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18 世は情け


 棗達との通信を終えた海棠は蘇芳と連れ立って奥に向かっていた。途中、桐生に連絡を取るが夜が更けてきているこの時間、当然の様に桐生には繋がらない。


 仕方ないので桐生につけてある部下に連絡する。


「はい」

「あの人は一緒か?」

「はい、お取り込み中ですが……」

「ああ、そう。じゃあ……伝えといてくれ、油揚げさらわれたって」

「!……了解……」


 通信を終えた海棠は合流した奥付きの侍女に目配せする。


「……急いでお伝えします!」

「ちょっと待った! あのさ、二人はアレ知らないよな?」

「……はい……」

「だよなぁ……まぁ、しょうがないか、頼んだ」

「了解!」

 侍女は足音を殺して走り出す。

「あの人の方も頼むな〜」

「はい」


「アレって棗との事ですか?」

 蘇芳が言う。

「そう言えば連絡来る前から海棠さんは知ってましたよね?」

「……まぁ、一応あいつからも聞いたし、監視がついてるんで……」

「そうだったんですか……監視ってみんなについてるんですか?」

「いえ、一部だけです。蘇芳さんは大丈夫ですよ」

「そうですか」

 蘇芳は少し安心した様な微妙な顔をした。


「次は竹杉様の所に行きます」

 海棠は歩きながら言う。

「まだ、いらっしゃるんですか?」

「さあ?」

 この時間に働いてる様な幹部は桐生軍にはほとんど居ない。唯一可能性があるのが立花の上司の竹杉だ。


 歩き慣れない廊下を歩いていると部屋の明かりが見える。ノックの後詰めている秘書官に聞くと、竹杉はまだ部屋にいるらしい。




「立花がっ……」

 海棠の話を聞いた竹杉が細い目を見開いて動揺する。

 海棠は勝手に竹杉の立花好きのていなのだと思っていたが、これは本当に動揺している。


「どうしよう海棠君……これからますます仕事が増えるのに立花がいなくなったら……」

 しかし、動揺の理由は違うらしい。確かに立花の影響を一番受けるのは竹杉だ。


「……はぁ~こっちの監視は?」

「街中祭みたいになってて見失ったらしいです。元々うちのは趣味でやってる変態ばっかりですから、本職には勝てませんよ」

「その、立花を襲ったやつは?」

「死体で見つかってます。自殺らしいです」

「はぁ~……いつかこうなる気がしてたんだよねぇ。あれは何年前だっけ?」

「たぶん、二年前です……」


「何がですか?」

 一人事情を知らない蘇芳が尋ねる。

「立花一回誘拐されてて、あの人に。本当あの時殺しておけばよかった……」

 海棠は嗤いながらいう。


「確かにねぇ。こんなことならねぇ……まあでも海棠君のことだから用意してあるんだろう?」

「ええ、今証拠集めてます」


「て、手配書のことなら俺も手伝いますから!」

 会話に置いていかれそうな蘇芳は少し必死にいう。

「ありがとうございます。ついでに国外とどれぐらい繋がってるかもお願いできますか?」

「わかりました……」


「はぁ〜出来ることはこれぐらいかぁ」

 竹杉は頭を抱える。


 三人が悩んでいると海棠に桐生からの通信があった。

『どういう事だ?』

「今何処ですか?」

『城に向かってる!』

「じゃあ竹杉様の所までお願いします」

『説明しろよ!』

「いやぁ通信じゃ無理……」

『生きてんのか?』

「さわれたって言いましたよね?」

『食われてないんだな!』

「確認してません」

『何が起こってる! おい!』

 桐生が珍しく怒っているので海棠は一方的に通信を切った。


「今、切りました?」

 蘇芳は驚いているが、海棠にするといつもの事だ。

「ウゼェ。自分が遊んでるからだろ……」

「桐生様来るのかい? 私帰ってもいいかなぁ?」

「いいんじゃないですか? 今できる事ないし」

「えっつ? 待たないんですか……?」

 体育会系の蘇芳からすると二人の態度が信じられない。


「待ってたら何かいいことあるかねぇ?」

「ある訳ないですよ。って、今度はこっちか」

 海棠の端末には一ノ方からの通信が来ている。


「はい……」

『説明しなさい……』

 一ノ方の声には怒気が混ざっている。

「あー桐生様がもうすぐ戻るんで……それからでも……」

『早く』

「はい……」

 海棠は大人しく通信を切る。


「俺、行って来ます……」

「一ノ方様かい?」

「はい……」

「じゃあ、桐生様にもそっち行くように言っとくから、二人で行きなさい」


「えっ? 俺もですか?」

「竹杉様行かない気ですか?」

「行かないよ。明日人集めるようにしとくからね〜」


 やんわりと竹杉に追い出された二人は一ノ方の執務室へと向かった。


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