表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/87

54.東ギルド会議Ⅲ

「三つ目の話をするにあたり、皆に聞いておきたいことがある」


 休憩時間を終え、先ほどと同じく閉め切られた会議室の中、ガリウスの第一声はこうだった。


「――誰か、西()()()()を知っている者はいるか?」



●●●



「……西、ですか?」


「ああ、正確に言えば、王都より以西についてだ」


 ガリウスの後ろにあるスクリーンに映し出されていた地図がライン地方のものから別のものに切り替わる。

 表示されたのはラインアルストから西、大陸中央に存在する王都とそれよりもさらに西の地方だった。


「今回、極秘で皆を集めたのはこの事について聞きたかったから、というのも過言ではない。最近、大陸西側の様子が伝わってこないのだ」


 ガリウスが言うには、本部が大陸最東端のラインベルニカに設置されているため、元から西の情報は入りづらかったが、それでもギルドのほうで連絡役を派遣したり、行商人から情報を集めてはいたらしい。しかし、それがここ最近、細かい情報が入ってこなくなったという。


「連絡役は近状などの情報を持ち帰っては来るが、西側ギルド(向こう)では表面的なものばかりしか教えてもらえず、違和感を感じるらしい。行商人に至っては東西を渡る者自体が減少しているしな」


 と、肩をすくめて言ったガリウスの横、第四貴族のエミリアがいつの間にか壇上に上がっていた。


「政府も似たようなものです。ここ数ヶ月、入ってくるのは曖昧なものばかりです」


 それはつまり、


「もちろん距離という物理的な問題もあるが、それに加えて西側で何かが起こっていると俺は見ている」


 だから先程の質問だ。


「事前に通告していない故、情報を持っていない、または不確かな覚えのある者が多いだろうが、何でも良い。気になることがあれば、どんどん教えてくれ」


「……」


 ――やっぱり、すぐ出てくるもんじゃないか。

 俺はそう思って腕を組んだ。

 学校などで意見を求められた際に、誰も手を上げないのと同じようなものだ。

 考えてみれば、いくら何でも良いと言われても、ギルドマスターに加え、四大貴族の前だ。当人達としては不確かな事は口にしたくは無いだろう。

 しかし、それはおそらくガリウスもエミリアもわかっているはずだ。

 長い沈黙が続く。

 俺も何か思い当たる事はないかと記憶を呼び起こしてみるが、この半年でラインアルストよりも西に行くという事がそもそも無かったので、思い当たる事がない。

 と、その時だ。

 おもむろに、手が挙がった。

 

「――ミーデックの……ジグ君か」


「は、はい……」


 気の弱そうな壮年男性だった。

 ミーデックは確かウルダ地方の大都市、ウェルー北部にある町だった気がする。

 ジグはおどおどと立ち上がりながら口を開いた。


「じ、実は一つ、思い出したことがありまして……」


 ガリウスはそれに頷く事で、続けろと促す。


「ギルドマスターからの招集がかかる数日前のことです……」


 ジグの話はこうだ。

 ミーデック支部にはミーデックから西部に行ったところにある町出身のギルドメンバーがいるらしく、その者が里帰りしていた際にこんな話を聞いたらしい。


「ア、アーインスキアの残党兵を見たという行商人が、いたらしいのです」


 アーインスキア。

 十ある世界のうちの一つであり、数年前までレイ・ウィングズの一部地域をを不当に占領していた世界。

 当時の蒼王たちの尽力でそれは解決されたのだが、今でもその残党兵が自分達の世界に帰れないまま、盗賊じみたことをしており、問題になっていた。

 幸い、ラインアルスト含め、ライン地方にはここ最近は確認されていないようだが。

 ――そういえば、この世界に来てすぐにリーシャに残党兵扱いされたっけなー。

 今となっては良い――かはわからないが思い出の一つだ。


「……その話、少しいいかい?」


 ふと、別の声が上がった。

 声の主は老婆だった。

 

「アイミンでもそんな話があってねえ」


「ウェルー西部の町だったか」


 確認するような声があがる。


「そうさ。そこで同じような話が最近持ち上がってるんだよ、残党を見たって話がね。北部ならともかく、ウェルー西部は風雷谷ソリューボルトとそれに連なる山脈のおかげで戦時中でも奴らが拡大して来なかった場所だ。

 あたしぁ単なる与太話だと思って流していたが……そうもいかないようだね」


「……情報の出処は?」


「大元はわからん。あんた、何か知らないかい?」


 アイミン支部長は隣に居た孫ほど年齢が離れた補佐に訪ねる。


「私の方も正確な事はなんとも。しかし、支部の様子を見るにアイミン支部内からではなく、外部――商人たちから入った情報かと」


「……ということさ」


 肩をすくめたアイミン支部長の言葉を最後に部屋が静まり返る。


「――どうにもきなくさい」


 誰かがそう言った。


「ああ。噂程度の話ではあるが……ことがアーインスキアが絡む話だ。

 大陸西部にはまだまだ残党も多く、油断はできないだろうな」


 ガリウスが腕を組んで言った。


「と、まあそういった状況がある中、一つ問題があってな」


 ガリウスは言って隣のエミリアを見た。

 促される形でエミリアが言葉を作る。


「はい。実は蒼王ライナー様とその祖母であり前々蒼王であるミレイナ様が王都郊外にある宮殿に視察もかねて公務に出ておられるのです。レイ・ウィングズ軍の精鋭に加え、レイガルフ数体の護衛がついているので、安全であるはずですが、何かあってからは遅いということで、ラインベルニカまでお戻りになるように政府は使者を送りました」


「よってライン地方の面々は蒼王の帰還の妨げになる騒ぎが起こらないようにしてくれ。そして、ウルダ地方の者は例の噂、念のために気をつけてくれ。何かあれば、すぐに俺まで連絡を飛ばすように。ここにいないウェルー支部長には俺の方からそう言った話を送っておく」


 ガリウスの総括の言葉に皆が頷き、返答する。


「会議としては以上だ。以後、先程言ったように、何かあれば、今日中に俺のところに来てくれ」


 その言葉が終わると同時に、会議室の施錠が解ける。

 東ギルド会議が終了した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ