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創造世界の英雄譚 ~魔法使いへ祝福を~  作者: 八又ナガト
第三章 -永遠の契約-
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第三話 一対魔物の攻略戦

 目の前にて圧倒的力量差のもとに繰り広げられる惨殺劇を見届けた後、俺は頭の中に生まれた疑問を白銀の騎士にぶつける。


「おい、なんで俺連れて来られたんだ? お前一人で十分だろ」


 レイはにこりと爽やかな笑みを浮かべながらその問いを受け止める。


「いや、重要なのはこれからなんだ。倒すことはできると言っても、僕の力では存在の消滅までには至らない。ほら、見てくれ」


 促されるまま、粉々に断ち切られた魔物の残骸に目を移す。

 そこで気付く。魔物の身体が消えていない。

 本来ならその身は魔力に還元され大気に溶けていくというのに。


「うわきっも」


 どこかから、この室内に魔力が流れ込む。

 するとその魔力に応えるように、もぞもぞと数百の破片が動き出す。

 それを見た俺は思わず素直な感想を口に出してしまう。

 純粋だからね、仕方ない。


 破片達はそのまま地を這うように動き、一点に集まっていく。

 その中心にあるのは赤い輝き、身体に埋め込まれていた宝石だ。

 まず初めに宝石の破片が集まり、眩い光を放った次の瞬間には完全に復元。

 続くように他の身体を構成していた破片も合わさる。

 付着し、吸収し、膨張し――数十秒後には、全長五メートル程の、この部屋に足を踏み入れた時のままの魔物の姿に再生していた。


「珍しいタイプだな」


 再生の光景を見届けた俺は思ったままの感想を口にする。

 その言葉にレイがこくりと頷く。


「どれだけ細かく切り刻もうがすぐに復元するのがこの魔物の特徴でね。身体が多少消滅したところで、すぐさま大気中の魔力を取り込み元の姿に戻る。その身を全て消し去る攻撃も出来ないことはないけれど、それだとこの遺跡そのものが崩壊してしまう恐れがある」


「……それはたしかに止めといた方が良いな。遺跡内の溜められた魔力が外部に出て、一斉に魔物が産まれる可能性がある」


「ああ、もしそうなれば近隣の町に危険が及ぶ。だから出来れば遺跡を壊さずにこの魔物を討伐したいと考えているんだ」


「グギョガァアア!!!」


「邪魔」

「剣閃」


「ゴボッブ!?」


 いきなり迫ってきた魔物を爆散させ切り刻みながら、俺達は会話を再開させる。


「それで、何か手段はあるのか?」


「ああ、もちろん。それに君の力を借りたい。付いて来てくれ」


 身を翻し、扉の外に向かうレイについていく。

 俺とレイが魔物のいた部屋の外に出ると、両開きの扉が振れずとも閉じ始める。

 そういった術式か組み込まれているのだろう。

 そんなことを考えながらも、俺は颯爽と歩いていくレイの背を追った。



「という訳で、次に見て欲しいのがこの部屋なんだ」


「デジャヴ」


 レイに連れられ複雑な遺跡内の通路を進んだ先にあったのは、巨大な空間とその先にあるこれまた巨大な両開きの扉だった。さっきの場所に戻ってきたのではないかと疑ってしまうが、進んできた方向的にそれはありえないとは分かっていた。


 レイはその空間を突き進み、そのまま扉を押し開く。

 その奥にあるのはこれまた巨大な空間と――その中心にいる一体の魔物。

 全長五メートル程の鼠色の筋骨隆々な体躯。

 身体の中心は青色の宝石が埋め込まれ、右手には石の棍棒が握られている。


「とりあえず一回倒しておくね」


 魔物の姿を視認するやいなやレイは剣を振るう。

 そして魔物の体躯を数百に切り刻んだ。

 そろそろ見慣れてきたなこの光景。


 しかし、いや予想通りとでも言うべきか、すぐさま魔物は再生を始める。

 そしてやはり、その際に外部からこの部屋に流れ込む魔力を感じる。


「もう推測は出来たかもしれないけど、この魔物は二体で一対の魔物なんだ。片方倒れたとしても、もう片方が壊れたコアに魔力を送り込むことによって再生する。よってこの魔物を討伐するには両方を同時に倒さなければならない。そのために、君の力を借りたかったんだ」


「なるほどな」


 いきなりレイが一人で魔物を倒した時はどうなるかと思ったが、そういう理由なら納得だ……いや、少しの疑問点はあるが。


「けど、わざわざ俺を呼ぶ必要はあったのか? ほら、他の騎士団の奴らに協力してもらったりするとかさ」


「もちろんその方法も考えた。けれど、この強さの魔物を相手にするには少なくない犠牲を覚悟しないとならないし、そもそもタイミングを合わせて倒すことが困難になる。ほんの少しでもタイミングをずらせばすぐさま再生してしまうからね」


「ああ……そういうことか」


 さっきから俺やレイが一瞬で倒せていたから忘れていたが、そもそもこの魔物は第一級災害指定妖魔以上の実力を持っている。並大抵の実力者では真っ向から戦うのは困難なのだろう。


「だけどそれも僕と君なら問題なく一撃で、狙ったタイミングで魔物を倒すことが出来る。ただ、どうやってそのタイミングを計るかだけど……この遺跡内の魔力濃度の影響で、魔道具の使用は少し難しいところがあってね」


「ああ、それなら多分大丈夫だ」


「何か手段があるのかい?」


「ああ」


 首肯と共に、俺は静かに目を瞑る。

 そのまま魔力を体内で循環させ五感を強めていく。

 ――――強化。


 感じる。

 この遺跡内の全ての音や風の動きが。

 無論、もう一体の魔物がいる部屋も例外ではない。


「…………」


 眼を開けると、目を細め俺を見つめているレイに向き直る。


「いま試してみたけど問題ない。それぞれの配置についてからお前が声で合図してくれたら、それで十分だ」


「……本当に凄いね、君は」


 感心した様にそう言葉を零した後、レイは頷く。


「分かった。そういうことなら君にはここで待機していてほしい。僕が向こうの魔物を相手する。僕が向こうに到着した時に一度、攻撃を仕掛けるときに一度合図する。よろしく頼むよ」


「ああ」


 言い残すと、レイは再生する魔物には目もくれず駆け出して行った。


「……さて」


 合図が来るまで、この魔物を倒さず防衛に集中しなくてはならない。

 そう考え直し、俺は目の前にいる魔物に冷たい目線を送――――


 ――――到着したよ。


「はっや」


 出て行ってから五秒くらいで、レイの声が聞こえた。

 さすがに早すぎるだろう。


 なんて思っている間にも、レイの言葉は続く。


 ――――始めるよ。3、2、1、


 0、と。

 レイが言った瞬間、俺も行動を開始する。


 余計なことはしなくていい。

 地を蹴り魔物に肉薄。

 ただ純粋に、力のままの一撃を。


「グガァァァアアアア!!!」


 眼前の魔物の身体に向け放った。

 それだけで、その巨体は数千の破片に爆散する。

 破片は部屋全体に飛び散っていく。

 浴びたくはないためバックステップで距離を置く。


「……これでいいのか?」


 一分ほどその場で待機するが再生する様子はない。

 もう大丈夫なのだろうか。

 ――動きがあったのは、そう安堵した瞬間だった。


「ッ、まだか」

 

 レイの推測は外れていたのか、またもや破片は動き始める。


「あぁ?」


 ただ、違う点が二つ。

 一つは破片が向かう場所が部屋の中心ではなく、上方であったこと。

 もう一つはその勢いが異常――それこそ天井を打ち抜く程であったこと。


 数千の破片達は天井を貫く。

 すると土台を失った影響か、遺跡全体が激しく振動を開始する。


 ――――緊急事態だ、シラサキ。一旦地上で落ち合おう。


 同様のことが向こうでも起こっているのだろう。

 レイからの指示を受け、俺は応えるように地上を目指した。

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