19.温泉鉱山街ラインマインズ
5000PV突破してました、ありがとうございますー。
青い空がある。
その空の下、俺こと清堂 純一は今現在、金髪巨乳ハーフエルフと二人旅を満喫中である。
ちなみにミストにはかなり渋い顔をされた。まあそうだろう。かわいい妹が自称・見た目好青年、の中身おっさんと二人旅に出るというのだから。
さて、ここまでの経緯だが、俺とレオが魔物に襲撃されてから二週間経ち、俺とリーシャは街を出た。
そしてそれからさらにニ週間が経過した。目的地の町まではラインアルストから千キロ近くあるのだが、実は目前まで迫っていたのである。
というのも、ラインアルストと目的地であるラインマインズまでの間には複数の町が点在しており、馬車に乗ることが出来たのである。徒歩で行くつもりだった俺は安心した。何しろそれだけの距離、何日かかるかわかったものではない。
しかも、道中一度だけ馬車を牽引する馬が普通ではなく、魔流活性をして疾駆する特殊な馬にあたり、時速六十キロほどで数時間身体を揺らされることもあって、そこで距離を稼いだはいいが、ひどい目にあった。
――日本の道路がいかにありがたいか、異世界に来てわかるとは……。
日本に戻ったら、ありがたく走らせてもらおう。戻れるのかは知らないが。
今、俺たちはラインマインズ直前の町を出て、徒歩で道を歩いている。どうやらラインマインズまでは馬車が出ていないようだ。
しかし、天気も良く、徒歩でもこの様子なら夕方には到着するだろうという判断を下した。
周辺、まだ山岳地帯というわけではないが、坂道も多くなってきており、前方遠くに見えていた大火山キワル山も徐々に近づいてきている。
「――ところでジュンイチさん、魔石を手に入れて何か作るものでもあるんですか?」
唐突な質問が来た。
「……」
「……まさか、とりあえず魔石が欲しかった、とか言いませんよね?」
リーシャの横目に冷や汗をかきながら俺は言い訳を開始する。
肩からぶらさげた古臭い銃を示しながら、
「いや、こいつをね? もうちょっと俺の知ってる、ちゃんとした銃にしようとだね?」
「何言ってるんですか、それだって立派な最新鋭武器です」
この娘というかこの世界の火器への価値観どうなってんだ。だいたい、だいぶ埃被ってたのを、俺が手入れしたからまだ見栄えは良いが、初めてこれを手に取ったときは酷かった。
「とにかく、色々試してみたいこともあるけど、どちらにしろ素材か、魔力が無きゃどうにもならないんだから」
「スキル、ですか。直接見たわけではないのでなんとも言えませんが、有用なスキルと聞きました」
どうやらリーシャは俺のスキルに興味があるようだ。
というより基本的に誰もがスキルについては興味があるようだ。やはりよほど珍しいものらしく、誰彼かまわずスキルについて喋らなかったのは正解だったかもしれない。
「なんなら、何か欲しいものがあれば作ろうか? すごいものはそれなりの代価が要るけど、ここまでついてきてくれたんだし、お礼はしなきゃな」
「え……、欲しいもの、ですか……そう聞かれるとぱっとは浮かばないですね。でも、そのうちお願いするかもしれないです」
とは言え、それも魔石が手に入ればの話だ。この一ヶ月、魔力総量を上げるよう努力はしてきたが、それでも俺の魔力だけではできる物も限られてくる。一応、創造者で俺の魔力をすべて魔石にして自然回復したら、また魔石を作る、なんて裏技も考えたが、疲労に対してリターンが見合わない気がする。
大事なのは楽して欲しいものを手に入れることだ。ここまで来てる時点でそれは達成できていないわけだが、異世界冒険も俺の目的の一つだったので、差し引きゼロということにしておく。
●●●
「やーっと着いたー」
当初の見立て通り、俺たちは夕方前にラインマインズに到着した。
若返って体力も戻り、仕事で鍛えられていても、やはり歩き続けるのは地味に疲れるものだ。
まずは宿探しだ。一晩過ごすところがないと野宿をする羽目になる。
「ラインマインズは元は鉱山の町として有名だったのですが、数年前に発掘途中に温泉が湧いたことで、ここ最近は温泉街としても力をいれているようで、宿も増えてきているようですね」
心なしか、リーシャが浮きだって見える。
そういえば、リーシャ自身の目的が温泉だったな。
「なら、どこか有名なところとかないのか?」
「前の町でおすすめの宿を聞いておきました」
有能。
俺はリーシャの先導に従って、街を歩く。
温泉街になっているからか、俺たちの他にも観光客らしき姿をちらほらと見る。
日本の温泉街とはまた違った雰囲気だが、観光地としての独特の雰囲気はあり、明るい感じだ。
「――ここです」
リーシャが立ち止まった。
「へえ、立派なところじゃん……お高いんじゃないの?」
それなりに貯蓄はあるが、それはあくまで魔石購入費であって、宿泊などで無駄に散財する気にはなれない。
「高いですよ。……本来は」
ん? 本来は?
どういうことだ。
「――この宿はギルドメンバー割引がありまして、ギルドに所属していると証明できれば、半額で済むんです」
なるほど、会員価格みたいなものか。
「……ラインアルストを出る前にメンバー証を持って来いって言ったのはそのためか」
「はい。各地にこの制度を取っている施設は複数ありますので、ジュンイチさんも覚えて置いて損はないと思います」
確かに、お得な制度だ。聞けば、ギルドと連携した施設や人物が多く取っているものらしい。
「そうだな、覚えとく。とりあえず入ってみようか、空き部屋があるかはわからないが」
そう言って俺たちは宿屋に入った。
中に入ると想像以上に人がいた。どうやら酒場としても人気があるようで、酔った老若男女でテーブルはごったがえしている。
リーシャは先ほどからフードをかぶっている。そのきれいな容姿から絡まれることが多いらしく、色々と察した俺が、対外的なやり取りの多くを引き受けていた。
しかし、身体のラインで女性だとわかってしまうし、その隠し切れない特徴で酔った男に絡まれそうなので、俺たちはまっすぐ受付に行き、店の女将らしき人に声をかける。
「すみませーん、部屋を二つ借りたいんですけどー」
「んー、ごめんなさいねえ、今空き部屋が一つしかないのよ」
マジか……。
もう夕方に差し掛かっているし、仕方が無いことだ。
女将は俺とリーシャをみて、二人旅だと認識したのか、
「一応その部屋はベッドも二つあるから泊まることはできるけどどうするかしら?」
いやいやいや。さすがにそれはない。
否、俺的には別に良いけどリーシャが嫌だろう。だから俺は、
「いや、せっかくで悪いん……ん?」
ちょいちょい、と服を引っ張られた。
後ろを見れば、フードで表情が見えないリーシャが、
「私は、その……かまいませんから、ここにしましょう」
「えぇ……」
俺は驚きで何故か困惑の声をあげてしまった。
「ここを出て、他のところで二部屋取れるとも限りませんし、ここは観光地です。最終的にどこも空いてないというのは避けたいので」
「そうか、まあそういうことなら仕方が無いか……。じゃあすみません、その部屋でお願いします」
はいはい、と女将が手配に入る。何故かこちらを見るその顔がニヤニヤとしていたのを俺は見逃さなかった。




