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13 歌姫の詠嘆曲《アリア》

三つ目の街は温泉で有名な観光地だった。ここから棗の家まではすぐなので、休憩の後、晴れている今のうちに出発しようと立花はいう。


「でも、昨日からずっと飛んでて、お疲れでしょう?」

 棗は上目遣いで立花におねだりする。

「あと二時間ぐらいで着くんですよ?」

「でも、でも、せっかく温泉があるのに」

「いや、あの雲に追いつかれるとまた足止めですよ?」

 立花は上空の黒雲を指していう。

「じゃあ、温泉だけ! 温泉入ったら行きます! それとも何か温泉が嫌な訳があるんですか? はっ! もしかして……」

「ないないない。もしかしないから、分かりました。温泉ね、行きましょう。はい」

 立花は棗の腐った妄想を断ち切って温泉に向かう。


 ここの温泉は美人の湯として有名で、楓が絶賛していたので棗は以前からずっと来たかった。しかも楓の出資でここの温泉はローマ風、純和風、トルコ風と色々な様式で楽しめる。棗は温泉を一通り回って堪能すると、身支度を整えてロビーの立花の元に急ぐ。


 立花は壮絶に不機嫌だった。棗を見ようともしない立花の視線を追うと、外は土砂降りだった。

「ごめんなさい……」

 立花の返事はため息だった。


 その後温泉のレストランで食事をするが、立花は話してくれない。

「まだ、怒ってるんですか?」

「…………」

「今日は何処に泊まるんですか?」

「…………」

「私が勝手に決めてもいいんですか? じゃあ決めちゃいますからね!」


 棗はウエイトレスを呼び止めると話を聞く。


「それなら、ここでも泊まれますよ? 今は観光客も少ないので空きもあると思います」

「ですって、ここでいいですか?」

「…………」

 棗が聞いているのに立花は無視だ。

「もう。じゃあここにします。受付に行けばいいですか?」

「はい。あと、観光なら、いいお店がありますよ」

 明らかに喧嘩をしている二人の様子を微笑ましそうに見ながらウエイトレスは色々教えてくれた。


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