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ONLY ALIVE

「なんですか、あれ?」

「後で説明します」

 立花は棗が足を引きずっているのに気づいて掬うように抱き上げて階段を上る。

「重くないですか?」

「まあ、ロブよりは……」

 聞いておいて否定して欲しい質問に立花は微妙な答えを返した。


 立花はそのまま棗をバスルームに下ろすと足を洗うようにいう。

「立花様はお風呂入らないんですか?」

「後でいいよ。棗の怪我が先」


 その間に濡れた服だけ着替えた立花はバスルームから出て来た棗をベットに座らせ、足の怪我を見ている。

「あ〜あ、靴擦れで皮むけてますよ?」

「だって走ると思わないから……」

 雨の中素足にミュールで走り回ったのだ。褒めて欲しいぐらいだ。しかし立花は何も言わずに荷物から薬を取り出す。うっすらと青みがかったとろみのある液体が瓶に入っている。


「待って! それもしかして魔法の薬ですか?」

「そうだけど?」

「こんな怪我にもったいない! 舐めとけば治ります!」

「え? 舐めるの?」

 立花はおもむろに棗の足を自分に口元に近づける。棗が驚いて固まってると、妖しく微笑んで舌を出す。


「ひゃ〜ぁ! 止めて! いい! いいから!」

 棗が慌てて止めると立花はおかしそうに笑う。

「なんで立花様が舐めるんですか?」

「足なんて自分で舐めれないだろ?」

「出来ますよ!」

 棗は体の柔らかさを証明するように足を抱えて口を近づける。立花は笑いを堪えるようにしてその様子を見ている。


「ごめんなさい……。お願いします」

 恥ずかしくなった棗は立花に手当てを頼んだ。

「別にお金かかってないから、気にしなくていいのに」

「え? どういう意味ですか?」

「この薬作ってるの俺の所だから」

「さようで……」

 棗は改めて立花の多彩さに呆れた。一ダースで軍人の給料三ヶ月分と言われる創傷の万能薬、魔法の薬の製造元、棗には立花の資産が想像できない。




  ▽▲▽




 翌日棗が目を覚ますと立花が居なかった。不思議に思いながら身支度を終えると立花が帰ってきた。


「おはよう。荷物まとめてもらえます?」

「おはようございます。もう出発するんですか?雨なのに?」

「そう。話つけて来たから。でもお願いがあります」

「何ですか?」

 棗は荷物をまとめながら尋ねる。


「うん。昨日の人達はいいんだけど、他にも懸賞金狙いの人がいるらしいんで、俺が機体を取りに行ってる間、囮になってもらえませんか?」

「ええっ! 囮ですか?」

 立花は屈託のない笑顔だ。少しは心配して欲しい。


「そう。人数はそんないないはずだし、姫さんなら大丈夫でしよ?」

「いやいやいや。大丈夫じゃないです!危ないでしょう!」

「でも、懸賞金が掛かってるのは俺なんで、つけられるぐらいだし……姫さん俺より強いんですよね?」

「私は稽古しかした事ないんです! 実戦は無理です!」

「大丈夫、ただお金が欲しいだけで、そんなに悪い人達じゃないですから」


「おかしい! なんで! なんでそんなにさらっと交渉できるんですか? 世間知らずの癖に!」

「いやいや、世間知らずって……俺子供の頃から働いてるんですよ? 確かに身分の高い方々の常識は知りませんでしたから、苦労しましたけどね?

 それに心配しなくても、俺は金が絡んだ事で負けた事ないんで、大丈夫です」

「何それ……感じ悪い……」

 ドヤ顔の立花は感じ悪い。棗は立花をいじめたくなる海棠の気持ちが少し分かった気がする。


「はいはい、念のためこれどうぞ」

 立花は棗に自分の剣を渡す。

「立花様はどうするんですか?」

「予備がありますから」

 立花と話し合って勝てる気がしない棗はしぶしぶ剣を受け取り試しに振ってみる。


「おお、カッコイイ」

 立花は珍しく心から褒めている様子だ。

「別に嬉しくないですから……」

「えー、カッコイイのに……」

 立花はしょんぼりしている。


「嫌じゃ、ないんですか?」

「何が?」

「だって、私は女で、立花様は男なのに……」

 棗は子供の頃に兄に言われてとても傷つたことがある。

「あーうん。羨ましい。俺カッコイイとか言われた事ないし」

「そう……羨ましいんですか……」

 棗の気持ちが伝わったかどうかは分からないが立花は優しく微笑む。


「できる奴が出来る事をすればいいんだよ。使える奴は性別も年も関係なく使えるし、使えない奴は身分が高かろうが犬以下だ」

 発言は全く優しくない。


「分かりました。何かあったら助けて下さいね」

「無理」

「おい!」

 意を決して言ったのに立花に力強く否定された棗は思わず突っ込んでしまった。


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