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拳紋


「ちょっと棗、どういう事なの? 説明してちょうだい」

 母は腰に手を当てた仁王立ちスタイルでいう。

「えっと、あの、立花様を探しに行って、見つけた、ら……プロポーズされました……」

 棗が恐る恐るいうと母は首を振る。


「意味が分からない。大体貴方が立花君を探しに行く事すら訳が分からなかったのに……」

「それは、棗は立花様とお友達で……」

「いつから?」

「あの戦争の少し前に、棗は立花様の手伝いをしまして、それからお友達に……」

「待って、立花君て蘇芳の嫌いなあの子よね? それがなんで?」

「あれは兄さんの偏見です! 立花様はいい人でした!」

「まぁ、そうなんでしょうね……でも本当に大丈夫なの?」

 母は棗の顔を凝視する。


「はい。棗は立花様が好きです……」

「そうじゃなくて、貴方が押しかけて無理やり頼み込んだとかじゃないの?」

「なにそれ……そんな訳ないし……」

 さすがに棗も不愉快になる言いがかりだ。

「そう。ならいいけど、とりあえず今日はお父さんいないから、明日にしましょう」



 そして棗と別れた母は急いで蘇芳に連絡した。


「ちょっと、棗が立花君を連れてきたわよ! 結婚とか言ってるしどういう事なの!」

『あーそうかー、立花捕まったんだな〜』

 端末の向こうで蘇芳は興味なさそうにいう。


「どういう事なの! 説明して!」

『棗から聞いてないのか?』

「信じられないの!」

『あー、いや、普通だよ。棗が立花に惚れてたからだろ?』

 母は棗の様子からその点は疑っていない。


「立花君はどうなの?」

『知らないよ、連れてくるぐらいなんだから大丈夫だろ?』

「だって、棗なのよ?」

『まぁ、でも立花は気にしてない感じだったけど?』

「あんた立花は神経質とか散々言ってたじゃない!」

『いや、あん時はそうだったんだよ。でも意外と普通だったし。てか居るなら本人に聞けよ』

「それもそうね……」

 母は息を整えていう。


「あんたから見て不思議じゃないの?」

『ああ、棗は分かりやすかったし。でも婚約で終わったと思ってたけどなぁ〜』

「そうなの……」

 母には立花と棗がつり合うようには思えなかった。


 何せ棗は猪突猛進の危険人物だ。末っ子で手がかからなかった棗はいつの間にか持ち前の正義感と血の気の多さでトラブルを引き起こす困った娘に成長していた。今となっては放任主義が行き過ぎたと後悔している。

 そんな棗に傲岸不遜、傲慢、慇懃無礼と領主の鏡の様な評判の聞こえてくる立花では絶対に上手くいかないと母は思ったのだ。


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