物騒なスキンシップ
しばらく放心していると、ロブを連れた棗がやってきた。
「立花様、探しましたよ。大丈夫ですか?」
「なつめ……」
立花は虚ろな表情でいう。
「もう帰りましょう?」
立花は黙って頷き、心配そうな様子の棗の後ろをついて歩く。
気力が湧かず、ぼんやりとしているとロブが吠える。
それとほぼ同時に何かが飛んで来る。
とっさに躱した立花のそばを剣が通り過ぎて行く。
立花は剣を視線で追いながら反転して前を行く棗を背中に庇い、自分の剣を抜く。
次の横薙ぎの一撃をどうにか受け止めると、襲撃者と立花は鍔迫り合いになる。
両手でどうにか持ちこたえている立花に、体重を掛けるようにして相手の男が力を加えて来る。
嗤っている顔は余裕に満ちていて、手加減されているのは間違いない。
男は苦しそうな立花の顔を覗き込んで本当に嬉しそう嗤う。
「立花様!」
棗の悲鳴のような声が聞こえるが、立花に返事をしている余裕などない。
男は視線だけを棗に動かして口の端で嗤う。
それを見た立花は恐怖で鳥肌が立った。
「ロブ!」
立花が叫ぶと唸っていたロブが走り出し、棗の足音とともに遠ざかって行く。
棗を逃すことに成功したが、男は形ばかり残念な様子を見せると少し本気で力を入れてくる。
何とかして距離を取りたい立花だったが、方法が見つからない。
考えられる限りのシュミレーションが全て斬り殺されて終わる。
一人ではどうする事も出来ないと焦り始めると、別方向から吹き付けるような殺気が襲う。新手の出現に戸惑ったのは立花だけではなかった。
動揺した男の隙をついて距離を取った立花はとにかく逃げる。
走りながら遠隔で移動機を動かし、それに向かって走る。
襲撃者は追ってきてはいないようで、移動機に乗り込み高度を上げると、突然の衝撃で機体が傾く。
自動制御で姿勢が直ると、機体に男が捕まっていた。一瞬身構えた立花だったが、見知った顔が手を振っているのを見て力が抜けた。
ドアを開けると男は勝手に乗り込んできて、勝手に閉めた。
立花が何か言おうとすると警報がなる。急いでその場から離れると砲撃が掠めていく。
「嘘だろ……」
「とりあえず逃げません?」
唖然とする立花を促して男は機体を街から遠ざけさせる。
その間も何回か砲撃がある。どこから撃ってきているか分かるので当たりはしないが、敵の本気は伝わってくる。
「どうすればいい?」
「街を出ましょう」
立花の問いに男は迷わず言う。
「分かった……」
そして立花の機体は安全圏の外側へと消えて行った。




