14 拳紋
数々の出来事を経てようやく二人は棗の実家のあるショウリンに辿りついた。そして棗はある問題に直面した。
「なんて説明すればいいんでしょうか? 棗は今立花様を探している事になっているんです……」
「ん〜? 捕まえてきました〜とかじゃダメなの?」
「それでどうやったら結婚に話がつながるんですか?」
「もういいよ。とりあえず行こう」
適応な立花の様子が無性に頼もしく感じた。
棗の家は正面が思いっきり道場になっており、居住スペースはその裏だ。立花は家と稽古中の門下生の声に関心している。棗はとりあえず門番に声をかけた。
「お嬢、おかえりなさい」
「ただいま……母さんはどこですか?」
「さぁ? 今日は出られてませんから、お部屋じゃないですか?」
「そう……。あの、連れがいます」
「こんにちは、何か手続きありますか?」
立花も顔を出して挨拶する。
「お嬢のお連れさんなら大丈夫ですよ」
門番の男はそういいながらもこの場に不釣り合いな立花を気にしている。
「ありがとうございます」
立花は全く気負ったところもなく門をくぐる。棗は緊張でガチガチだ。
「どこ行くの?」
「とりあえず母に会いましょう。あの、立花様はここで待っててもらえませんか?」
「分かった」
立花は素直に頷いて庭に並ぶ訓練器具を眺め始める。
棗は意を決して母の元に向かい、用があると居間に来てもらった。
「おかえり棗、どうやって帰った来たの? 戻る前に連絡ぐらいしなさい」
「ごめんなさい。その、事情があって、」
「何? 早く言いなさい、忙しいんだから」
「はい。あの、私……いえ、会って欲しい人がいます!」
棗が頑張っていうと、母は怪訝な顔で固まった。
「男?」
「はい……」
母は信じがたいという顔をしたが、棗を急かして立花に会いに行った。
「立花様!」
棗が声をかけると門下生と話していた立花は棗に駆け寄ってきた。
「初めまして、棗さんのお母様ですか?」
「はい、棗の母です。あなたはあの立花さんなの?」
「はい、多分その立花です」
硬い表情の母と違い立花は嬉しそうだ。
「こんな所にいらしていいの?」
「あんまり良くないですね。謹慎中なので」
「だったら、何故?」
「ええと、」
立花は棗を見るがその様子から悟ったらしい。
「お嬢様と、結婚させていただくて……お邪魔しました」
「うそ……」
「あ〜いや〜出来れば本当にしていただけると……」
立花は少し困った様子で上目遣いをする。
「ちょっと失礼してよろしいかしら」
母は立花の返事も待たずに棗を引きずっていく。
立花は二人を見送るとようやく息をついた。もうおかしくて仕方がなかったのだ。棗と母は顔立ちがそっくりだった。棗の母は棗より小柄だが、領主夫人らしい服装をしていても身体が鍛えられているのが良く分かった。まるで棗の別の可能性を見ているようで立花は笑いを堪えるのに必死だった。
そして立花が肩を震わせていると遠巻きにしていた門下生が話しかけてくる。
「お前、お嬢と結婚するのか……?」
男は何か恐ろしいものを見るような目で立花を見る。
「まぁ、出来たらいいんですけど……何かあるんですか?」
立花が無邪気に尋ねると男は棗の最終兵器伝説を語ってくれたが、立花には面白くて仕方がなかった。




