34.ラインアルスト防衛戦Ⅱ
リーシャを含むのランクDメンバーはランクEよりも前に陣取っていた。
ガルフを単体で倒すことが出来る力をもつ者として、遊撃手の役割を与えられているためだ。
まず射撃隊で敵の数を減らし、ランクDが対応、それでも漏れるものをランクEのグループが各個撃破するという作戦だ。
そして元々十三名だったランクDの人数は倍以上に増え、ランクEも増員されている。戦闘開始直前になって、外部からの救援が来たのだ。
それはラインベルニカにある本部からの救援ではない。
ラインアルストとラインベルニカの間にはいくつもの都市や町があり、当然そこにもギルド支部は存在する。
ミストはラインベルニカへの使者の他、別口でそちらを回る者達も手配していたのだ。
それは本部からの救援が間に合わない事を想定しての判断だ。
しかし、点在する支部の数に対して、増えた人数はそう多くない。
当たり前と言えば当たり前だ。相手はランクBのキメラ。そんなものを相手に、確実な勝利を見込めない戦いに行くなどリスクが高すぎる。
わざわざ来たものは、根っからのお人好しか、高く売れる魔物の素材のおこぼれを狙う者のどちらかだろう。
だが、そんなものでもありがたい状況だ。人数が増えることによって、個々の対応にも少しは余裕が出来る。
だから、リーシャもその手に持つ片手剣でガルフを討伐していたのを止め、危険な状態のレオを助けるために後退してきたのだ。
「大丈夫ですか、レオくん」
倒れているレオを起こす為にリーシャは手を伸ばした。
そこで、彼の武器で両手が埋まっているために気づく。
「あっ、ありがとうございます。大丈夫です」
レオもそれに気づいたのか、自らの力だけで起き上がる。
その手には、未だに炎を纏う剣がある。
――これは……錬装……?
魔流活技、錬装。
身体に装備している武装に魔力を流し込み、切れ味や強度を補強する技だ。
あくまで魔流活性の応用であるが、誰しもできるものではない。それも、これは武装自体を強化しているというよりは、
「レオ君、その魔剣はどこで……?」
魔剣というのは、伝説上の特別なものではない。無論、レイ・ウィングズ王家が持つという聖剣は特別なものだが、魔剣は作ることは可能だ。
もちろんそれなりの鍛冶の腕と上質な魔石などの素材は必要で、販売されているものも普通では出せないような金額のものばかりだが、大金をはたいて魔剣を買うという者もいるという。
「これですか? ジュンイチからお土産だってもらったんですが……」
ならばジュンイチさんがスキルで作ったものか、とリーシャは考えた。
「でもこんな風になるなんてジュンイチは言ってなかったです」
彼が武器の特性などをレオに知らせないなどという、いい加減なことはしないだろう。ということは彼自身もそれほどの武器を作ったとはわからなかったということか。
まったく。あのバイク、という乗り物もそうだが、彼のスキルはどこまでのものをつくれるのか。
とにかく、レオが無事ならば、それでいい。
「後続のガルフが来ます、がんばりましょう」
今、向かってくるガルフの群れが射撃隊の攻撃を浴びている。
が、射撃隊の攻撃のムラがあるのか、それともガルフが学習しているのか、先ほどよりも脱落してくるガルフが少ない。
そしてもう一つ。
肝心のキメラが姿を現さない。
おそらく、ガルフに続く形で現れるだろうが、断定は出来ない。念のため、町の東西の監視塔にも人員を配置してはいるが、どの場所、どのタイミングでくるのかはわからないのだ。
そもそも何故キメラがこんな人里に出現したのか。
わからないことが多い。だが、
「今は、やれることをやりましょうか」
ガルフが来る。
自分に出来ることをするだけだ。
●●●
「どうなってるかな……」
北の空に光を確認してからある程度の時間が経った。
俺は今、休憩中だ。
北の戦線で戦っている連中には申し訳ないとは思うが、労働を続けるには休息も必要だ。
もちろん、日常的な仕事に挟むような休憩は取っていられなく、軽い休憩ではあった。
「――さて、戻るか」
休憩を終え、復帰しようとしていた俺のところに、俺たち支援組をまとめているリーダーが声をかけてきた。
「おーい、ジュンイチ、ちょっといいか?」
「はい、なんです?」
「次の物資移送組に入ってもらえないか?」
定期的に防衛線に物資を送っているのだが、その人員に入れという指示だ。
戦うわけではないが、危険な地にいくということで嫌がる人間が多いが、俺は反対だった。
状況も知りたいしな……。
今ならそれなりにできることは多い、と思っている。
リーシャやレオの事も心配だし、自分の目で確かめた方がやはり安心できる。
「了解です」
「助かる。基本的には物資を載せた台車を馬で引っ張るからそれに同行してくれればいい」
「わかりました」
俺は立ち上がり、準備を開始する。
その時だ。俺は先ほどと同じ北の空に、しかし、今度は違う色の光があがったのを見た。
赤の色、それは、
「キメラか!?」




