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伝染する不運

 途方に暮れる棗を助けてくれたのは数日後の尾花からの連絡だった。


「立花様がお戻りになるんですね! 良かった」

『そうだね、本当に良かった。それでね、君も会いたいよね?』

「? それはそうですが、城で会えますよ?」

『城には寄らずに家に直接来るんだって、とっても疲れてるみたいなんだ……』

「まぁ、お疲れになるでしょうね」

『僕だけだとアレだから君もお出でよ』

「何故?」

 アレの意味がさっぱり分からない棗に尾花は苛立った声で答える。


『だから! 僕は慰めたり労ったりするのが苦手だから!』

「分かりました……」

 過去の自分を反省した尾花は不用意な発言や行動で立花に嫌がられるのを避けたいらしい。今更な気もするが、棗も会い気持ちが強いのでお言葉に甘える事にした。




  ▽▲▽




 疲労困憊でヘロヘロの立花が家に辿り着くと家令の老紳士と棗に迎えられた。何故ここに棗が居るのだろう? 帰ってくは所を間違えたのかと辺りを回すが見慣れた我が家だった。


「おかえりなさい! 立花様! お疲れ様でした!!」

 棗は何故かテンションが高く煩い。

「ただいま……」

 言葉を発する事すら面倒な立花が棗の横を通り過ぎようとすると、ダイニングから尾花が顔を出す。


「おかえり、立花。ちゃんとした食事を用意しているよ」

 疲れていてすぐに寝てしまいたかったが何もかも面倒な立花は黙って頷く。

「お疲れでしょうし、先にお風呂へどうぞ。その間に支度を整えます」

 家令に言われた立花はこれにも黙って頷いて風呂に向かう。


「立花様怪我したり、怖い目にあったりしませんでしたか? 」

 棗は後ろを付いてきて色々と話しかけてくる。

「ちゃんと食事してましたか? 顔色悪いですよ」


 立花はろくに返事もしていないが棗は気にした様子もなく話し続ける。そのうちに浴室まで着いてしまうが棗は気がついていない様だ。


 疲れてぼんやりしている立花は脱衣所で服を脱ぎ始める。上を脱ぎ終わった頃に後ろで悲鳴がする。

「キャー! 立花様何脱いでるんですかぁ!!」

「いや、ここ風呂だから……」

 流石に悲鳴を上げられては反論せずにいられない。

ようやく気がついたらしい棗は顔を真っ赤にする。何だか気の毒に思った立花は棗の頭を慰める様に撫でるとドアを閉めた。




 目の前でドアを閉められた棗は激しく動揺する。男の半裸など実家で見慣れていると思っていたが、全然違った。何であんなにウエスト細いの? 恥ずかしい……。


 棗が何とか気を取り直してダイニングに戻ろうとすると廊下で尾花と目が合う。


「覗き……?」

「違います! うっかりです!」

 棗の必死の訴えが伝わったかどうかは分からないが尾花はそれ以上の追求はしてこなかった。




 結局食事の席でも立花は眠そうでほとんど話も出来ず、尾花に君いらなかったと言われてしまった。

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