4 ウエディングイブ
——二ヶ月後——
怪我も治りきらないうちから桐生の戴冠式に向けて働いていた立花は、昨日の夜ようやく領地に帰ってきた。
そして明日は立花と棗の結婚式だが全く準備に関われなかったので多少心配だ。
「あれは何?」
立花は街の中央にそびえ立つ見慣れない高層建築を見上げて隣の棗に尋ねる。
「ホテルです」
「何であんな所にホテルが?」
「ええっと……尾花様がですね、役所なんて用がある奴は何処にあっても行くんだから一等地にある意味が分からないって、ホテルにしたんです」
「何で兄さん?」
立花の兄は大陸最大規模の会社の社長で当然忙しい。棗を手伝っている理由がよく分からない。
「あー、なんか人を呼び過ぎてしまったみたいでですね。泊まる所とかなくて、大変だったんです。そしたら助けて下さいました!」
「はぁ? あと、あの店は何なの?」
立花は道に並ぶ露店を眺めて言う。
「ええっとぉ。なんか食糧が余ってるとお聞きしまして、美味しい物が食べたいなぁ〜って言ったら、料理大会になってました……」
棗はおずおずと立花の視線から逃れる様に動く。
「いや、別に怒ってないから……意味が分からないだけで」
立花の目の前ののぼりには”名物料理の座争奪祭”という文字が躍っている。
訳が分からない立花であったが街中が盛り上がっているのは分かった。
「その、役所はどこに言ったの?」
「案内します!」
棗は輝くような表情で領主の館を兼ねた役所に案内してくれた。
そこは元は森だったような気がするのだが、原型を思い出せないほと立派で美しい建物が建っていた。
「奥の小さな方がお家です。もう完成してるんですよ!」
棗は嬉しそうに立花を二人の新居に連れて行く。落ち着いて統一感のある内装は誰のセンスだろう。少なくとも可愛いい物好きな棗ではないと思う。
「ここを作るのも尾花様が手伝ってくれました。建築が趣味なんですって、知ってました?」
立花は首を振る。引きこもりの趣味が建築というのは複雑な心境だ。
家具などはまだないが無駄のない使いやすそうな家で立花も気に入った。
「いい家だね」
「はい!」
見つめあって微笑み合う二人の足元では愛犬のロブがくしゃみをしている。
「午後からは予行練習です!」
「午後からね?」
いい雰囲気の二人を恐れてロブは庭に撤退した。




