」


「神子?」


「先程言った宝石名、それに対応した六つの世界――魔属世界における頂点の存在です。丁度、レイ・ウィングズ(この世界)の蒼王みたいなものでしょうか」


 つまりは、その世界で一番強くて偉いやつということか。


「だけど、その神子と守護宝石はどう関係してるんだ? その六人から初代蒼王が石をもらったとか?」


 一番可能性の高そうな予想を上げる。

 だが、それは間違いだというでも言うように顔を横に振ったエミリアは続ける。


「――神子というのは、その世界の生体端末。その世界自体の分身とでも言っていい存在だそうでした」


「実際、世界を一つのエネルギーとしてみた場合、その約半分を持っていた」


「……そのエネルギーって、要は魔力だと思えばいいのかな」


 俺の右二人の言葉に、左が問い掛けた。

 それに答えたのはバハムートの方だった。


「ああ。人間、出力の違いで戦闘力に特徴が出る故、単純に戦闘系に特化しているとは言いがたいが、それでもその世界において最も強き者達だ」

 ……神子は戦いの後、神王の命により、その身を特殊な魔石――天霊石に封じ、盟友である初代蒼王に献上したとされている」


「その身を、って……。それじゃあ、その守護宝石ってのは――」


『そうだ。魔属世界の半分のエネルギーを扱える人間、そのものが魔石になった存在ということだ』


「……」


 若干混乱してきた。


「――というより、俺としては、お前はてっきり守護宝石について知っているものと思っていたんだがな」


「――?」


 何を言ってんだこのイケメンは。

 そんな俺の考えが表情に出たのか、俺の顔を見たバハムートは肩をすくめて、


「お前が先程乗っていた鉄の馬(ヴィエラ)やお前の収納異空間にある得物――魔力から推定するだけだが、銃か? ――まぁ、何にしろ、それらからエテルナフィーアの魔力が僅かだが感じられたからな」


「……え」


「え、どういうことですかバハムートさん!?」


「知らん、俺に聞くな。こいつに直接聞いたほうが早いだろう」


 あ、そうですね! とエミリアが両手を合わせて言うが、


「いやいや、俺だって何のことだかわからないよ。エテルナフィーア、ってことは火の守護宝石だっけか? そんなもの、俺は見たことが無いし――あっ」


 言いながら、俺はあることに気がついた。というよりも思い出した。

 ヴェリアルやヴィエラが何から創られたのか。無論、魔石からなのだが、それが何処にあったものか。


「あー、そのエテルナフィーア自体は見たことはないと思うんだけど、実は――」


 俺は去年の八月にリーシャと共にラインマインズに行った時の事を皆に話す。


「――と、そんな感じでヴィエラとかはその火山の一画にあった魔石で創ったんだ」


『キワル火山はアーインスキアとの戦争時にエテルナフィーアが封印されていたところだ。おそらく、その時に周囲の魔石に強い影響を及ぼしたのだろうな』


「その可能性が最も高いでしょうね。

 ……しかし、エテルナフィーアはジャミルおじ様が回収されたと聞いていましたが、そんな純度の高い魔石を見逃すとも思えないのですが……」


 ここで新たな情報がふいに聞こえてくるわけだが、そういえばあの場所までの通路は人の手が入っていた形跡があった。

 ……そういう繋がり方してくるかー。


『……まぁ、言っては何ですが、ジャミル様は偶に抜けてるところがありますからな。当時はエテルナフィーアだけで手一杯だったでしょうし』


 ジャミルという人物は確か、第三貴族、ジークフリートの父親のことだと思うのだが、そんな風に言っていいのだろうか。

 ……ともあれ、そんなところでも関係性があったなんてなー。

 この世界の王族周辺との関係なんて浩二を通じたものしかないと思っていたが、案外そうでもないらしい。

 というより、もはやエミリアたちと知り合いな時点で関係性は太くなってきたともいえるわけだが。


「――今は、守護宝石が大きな魔力を秘めた石、程度の認識で良いと思います」


 ふと、エミリアがそう口にした。


「そうさせてもらう。とりあえず、話の内容としては『オリジンが魔力を求め、大きな力を持った聖剣や守護宝石を狙ってきた』ということで合っているか?」


 かなり大雑把なまとめだが、エミリアの様子から察するに間違ってはいないようだった。

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