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25.火山内探索

「――あっつ……」


 空洞から火山内部に足を踏み入れた俺達は、その瞬間から段違いの熱気に襲われた。

 それもそのはず、今いる岩の橋のはるか下には赤の流体(マグマ)がぐつぐつと煮立っており、そこから発せられる熱量に地上で耐えられる物体はそう多くはない。


「流石にここまでなると魔法防御が必要ですね」


 そんなのあるのか。


「……ウォルヴレイン」


 下級水属性魔法、ウォルヴレイン。対象の周りを水魔法で発生させた霧で覆い、外熱から守る魔法だ。

 リーシャが魔法を行使すると、俺達の周囲を薄い霧が漂い始め、俺達を包み込む。

 はっきりわかる温度低下。これはいい。


「しかし、リーシャの言うとおりに、ここに人が来たってなるとわからないな。何しに来たんだ、こんなところ」


「わかりません、魔石を堀に来た――にしてはリスクが高すぎる場所です」


 一歩、足を滑らせれば即死だ。シエラリーベルという飛行魔法が出来る人間なら助かるだろうが、相当難しい上級魔法であり、それこそランクAやBの一部の人間ができるレベルのものと前に聞いた。そんな人間が多かったら、ギルドも苦労はしないだろう。

 そこで俺はラインアルストの雑貨店、アルガドの店主にして、俺に魔石探しの情報をくれたリリエがふと言った言葉を思い出した。


「そういえば、リリエさんが言ってたんだけど、キワル山には王族の秘宝が眠っていたっていう噂があるんだって?」


「リリエさんが、ですか。あの人、昔からそういうことに詳しいですね。ラインベルニカに居たときもそんな話を聞きましたよ」


「昔から知り合いだったのか?」


 それにラインベルニカに居た、とは。


「はい。私や姉さんは二、三年前はラインベルニカに住んでいたんです。姉さんはリリエさんは幼いころからの友人らしく、よく絡まれてましたね」


「ミストっち、なんて呼んでたのはそういうことか……」


 ギルド支部長をそんな風に気軽に呼ぶ存在は稀だ。


「私もその頃からお世話になってますね。ただ、姉さんが言うには、リリエさん、いつもはあんな風に飄々としてますけど政府に一枚噛んでるんじゃないかって」


「それってエージェントか何か、ってことか?」


 リーシャは頷き、言葉を続けた。


「政府の高官しか知らないような事を話されたりするそうです。うっかりみたいですけど」


 うっかり、って。エージェントで外部にうっかり情報を漏らすのはどうなの。


「ともかく、リリエさんが言うなら他の根も葉もない噂よりは多少現実味があります。王家の秘宝というなら、おそらくは聖剣リュミエール・アージェンクかオプスキュリテ・アージェンク、もしくはレイ・ウィングズを守護しているといわれる守護宝石のことでしょう」


「あ、やっぱ聖剣ってあるんだ」


 これでテンプレ的に存在しないのは魔王だけか。いても困るけど。

 そんなことを思っていると、石橋を渡りきる。この先は別の空間につながっている。ゲームがとちょうどMAPの切り替え的な感じだ。

 行ってみれば、また洞窟になっている。が、岩の壁は赤の光を帯びていて、懐中電灯など必要がなくなっている。

 マグマが無いだけ先ほどよりはマシだが、それでも暑い。


「火山内部だから、というのもありますが、やはり空間魔力の火属性魔力の多さが尋常ではありませんね」


「そういや、属性の話してくれるんじゃなかった?」


 魔物退治からのハプニング、新発見など色々あって忘れていた。


「そうでしたね、この魔力の割りに魔物も出てきませんし、警戒は一応しながら授業といきましょうか」



●●●



 それから数十分、獄炎の中、リーシャの授業を聞くことになった。

 リーシャの話を俺なりに簡潔にまとめてみた。

 まず、魔法に属性が存在するように、魔力にも属性は存在するという。

 魔法ほど属性間に差があるわけではないが、魔法を行使する際に同じ属性の魔力を使えば少ない魔力量で効率よく使用できるのだ。

 また、生物を含めた物体が持つ魔力も属性があり、俺達人間が持つ魔力も属性を持つのだと。

 生物は環境に左右されることもあるが、種族ごとに属性が固定されているらしい。だが、


「人間――厳密に言うとヒューマン。エルフなどの亜人ではない純粋な人種は環境や血筋など関係なしで先天的に属性が決まるのです」


「……つまり、俺とレオが人間じゃなかったら同じ属性だったけど、人間だから異なる属性だってことか」


「はい。ジュンイチさんとレオ君の属性はわからないので同じかどうかはわかりませんが。ラインアルストに帰ったら魔法具店で調べることが出来るので行ってみる事をお勧めします」


 自分の属性がわかれば、いまいち上手くいかない魔法もやりやすい属性などがわかるかもしれない。


「じゃあリーシャとかはどうなんだ?」


 リーシャはハーフエルフ。俺と同じ純粋な人間ではない。


「エルフは基本的に風属性なのですが、私は風と光属性を持っています。だからここもある程度は耐えられますね。純粋なエルフだとこの火属性魔力は身体に大きな負担になると思います」


 二つ属性持ちなんてのもあるのか。お得セットか。

 そこで、ふと俺は以前から気になっていたことがあるのを思い出す。この際だから聞いてみることにした。


「込み入った事情なら流してくれていいんだけどさ。リーシャはミストさんを姉さんって呼ぶけど、ミストさんって普通の人(ヒューマン)だよな……?」


 ミストの耳はリーシャのような長耳ではない。

 容姿も特に似た感じではないし、リーシャの姓はレイローラルに対し、ミストはリアウェイと姓も異なる。

 世の中様々な事情の人はいるし、大戦後の世界ならそういう人も多いだろうと思いながら、下手な地雷を踏むよりかは、きちんと聞いておくのが良いだろう。


「特に深い事情とか、そういうのではないんです。ただ、私がラインベルニカに居た頃、姉さんには武術とかでお世話になって。いつも一緒に居たので、自然とそう呼ぶようになってしまいまして」


 その後、ミストがラインアルスト支部長になることが決まった時にリーシャも一緒にギルドに登録して一緒に行ったという。今はミストと共に住んでいるらしい。


「ジュンイチさんはご兄弟などはいらっしゃらないのですか?」


「歳の離れた妹が居るよ。ただ、元の世界だと俺は成人してからずっと一人で暮らしてたからなぁ。この世界に来る前には少し会ったけどさ」


 あれから一ヵ月半。日本だと俺の扱いはどうなっているだろうか。


「……あとは従兄がいる。歳も一緒で家も近かったから昔はよく共通の友人一人いれて三人でつるんでたなぁ」


 高校までは一緒だったので、けっこう遊んでいた記憶はあるが、


「今や向こうは大企業の副社長だけどさー」


 元々、俺の一族が経営していた会社を祖父から叔父が引き継ぎ、その流れで従兄もそこに就いた。数年前に本社に見学しに行ったこともある。


「キギョー?」


「……あぁ、そうか……。えーと、前に会社って言った事があったよな。あれと同じ意味――」


 厳密には違う。が、この際、気にする必要もないだろう。異世界だし。


「――だな。この世界で言うならあれだ。商人が集まって連合会とか作るだろ? あれといっしょ」


「なるほど。では、ジュンイチさんの従兄弟の方は商人を束ねる方なのですね」


 それはそれで、何か違う気もするが、ややこしくなるのでそのままにしておく。


「社名は『ノードゥス』。確か、絆とかそんな意味だったかなぁ」


 ラテン語とか良く知らない。

 まぁリーシャに親戚の会社名を言ったところで意味は無いんだが。


「――ノードゥス……?」


「……? どうした?」


 俺が放った言葉に、リーシャが違和感を覚えたようだ。


「いえ……気のせいでしょう。なんでもありません」


「そっか? それならいいけど……、しかし、思ったより何にも無いな」


 別に『ダンジョン』ではないので、宝箱があるとは思っていないが、王族の秘宝の話など聞くと、多少なりとも期待はしてしまう。

 そもそも、最初の目的である魔石のまの字もないのだ。

 今歩いてる洞窟の壁の石など、謎の光を帯びているので、これだけ持って帰っても石マニアなどには売れそうだ。

 そんなことを思った時、洞窟の終わりが見え始める。


「おっ、洞窟が終わるみたいだな」


 先ほどから徐々に霧のバリアを纏っていても熱さが軽減されなくなってきている。つまり、どんどんそれだけ温度が上がっているということだろう。どうしたものかと思いながら、洞窟を抜ければ、そこは広い空間だった。

 ……よくあるボス部屋とかこんなんだよなー。

 中央まで行って見れば、段差があり、大きな岩が置いてあるが、聖剣などは特に刺さっていない。


「――ジュンイチさん、周りを見てください!」


 俺の後ろ、リーシャが言葉をかけてくる。何故か興奮気味だ。


「どうした?」


 言葉通りに見てみれば、いたるところに大量の赤い岩石が埋まっていたり、転がっている。

 これは、もしかして、


「あの赤い鉱石、すべてが魔石です!」

 

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