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80.出発の朝

「純一ー、約束の時間って何時だっけ?」


 まだ日が昇ったばかりの早朝の空を見上げていた俺に、声がとんだ。

 とばした少女、凜の方を見れば、サイドカーの中、毛布に蹲って携帯端末を操作している。


「隼人から来た連絡事項(メール)だと五時って書いてあったな」


 少し前の事だ。

 仮眠を取っていた俺の端末に、隼人からエミリアたちとの合流地点の座標や時間が送られてきた。

 そのままノードゥス拠点の方で寝ていた凜を起こし、ここに来た。

 凜にはサイドカーの中でだが、寝てて良いと言っておいた。しかし、一度目が覚めてしまった手前、寝るに寝られないのか、欠伸は連発するが目は開いたままだ。


「ん……じゃあもうすぐだね」


 言って見せてきた端末画面、表示されている文字は『4:55』だ。


「そうだな……しかし、詳細も一切決めないまま動くっていうのもあれだが、ここまでどうやってくるつもりなんだろうな」


 ラインベルニカからここまで直線でもニ千キロ近くある。

 つい最近確立したばかりの魔流電導列車を使っても、最寄の駅があるメルズラインからここまでの距離と移動手段を考えると結局一日以上はかかるはず。

 だが映像でエミリアと最後に顔をあわせてから半日も経っていないのだ。

 航空機でもなければ無理な気がするのだが。

 

「――ていうかさ、純一」


「ん?」


「良かったの? リーシャさん」


 うっ……。

 見れば、凜が先程まで端末を見ていた画面から目を離してこちらを見ていた。


「良いも悪いも、俺じゃどうしようもないよ。ミストさんが言う事だ、仕方が無い。リーシャだって最後には納得してただろうし」


「……はぁ、まあいいか」


 思い切り意味ありげにため息をつかれてしまった。

 しかし、今言ったとおり、ミストはリーシャの上司だ。一個人としての行動制限はかけられないにしても、ギルドメンバーとしては制限できるだろう。

 今回、俺が行くのはあくまでガリウスからの要請によるものだ。つまりはほぼギルドのお仕事。

 ……一応、偵察だけだしすぐ戻るから大丈夫だ、とは言ってきたが。

 そう言ったときの彼女の表情は何といえばいいかはわからなかった。その辺り、俺の経験値の無さが辛いところだろうか。


「……帰ってきたらなんかしてあげないと駄目だよ? 純一」


 何故か俺が悪いみたいな流れになってるなこれ、と思った時だ。


『――《観測者》より(マスター)に警告――』


 それは、俺が持つスキルで最も新しいもの、《観測者》からの言葉。


()()()()の魔力がこちらに高速接近中――』


 ……こんな時に、いったい何が。

 そう思い、《観測者》に詳細な情報を求めようとして、気づいた。

 それは、影だ。

 東の空、雲などとは異なる、明らかに異質なものが空を駆けてきている。

 その物体は、俺が視認してからものの数秒で全容がわかる距離にまで接近していた。

 ――ああ。

 その姿に、俺は内心でため息をついてしまった。これは、恐怖――というよりも畏敬の念に近いだろうか。

 紛れも無い、竜だった。



●●●



『おはようございます、お待たせいたしました!』


 はっとしてヴェリアルを抜こうとした俺に対し、朝の挨拶が来た。

 それは脳内に響く言葉で、しかも聞き覚えのある声だ。


「――エミリア……様……?」


 竜の手の中、声の主が納まっており、こちらに一礼すると同時に竜が地に足を着いた。

 目視だけで全長二十メートル近くはある。

 黒銀の竜。

 その手からエミリアと、もう一匹、ネインが降りた。


『ぬぅ、やはり空よりも大地の方が私は良いな……』


「ごめんなさい、ネインさん。半日で移動するにはこの方法しか無かったので……」


 多分、気持ち悪いという表情のネインを、エミリアが宥めている。


『対象の簡易観測終了――神竜バハムートと推定』


 《観測者》が竜の名を告げる。


「バハムート……」


 俺の言葉が聞こえたのか、竜がこちらを一瞥した瞬間、光に包まれる。


「なん……!?」


 言葉を言い切るよりも早く、光は終わり、現れたのは竜ではなく、人だった。

 逆立った白髪。黒いコート。


「――随分と人の姿に慣れたものだったが、やはり元の姿は楽だな」


 今起こったことに対して、説明が一切無いため、俺と凜は傍観するだけだ。

 それを察してか、エミリアがこちらに駆け寄ってきた。


「す、すみません。いきなりで驚かれましたよね?」


「……まあ正直今ので驚かないのは全世界で見ても少ないと思うけど」


「あ、こら凜。一応、貴族様相手だぞ!」


 一応ってつけるのも大概だよ……と凜に言われて、確かに、と思ってしまう。


「あはは……。本当にごめんなさい。現状の手段でここまで最速で来るにはバハムートさんの本来の姿に乗せてきてもらうのが最も速かったもので」


 それもそうだろう。竜の飛翔速度が平均どれくらいかは知らないが、先程見た限りかなりの速度だった。


「お前たちを乗せていた分、最高速度の半分も出してはこなかったがな」


 言葉と共にバハムート、そしてネインが近寄ってくる。


「でも、合点はいきましたよ。何でラインアルストから離れたところで待っていろなんて隼人が言ってきたのか」


 あんな大きな竜がいきなり街に飛来したら大騒ぎなんてレベルではない。

 実はデーモンの件は、結局対象がダンジョン内で討伐された事もあり、公表されたわけではないのだが、あれだけギルドで騒がれたのだ。外に漏れない訳がない。

 そんなところに今度はドラゴンがやってきたら、色々崩壊しそうだ。


「仰るとおりです。バハムートさんの事を知っているのは政府内でもごく少数で大変で……って、すみません、要らない話でしたね」


「いえ……、しかしこれからどうするか、自分たちは何も聞かされてないんですが」


 隼人からの文面にもその辺りは書かれていなかった。


「まずは陛下たちが襲われた場所へ。何か残されているかもしれません。その後は最後に滞在したという町に行きたいと思います」


「情報集め、だね。鉄則」


「おい、凜。さっきも言ったけど……」


 俺が凜に注意しようとすると、エミリアが両手を振った。


「ああ、いえ。いいんです。今回の場合、一般の前で様を付けられると怪しまれますし、普通にエミリアとお呼びください。

 ……その代わり、私も凜ちゃんと呼んでいいですか?」


「ん、おっけーだよ」


 親指立てて言う凜は、これかなり度胸あるよなぁ、と思う。


「ありがとうございます。あ、純一さんも。浩二さんは普通に呼び捨てにしていらっしゃったので、同じようにしていただければ」


 彼女からの言葉に、あいつ、四大貴族相手にすごいな……、と内心感服するが、本人からの許可が下りたならば、いいだろう。


「それじゃ、どれくらいの任務になるかわからないが、エミリア、よろしく頼む。ネインも、バハムートもな」

劇中で度々出てくる十蒼希、彼らが十蒼希になるまでの物語である『蒼聖世界の王と六つの守護宝石』も投稿してますので、そちらもよろしくお願いします。

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