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バカんわ 激闘のにらめっこ 続

 そんなこんなで。

 選手:白崎修・ソラ

 審判:逢ヶ瀬伶奈

 に人員が変わり、後半戦が行われようとしていた。


「いや全く訳が分からないんですけど」


 にらめっこのルールを簡単に聞いた逢ヶ瀬は眉を顰めながら不満を口にする。


「この程度で文句を言うなんてなぁ、はっ、これだから最近の若者は」


「考えない。感じるべき」


「あっ、これ私が責められる流れなんですね。はいはい分かりましたやればいいんでしょうやれば。で、そちらの変態さんはいつまでその状態のままでいるつもりですか?」


「リリスの視線が外れるまでかな」


「なっ! みみみ見てませんよ!?」


「いや両手で顔を塞いでるつもりかもしれないけど、普通に指の隙間から目見えてるからな」


「ッッッ!!!」


 俺の指摘にリリスは顔を真っ赤にし今度こそ両手で顔全体を覆う。

 リリスの可愛い一面を見て満足した後、俺はソラに向き直る。


「決着をつけよう、ソラ」


「ふん。勝つのは私」


「あっそれじゃあスタートで」


 そんなぐだぐだなまま、後半戦が開始された。



 開始された……のだが。


「…………」


「…………」


 前半戦の時と同様、開始されたから数十秒、俺達は無言でただ睨み合っていた。


「あの……二人とも、何かアクションは起こさないんですか?」


 その光景を見ていた逢ヶ瀬が、急かすようにそんな言葉を告げる。

 それに対する俺達の答えは決まっている。

 そう、俺達は先程と同じく、相手を笑わせるタイミングを測っている――――のではなく。


「「ネタが尽きた」」


 俺とソラは同時にそう答えた。


「ええっ!? まだお二人とも一度ずつしか相手を笑わせようとしていませんよね!?」


 その言葉を聞いたリリスが心の底から驚いた様子でそんなことを叫ぶ。

 仕方ない。素直に答えるのは恥ずかしいが正直に言うか。


「いや、だって俺さ、元の世界に友達とかいなかったから、こんな風に誰かを笑わせようとする経験なんてほとんどないんだよ」


「右に同じ」


「そ、そうですか……」


 俺とソラの返答に、リリスは少しだけ表情を引きつらせていた。

 おっとここは笑うところだぞー、そんなリアルな反応求めてないからなー。

 てかソラさん友達いないタイプの人なんですね。あー可哀想。


 しかし、本当にどうしよう。

 このままだとにらめっこ勝負はジリ貧、決着がつくことはないだろう。

 とすると、残された唐揚げをどちらが食べるか決まらない。

 既にその本来の目的などどっかいった感がある戦いだったが、ちゃんと覚えているからな。


 仕方ない。ここはもう一度ソラに思いやりという概念についてしっかり教育し、俺に譲ってもらおうではないか……


「もぐもぐ。で、そもそもどうしてこんな無駄な勝負が行われてるんですか? ……うわ、冷めてて美味しくないですねコレ」


「待て」


「ッ、ちょっ、いきなり手を握らないでください!」


 反射的に俺は逢ヶ瀬の手を掴むが、一瞬のうちに払われる。

 いやそんなことはどうでもいい。


「おい逢ヶ瀬、なんでお前それ食ってんだ。このにらめっこはその唐揚げを賭けた勝負だったんだぞ」


「……は?」


 俺の言葉を聞いた逢ヶ瀬は、手に持つ食べかけの唐揚げと俺の顔を交互に見る。

 そしてそれを数度繰り返したあと……


 ぱくり。


「おっとまさかこの流れから普通に食うとは」


 残った部分を自分の口の中に放り込んだ。

 てか油物を手で食べるなよ、汚れるぞ……

 うわ水魔術で洗って風と炎の複合魔術で蒸発させやがった。

 魔術って便利。


「いやいやいやいや」


 冷静に分析してしまっていたが思い直す。

 何してくれてやがってんだてめぇという視線を向けると、逢ヶ瀬は面倒そうな顔をして口を開いた。


「そんな不満げな表情をされましても。どうしてもまだ食べたいと言うのでしたら、お代わりを頼めばいいんじゃないですか?」


「なん……だと?」


 逢ヶ瀬の提案を聞き、俺の身体に電流が走った。


「その発想はなかった」


 そうだ、なぜ思い付かなかったのか。

 普通に考えればその手段があることくらい分かるだろう。

 おそらくソラに自分の分を奪われたという思考が、俺の視野を狭くしていたのだろう。


「ん? 僕に何か用かい?」


 思えば、いつの間にか存在感が消えていたレイは、テーブルの奥で一人同じメニューを食べている。あれは間違いなく、俺達のにらめっこが始まってから運ばれたものだ!


 そしてまるでタイミングを計ったように、逢ヶ瀬の前にも料理が運ばれてくる。


 そうだ、また作ってもらえばいいだけの話だったのだ。

 そこに気付くとは……もしかしたら逢ヶ瀬は天才なのかもしれない。


「お代わりお願いします」


「畏まりました」


 という訳でさっそく俺は給仕さんに頼むと、その女性は一礼し去っていく。その際に小声で「その結論に至るまでが遅い」と呟いていた。ご、ごめんなさい。


 とにかく、これで全て解決だ。

 もう俺とソラが争う必要はない。


 そう思いながら、俺はソラのいる顔を向け――――


「よし、仲直りだソラ。これからは喧嘩せず仲良く食べようじゃな――」


「ひょっとこ」


「ぶふぉっ!」


 ――――ひょっとこになっているソラの顔を見て、思わず噴き出した。


「わーいわーい。勝った勝ったー」


 そんな俺を見て、ソラは両手を頭上に掲げ無表情で喜びを表現していた。いや表現できてるのかこれ……


「あっ、ソラさんの勝ちで」


 面倒そうな様子を一切隠すことなく、逢ヶ瀬は勝敗を告げた。


「ふふん、私の勝ち」


 そのままソラは両腕を腰に当て胸(無い)を張ると、優越感に満ちた表情でそう告げた。

 その姿を見て俺は一つの答えに辿り着く。


「ソラ、お前、まさか初めから……」


「そう。既に私は、唐揚げなんてどうでもよかった。というかもうお腹いっぱいだった。私はただシュウに勝ちたかったから勝負を受けた……ただそれだけ。ソラちゃんからは以上です」


「くそッ、やられたッ! 安堵した瞬間を狙うという技を再度使ってくるなんて想像もしていなかった! ああ認めるよ。ソラ……お前の、勝ちだ」


「シュウこそ。手強かった。またいつか戦おう」


 認め合った俺達は、固い握手をかわしお互いに認め合った。


「えっと、ここってそんなに本気で悔しがったりするシーンなんでしょうか?」


「リリスさん、あの二人はちょっとおかしいので気にしない方がいいです。ほら、デザートが運ばれてきてますよ。一緒に食べましょう」


「えっ……アイガセさん、さっき運ばれてきた料理をもう食べ終えたんですか?」


「あのくらい二分で余裕です」


「す、すごいですね!」


 あちらはあちらで、なんだか二人楽しそうに話し合っていた。


 こんなふうにして。

 第一回にらめっこ対戦は幕を閉じた。

 第二回があるかなんて知らない。

シリアスが一切ない日常シーンを、第三章に入る前に書いておきたいと思った結果こうなりました。

一応作者的にはキャラ崩壊ギリギリのところで留まっていますが、読者的にどう思うかはちょっと予想がつかないです。

次回から本編です。

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