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ジェットコースターフライト

 棗が恐怖と戦った甲斐もあり、何とか日暮れ前に目的地に辿り着いたが棗は疲れて大人しくなっている。


「あーさすがに疲れた」

 ようやく機体から降りた立花とロブは伸びをする。


 降り立ったのは街と言うよりは村で、簡単に言えばど田舎だった。駐機場も地下ではなく地上にあり、そこに停めた立花は近くの建物に入っていく。


「ここは何ですか?」

「猟師協会ですよ、姫さん」

「姫……何の用なんですか?」

 立花は早くも姫と呼び始め、敬語だ。バレてはいけないと緊張する。

「ここで入境手続きして、機体を預けるんですよ」

「へぇー」


 民間人が機体を安心して預けられるところはあまり多くない。大体は自分の所属している団体に預ける。そして軍用犬のロブも普通の宿泊施設は泊めてくれないので機体と一緒に協会に預けるらしい。


 棗が関心している間に受付の強面の男と立花が何か話している。

 建物の奥は酒場になっていて立花と同じような格好の人が、大型犬を連れている。その内の何頭かはロブを見て近づいて来る。


 挨拶するように匂いを嗅いでいたが、お気に召さなかったようでロブが唸ると、立花はさりげなく犬達の間に立つ。


「おお、兄ちゃんの犬、いい犬だな」

 受付の男の言葉に立花が嬉しそうな顔をすると、男は目を見張る。


「ロブは美人さんだからなぁ」

「あれ? ロブちゃんてメスなんですか? 名前的にオスかと思ってました……」

 立花は複雑そうな顔をした。


 そして二人はロブを協会に預けて村に一軒しかない宿屋に泊まる。立花の話では天気が悪いので何日か滞在することになるらしい。


「こういう田舎初めてです! なんか楽しそうですね!」

「うーん。何にもないからすぐに飽きると思いますよ?」

 棗はワクワクしてきて疲れが飛んでいるが、立花は眠そうだ。

「とりあえずお腹すきました!」

 棗は朝からまともに食べていない。立花も同じはずだが空腹は感じていないらしい。


 一階の酒場件レストランでの食事は野菜スープにチキングリルと素朴な料理だが、とても美味しかった。


「おいしい……」

「あらぁ。お二人さんはここ初めてかい? こんな何にもない所によく来てくれたねぇ。ここはチキンで有名だからいっぱい食べて行ってね」

 給仕をしてくれた女将さんは見慣れない二人に興味津々だ。どこから来たの、何しに来たのといった世間話をしてくるので、立花にさりげなく確認しながら棗が色々と話していると女将さんは妙に納得した様子だった。


「なんだったんでしょう?」

「よそ者にはあんな感じなんですよ」

 立花はそれより天気が気になるらしく他の旅行者と話している。


 こうして二人旅の初日は更けていった。




 翌朝、立花は見た目通り寝起きが悪く、雨の日は眠いとか文句を言うのをなんとか起こしたが、結局昼近くになってしまった。

 遅めの朝食を食べていると女将さんが村唯一の観光地を教えてくれたので暇つぶしに出かけてみることにした。


「た、」

 棗が名前を呼びそうになると立花は相合傘を傾けて、目を細めるので棗は苦笑いで答える。

「ここ、猟師さんが多いですね」

「仕事があまりないみたいですね、泊まってるのも素材の買い付けの人ばかりでしたよ」

「へぇ〜、でも晴れてたらのどかで良さそうです」

「そうですねぇ」

 立花はロブが傘に入ろうとまとわりつくので歩きにくそうにしている。


「姫さんもう少し近く来てくれません?」

「えっ?」

「歩きにくいんですよ。ロブが濡れるし」

 立花は傘をさしている腕を差し出す。腕を組めということだろう。棗は憧れのシチュエーションを噛み締めながら目的地まで歩いた。




「なんですか、これは?」

「聞いてなかったんですか?」

「綺麗な塔って言ってましたよね?」

 棗はおとぎ話のお姫様が幽閉されていそうな高い建物を想像していたのだが、二人の目の前には人が入ることはとても出来そうにないトーテムポールの様なものが何本も立っている。確かに細かい彫刻が木にびっしりと彫られていて美しいが、上の方に鳥の羽の彫刻があり何とも言えない。


「供養塔らしいです」

 書いてあった説明を読んだらしい立花がいう。何のかは聞くまでもない、名産のチキンの供養塔だろう。

「なんというか……律儀ですね」

「田舎なんてこんなもんですよ」

 しかも雨季で露店もなく散歩とあまり変わらなかった。



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