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創造世界の英雄譚 ~魔法使いへ祝福を~  作者: 八又ナガト
第二章 -壊す願いと創造者-
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第十三話 大丈夫、死んでない

 結局、俺とソラの無意味な戦闘の後、このギルド内の冒険者全員から頭を下げて頼まれたため、彼らに協力することになった。


 作戦と呼べる程の物はない。

 俺とソラが真っ正面からぶん殴って二度と手を出さないように約束させるだけだ。

 フィスが頷かないなら、その時はどうしよう……四肢破損はさすがにやりすぎだよな。


 まあそこらへんは後々考えよう。

 とりあえず痛めつけるだけだ。


「気をつけろよ、兄ちゃん」


 フィスが来ると宣言した時刻まで十分を切った時、グドラルは俺にそう忠告する。


「兄ちゃんや嬢ちゃんの実力は分かった、本物だ。純粋な戦闘力ならフィスにも負けないだろう……けど、アイツがこれまでにやってきた悪事を思い返せば、アイツは実力に見合わない異常な結果を残すことがある。一筋縄ではいかねぇかもしれねぇぞ」


「えっ、それをこのタイミングで……?」


 もっと早く言ってほしかった。

 けど関係ないか。

 ワンパンで終わらせてやる。


「あ、あの……」


 不意に後ろから声をかけられる。

 見ると、そこには茶髪の二つおさげの女性メリアが立っていた。

 素朴な雰囲気だが、童顔でとても可愛らしい。


「私達のギルドの問題に巻き込んでしまって、本当にごめんなさい……」


 そんな彼女は、本当に申し訳なさそうに頭を下げていた。

 この純朴かつ真摯さを、逢ヶ瀬やソラに見習ってほしいところだ。

 俺の周りで俺に優しいのリリスだけだからな。

 

 と、返事を待ち続けるメリアをいつまでも放っておくわけにはいかない。


「いや、別に大丈夫だ。むしろあれだ、ギルドって言ったらこんなイベントもあるよな、くらいの気分で逆に楽しんでるから」


「……そんな風に、気を使ってくれるんですね」


 不安に満ちた表情で、だけど小さく微笑みながらメリアはそう呟いた。

 ごめん、気を使ってるつもりは全くない。

 まあ俺に都合のいい展開っぽいからほっとくけど。


「…………」


 と思ったら、ソラから冷たい視線を感じる。


「なんだよ」


「別に、何でも」


「嘘つくなよ」


「嘘じゃない」


 嘘じゃないらしい。


 それからの数分間、緊張感に満ちるこの空間で、俺とソラはひたすら二人あっち向いてホイで戦う。

 そしてついに、カランカランと音を鳴らしながら扉が開かれた。

 誰もがそちらに注意を向ける。

 いたのは、予想通りの人物。

 フィスと、その取り巻きの若者二人だ。


「おい、金は用意できたのか!」


 自身に向けられた視線を払うように、フィスは大声で威嚇する。

 一番前にグドラル、その後ろに俺とソラが同行し対応する。


「金はない」


 真正面から告げられたグドラルの言葉に、フィスは眉をひそめ何を言っているのか理解できていないような素振りを見せた後、怒りに満ちた表情へと一変。


「あぁっ!? 嘗めてやがんのか! 悪びれもせずによぉ……」


 と、そこで一度言葉を区切ると、突然熱が冷めたように黙り込む。

 そして、気味の悪い笑みを浮かべる。


「はっ、まあいい。俺は寛大なんだ! 金を用意できなかったことだけは許してやるよ。だけどその代わりに、言っておいた通り、あの嬢ちゃんは貰っていくけどなぁ!」


 全然許してないんだけど。

 心の中で小さくツッコんでしまう。


 フィスはきょろきょろと辺りを見渡していた。

 メリアを探しているのだろう。

 しかし今日に限っては裏に控えていてもらっているためここにはいない。


「おい、あの嬢ちゃんはどこだ。猿知恵でも働かせて隠しでもしたのか? はっ、その程度でどうにか思ってるなんてなぁ、無様だなぁ。関係ねぇ、すぐに見つけ出してやるよ……邪魔する奴は、全員ころ――――」


 大きな一歩を踏み出そうとしたフィスの足が止まる。

 彼の道を防ぐようにソラが立っていた。

 ようやく俺達の出番か。


「何のつもりだ、チビ」


「貴方に、彼女を連れ出させない」


「あぁん?」


 ソラの言葉を聞き顔をしかめたフィスは、しかし次の瞬間には得心がいったかのように下卑た笑みをソラに向ける。


「ああなるほどそういうことか。テメェはまだガキだが、確かにあと何年かすりゃ上物になりそうだ。仕方ねぇなぁ! 今回だけはあの嬢ちゃんの代わりに、このガキで許して――」


 ドン引きしそうな内容を高らかに叫びながらソラに汚い手を伸ばすフィス。

 しかし、その手は他ならぬソラによって、パァンと弾かれた。

 直接触れたくないのか、テーブルナプキンに包まれた右手で。


「はあっ?」


 まさか幼い少女からそれほどの強い力で抵抗されるとは思わなかったのか、素っ頓狂な声を上げ呆然としている。

 その間にも、ソラは悠然と腕を振り上げ――――


「ふん」


「うぐおぉっふ!!!」


 自分より三十センチは高い身長の持ち主の腹部に全力殴打。

 拳が腹に埋まり、その威力のまま勢いよく床に叩き付ける。

 地面が割れ、苛烈な破砕音とともに背中から減り込んだ。

 頭と両腕両脚だけが床より上に伸びるという、なんとも無様な姿。


 既に意識がないフィスを見て、ソラは一言。


「ロリコンは、この世からいなくならなくちゃいけないの……!」


 ………………


「え、そこ?」


 重要なのそこなのかよ。

 確かにソラを見て上物とか言い出した時はヤバい奴だと思ったけど。

 そもそも何歳なんだお前。


 ……けど、そうか。ソラの基準だとロリコンはそれだけで万死に値するのか。

 そうかー、いやー、俺はロリコンじゃなくてよかったわー、あっはっは!

 いや、だから俺はロリコンでない。


 てか、別にどうでもいいけどフィスさん一ミリも動かないんだけど。

 腕や脚も曲がってはいけない方向に曲がってるし。

 息があるのかすら怪しいぞ。


「おいソラ、お前ちょっとやりすぎじゃ……」


「大丈夫、死んでない」


「ならいいか」


 どうやら殺してはないらしい。

 俺は思考を放棄した。


「えい」


「ぐおっほ!」


「ほい」


「ギャァアア!」


 ソラはそのまま残り二人の若者も無力化する。

 彼らはロリコンではないためか、フィスよりも傷は浅い。

 これで解決か……俺、また何もしてないなぁ。


「終わり。ぶい」


 ソラは倒れ伏した三人に背を向けと、こちらに向けたピースサインを送る。

 瞬間、わーっと場が沸いた。


「すげぇぞ嬢ちゃん!」


「まさか本当にフィス達を圧倒しちまうなんてな!」


「酒だ! 酒を持ってこい!」


 わいわいわいと、体格の良い荒くれ系のおっさん共が小さな少女を囲み勝ち鬨を上げる。

 相変わらず俺はその輪からはみ出されている。

 別に悲しくはない。本当だ。


「ふはっ……ははは」


 と、その時。

 足元から小さな笑い声が聞こえた。

 フィスが埋まっている場所からだ。


 見ると、そこには意識を取り戻したフィスが容貌を歪ませたまま笑う姿があった。

 両手両足曲がったままで。

 大丈夫か?


 その様子を見た冒険者達は嫌そうな顔を浮かべる。

 グドラルはその集団から一歩を踏み出すと、フィスを見下しながら告げる。


「悪いが、もう俺達はお前の言うことを聞きはしない」


 その言葉を聞いた瞬間、フィスの笑い声は更に大きくなる。


「はっはっは! 馬鹿共が! これだけで終わったと思うなよ!」


 フィスは自信満々に声を上げる。


「てめえら如きが、俺達に敵うなんざ思いあがってんじゃねぇ! “あの方”が俺のバックにいる以上、全部無駄なんだよぉ!」


「あの方だと?」


 その言葉がギルド中に響き渡った瞬間。

 俺は、その違和感に気付いた。


 場所は建物の外。

 入口の向こうだ。


「何か、いる」


 ソラも同じタイミングでその存在に気付いたらしい。

 遅れて、他の人々も身を震いだす。


「なんだこの禍々しさは」


「こんな強力な魔力感じたことねぇぞ!」


 それはどこかリーベの魔力に似ていた。

 彼女のそれに比べたら随分と劣ってるが、異様なことには違いない。


 グドラルと視線がぶつかると、彼は小さく縋るように頷いた。

 先陣を切って欲しいという意味か。


 俺は頷くと、入り口に寄り勢いよく扉を開いた。

 大通りから逸れた、暗い雰囲気を漂わせる道幅五メートル程度の脇道。

 ふと空を見上げると、そこに一人の男が浮かんでいた。


 鮮やかさの欠片もない濁った黄色の短髪。

 またもや濁った茶色の気持ち悪いタレ眼。

 その身は白色のコートに包まれていた。

 そして、彼はゆっくりと口を開く。




「オヤオヤ、皆さんはじめましテ。私の名はフレクト――――“魔王軍幹部フレクト”デス!」




 何気ない平穏の中訪れた邂逅。

 魔王軍幹部を名乗る存在、フレクト。

 禍々しさと実力は本物。

 その姿を見た瞬間、俺は――――


「と、言うことナンですが……」


 俺は。


「アナタはどうして、ソコに登っているのでショウか……?」


 フレクトの肩の上に立っていた。

 それはもう、仁王立ちで。

 アイツが名乗ってるときに普通にジャンプして乗った。


「登る理由なんて、一つに決まってるだろ」


 その場所で、“何やってるんだあの人”という視線に耐えながら、俺はかっこよく告げる。


「そこに、山があるからさ」


 決まった。

 完璧だと思った。

 いつかは言ってみたかった台詞なのだ。


 しかし、下にいるフレクトさんにはあまりウケなかったようで。


「イエ、その、言っている意味がいまいちわかりまセ――――」


「口答えしてんじゃねぇぞ」


「ぐふぅ!?」


 反抗的な意見がそいつの口から飛び出そうだったため、俺は力強く右足を振り落としフレクトの右肩を叩く。それだけで彼は隕石の様な勢いで墜ちていく。


 地面に接触すると同時、直径三メートル弱のクレーターが生まれる。

 粉塵が舞い、破片が飛び散る。

 足場を無くした俺もそのまま落下。

 華麗に着地する。

 隣には気絶して、完全に肩が外れているフレクトが横たわっていた。


 唖然、と言った注目を浴びる中、俺は口を開いた。


「大丈夫大丈夫、死んでない死んでない」


 そうして、今回の事件の全てに片が付くこととなった。

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