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39.プロローグ:敵地の中で

ということでギルド争乱篇、始まります。

 闇がある。

 それは空間全体に広がっているのではなく、灯りと灯りの間に生じているものだ。そのため、視界は完全にゼロというわけではなく、目を凝らしてみれば闇の中に居てもその存在は他者には感知される。

 そこは長い廊下だった。

 そこに二つの足音が響いた。

 二人の男だった。

 男達は軽装備ではあるが、腰に剣を収めた鞘を持ち、辺りを見回しながら歩いていた。


「……はぁー、退屈だぜ」


「おい、真面目に仕事しろよ、何のための見回りだ」


「つったって、こんな奥まで敵なんてこないだろ、居たら前線の奴等は何してたんだって話だぜ?」


「……まぁ、それもそうか」


 二人は会話しながら廊下を歩いてそのまま角を曲がり、姿を消した。

 また廊下には点々とした小さな灯りと、闇だけが残る――はずだった。

 しかし、誰も居なくなったはずの廊下に、先ほどと同じように足音が生じた。

 できるだけ音を出すまいとしているその者の姿はまったく見えない。

 だが、闇から闇へと、着実に移動していく。


 ふと、闇の中で足音が歩みを止めた。

 それだけではない。

 近くでなければ聞こえない、独特の音を立てて、その者は姿を現した。

 とある世界では、一般に『光学迷彩』と呼ばれるそのシステムを解除した男は、胸に『NODUS(ノードゥス) ギルド特別連携係 清堂 純一』というネームプレートを付けていた。



●●●



 ということで、忍び込んでいる清堂 純一こと俺です。

 俺は今、俗に言う敵地侵入の真っ最中だった。


「――ここまでは順調、か」


 もっと苦労するかと思えば、光学迷彩のおかげか、するするっとここまで侵入出来た。

 とは言え、目的地まではまだかかる。さらに言えば、目的地が正しいかもわからないのだ。

 なにしろ、事前に与えられた情報が少ないうえに敵地にいる間者(スパイ)から送られてきた情報で、それを受け取ってから時間も経っている。

 俺の()()が違う場所に移された可能性も否定できないのだ。そうなった場合は出来る限り探し出せ、というこれまた無茶な御命令が下っている。


「早く帰りたい……」


 俺の帰りをリーシャやレオを始めたとした仲間達が待っているだろう。

 はぁ、ラインアルストにある家が恋しい。

 しかし、これも仕事だ。

 しかもこと今の局面においては大きな意味を持つ。

 そんな大役を任される破目に陥った要因のひとつが、今使っている光学迷彩だ。

 以前、物は試しにと、俺の『スキル:《作成者》』とその付随オプションである『スキル:《創造者》』で作ってみたらこれまた成功してしまい、以後使用している。決して覗きとかの悪い事には使っていない。イナイヨ?


「まったく……、なんでもかんでも作るものじゃないな……」


 日本に居た頃、漫画などで、強い主人公が実力を隠して学園に入学するなんて話を読んだ記憶があるが、まさにこれだろうか。

 変に強かったり便利だったりすると身の丈以上のことを求められる。

 人の助けになるのは嫌いではないが、こうも重要な事を任せられるとは思っていなかった。



 俺が敵地に侵入し、『ある目的』を果たす任務を与えられた、その発端は数ヶ月前までさかのぼる。

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