12 ONLY ALIVE
棗は魔女のようなコート姿で、雨の中街外れの建物の屋上に立っている。
その周囲には棗を取り囲むよう男達がいる。
棗は思いつめたように屋上の端に寄り、下を見る。三階建ての建物から落ちれば無事では済まない。
「おいおい、姉ちゃん。危ねぇぞ。大人しくこっちに来いって」
男の言葉に棗は厳しい視線を投げると静かに後退る。
そして棗は突然振り向くと、屋上から勢いよく飛び降りた。
▽▲▽
——二日前——
今回の移動は夜間にしか通れない道で、早朝にこの街に着いたため立花はとっても眠そうだ。
「次は何処に行くんですか?」
「ロブを預けてホテルで寝る」
「そうですか、せっかく晴れてるし私、街を見ててもいいですか?」
「……姫さんは懲りてないんですか?」
前の村で一人になって一時間で騒ぎを起こした棗を立花はあまり信用していない。
「あれは、その……運が悪かっただけで、今度は気をつけます。大丈夫です!」
「分かりました。俺も付き合いますよ……」
「眠くないんですか?」
「眠いのは慣れてます……」
確かに今の雰囲気は城でよく見た感じだ。立花は傲岸不遜や傲慢と言われて嫌われるらしいが、もしかしたら眠かっただけなのかもしれないとその様子を見て棗は思った。
「でも、無理しなくていいし、何か感じ悪いです」
「大丈夫、喋らないんで」
「いや、それはそれで感じ悪いんですが……」
それでも一人よりはいいので棗は立花と街を見てまわることにした。そして棗は見た事のない食べ物で足を止める。
「見て見て! 蒸しパンですって! 色が綺麗〜」
棗は十種類以上ある色とりどりの蒸しパンを見つけた。一口サイズで果物や野菜が練りこんであるらしい。
「こんなにあると迷いますね〜」
「全部買ったらどうです?」
「そんなに食べられません! 一緒に食べてくれるんですか?」
「俺はいらないです」
やはり立花は感じ悪い。
「あっ! 辛いのもありますよ?」
「だからいらないって……」
それからもしばらく棗は悩んでいたが立花は待てなくなってきたらしい。
「すみません、お勧めとかありますか?」
立花は相変わらず眠そうに髪を掻き上げていう。
「はい、こちらのベリーが一番人気で、あとはシトラスも人気が、あり……ます……」
お店のお姉さんは話しながら立花に驚いた様子で見惚れているが、立花は気がついていないのか全く気にしていない。
「ですって、姫さん。それでいいですか?」
「むー選ぶのが楽しいんですよ!」
「分かりました。じゃあ、あっちで待ってます……」
そういった立花は街路樹の木陰で眠そうにしている。
結局悩んだがお勧めの商品を買った棗は立花を呼んで歩き出した。
「はい。これオマケですって」
「何?」
「辛いのです。店員さんがくれました。よかったですね!」
お店でオマケなど棗はほとんど貰った事がない。
「はぁ……」
棗がパンを立花の目の前に差し出すと立花はため息をつきながら棗の手から食べる。
「嫌ならいいのに……」
「喉渇きますね……」
立花は飲み物を買って棗にもくれた。
「本当に目立たないんですね。驚きました」
「何が?」
「だから、カブ君です……前に菫さんと歩いた時はみんな振り返ってましたよ」
「へぇ……そうですか」
立花は全く興味がなさそうだ。
「こんなに美人さんなのに不思議ですね〜整い過ぎて印象に残らないのでしょうか?」
見上げた立花は隣で欠伸を噛み殺している。
「分かりました、ホテルに行きましょう」
ロブを預けてホテルに着くと立花はすぐに寝てしまった。遠慮のなくなってきた立花の餌付けは意外と難しい。




