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26.唸る想像力

「――あの赤い鉱石、すべてが魔石です!」


「何だって?」


 リーシャの言葉に、俺は一度聞き返してしまった。

 ここにある赤い岩がすべて魔石だって?

 広さ的には一般的な体育館ほどのこの場所。見渡す限り、そこらかしこにそれはある。

 俺はもっとも近くにある魔石に近づき、触れてみた。事前に作っておいた耐熱性の手袋をしているからか、熱はさほど感じない。


「これが……」


 最初に感じた感想は、きれい、だった。リリエにもらった物よりも透き通っているように見える。


「――これ、かなり高純度の魔石のようですね。こんなもの、普通はお目にかかれません」


 魔石は通常、鉱石などに混じっており、一般の鉱物同様、精錬して手に入るものだ。

 リーシャの話では、それよりも高純度であり、このような質のものが自然にあること自体、大発見だと言う。

 そんなものがそれだけここにはある。


「まるで魔石のバイキングだな……よし」


 俺はストックスから事前に作っておいたピッケルを取り出した。


「リーシャ! これ採れるだけ採ってくれ」


「了解しました」


 ピッケルで魔石をはがすように掘ってみれば、思ったほど硬いわけでもなく、簡単に採れる。

 この分だと、俺とリーシャ、二人分のストックスにも入りきらないほどの量が短時間で採れそうだ。しかも、それだけ採ったとしてもここにある魔石の大部分は余るはずだ。

 であれば、と俺は魔石採集と同時に、元々の目的である新しい武器の作成に取り掛かることにした。




『《作成者》、《創造者》起動――』


 以前から、自分の武装の弱さは痛感していた。

 簡単に強大な力を放てる『銃』も異世界常識ではさほど通用しない。

 それは今日のログジバルゥ戦でも明らかだ。

 では、どのようなものをつくるか?

 単純に弾を連射できる現代の突撃銃(アサルトライフル)やマシンガンなどは微妙だ。普通の生物に対して使うのであれば、無類の強さを誇るが、魔物との戦闘を考えると量より質を優先するべきだと感じたし、弾薬とて無限ではないのだ。自分で作れるが。

 かと言って、一発を重視してロケットランチャーなどは小回りが利かないし、貫通力に欠ける。

 よって、今の小銃のカタチを保ちつつ、ある程度一発の威力を重視したもの。

 オートマチック式にするのは必須。排莢や装填にもたつけば、それだけ隙が大きくなる。

 と、なるとセミオート式のライフルか。

 

『目的物質を認識開始。《作成者》基礎条件不達成のため、《創造者》による物質作成を選択』


 スキル行使を続けていて実感するが、徐々に使いやすくなってきている感じはある。

 最初の頃に比べて《作成者》から《創造者》への移行もスムーズになった。基本的に《創造者》の方を使うことの方が多いせいだろうか。

 とは言え、《作成者》が要らない子、という訳ではないようで、あくまで『《創造者》は《作成者》の延長(オプション)』のようなものらしい。

 ――あとは魔法とか撃てればいいよなぁ……。

 よく漫画などで、手の平からではなく、銃口から魔法を放つキャラクターなどいるし、その方がかっこいい気がするが、それは俺が魔法を扱えたらの話だ。

 ただ、魔力が込められた弾丸、魔法で作られた弾丸であればどうか。実弾の代わりに使用者である俺の魔力を使う、もしくは魔石を使って魔力弾を生成するのだ。俺が魔法を扱うというより、銃自体が魔法を行使するようなもので、作れるかは微妙だが、


『――追加条件を確認。……認識成功』


 あまり期待していなかったのだが、上手くいった。魔力弾を作成するぐらいなら普通の魔法よりは難易度が下がるようだ。

 つまり、これで実弾と魔弾の両方を扱える。

 ……厨二感出てきたな!

 正直好物だし、実用性はあると思うので、オーケー。もう外見もSFチックにかっこよく決めよう。唸れ、俺の想像力!

 そのうち、ビームとか撃ってもいい気がするが、できるかわからないし、てんこ盛りにする前に基本的な性能を上げて、かつ、俺自身がそれを扱えるようにしなければ意味が無い。

 銃自体も基礎さえ出来上がれば、能力追加はそこまで難しくないので急ぐ必要もなし。

 等々から、だいたいの出来上がりを想像した。


『……細部認識完了。追加条件により、消費魔力増大……外部代替魔力で作成可能。創造者で作成開始――』


 言葉と共に、俺の触れていた石がふっと消えた。スキルの行使自体には俺の魔力が必要らしく、多少の脱力感に襲われるが、気にもならない程度だ。

 後は完成を待つだけだが、魔弾関連作成の影響か、すぐには完成しない。これもスキル自身が学習してくれれば良いが、今急いでいるわけでもないので良いことにする。


「ふぅ……しかし……」


 銃作成をしながらも、ずっと魔石を採取してはストックスに放り投げている訳だが、一向に魔石が減っている様子が無い。

 確実に余る。すべて採っていくつもりはないが、ここまできたのだからできることはしておきたい。

 だから、あることを俺はひらめいた。

 ――これだけ大量にあれば……、『あれ』つくれるんじゃないか?

 そう、俺のバイク。おそらく日本の山奥でぐちゃぐちゃになってしまったであろう俺の移動の足。


『目的物質認識――』


 未だ新型銃作成中のはずだが、大丈夫なようだ。

 レイ・ウィングズは日本のようにコンクリート整備されているわけではないので、車体の衝撃吸収性を大きく、タイヤも頑丈に。

 燃料はガソリンがこの世界には無いと思うので、代用として魔力を使える感じで。消費魔力がどれだけかわからないが、乗ることになる俺の魔力か魔石を入れれば動くように。ここらは銃と同じ要領か。

 そもそも走れる道がないということも考慮して、ホバー機能をつけても良いかもしれない。その場合、普通に走るより燃費が悪くなりそうだが空飛ぶバイクとか夢があっていい。

 あとはストックスに入る大きさ。最初は頑丈で巨大なバイクを想像したが、できればストックスに入れられる方がいい。駐車場もないし。


『……細部認識完了――消費魔力増大――保有魔力、外部代替魔力で確認――不達成』


 む。これは魔力が足りないということか。

 今、サッカーボールほどの魔石に触れていたわけだが、どうやら足りないらしい。

 もっと大きな、もしくは量が必要だ。

 俺は立ち上がって見渡してみた。どこかにもっと大きい魔石は無いものか。

 歩き回って探すが、だいたいがボールほどの大きさだ。


「やっぱり、集めるしかないか……」


『――条件を達成。実行可能』


 は?

 いきなりの達成報告が来た。

 だが、俺は魔石に触れていない。

 どういうことだと見渡してみて、わかった。

 足の下、俺の下に赤の色があった。それは、空間の中央、祭壇の様に盛り上がっている岩だった。

 

「これ、全部――?」


 どれだけ大きいのだ。少なくとも俺よりは大きい。これなら確かに確実に足りる。

 だから俺は容認した。大魔石が失われ、ぽっかりと穴が開く。


『実行容認を確認。《創造者》で作成開始。これまでの作成と比較し、最大規模の作成のため、完了時間増大』


 銃よりもさらに時間がかかるということか。

 ここを脱出する頃にはできていればいいなぁ。

 どちらにしろ、大きな収穫だ。

 ストックスに銃とバイクを入れる余裕を残しつつ、魔石を拾った俺はリーシャに近づいた。

 リーシャは何故かこの場所の出入り口、洞窟の方を見ていた。


「おーい、リーシャ。俺は集め終わったけどそっちはどう――?」


 言い終える前に、リーシャに手を掴まれ、岩陰に引っ張り込まれる。同時に、今までと比較にならない熱が全身を襲った。


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