11 棗なら大丈夫
結局兄は週に一度は食事をして話さえすれば立花の希望を叶えてくれることになった。
なんの罪状で条件付きなのか知らないが、前よりはマシだろう。
その後棗と尾花は意気投合して連絡先を交換したり、写真だか絵だかの話で盛り上がり、その間立花は黙々と味のしない料理を食べていた。
そして立花は兄の命で棗を送っている。日が暮れて暗くなった道を二人で歩いているのだが、棗は物凄く落ち込んでいる。どうも棗はテンションが上がると調子にのって後で後悔する事が多いようだ。
何かフォローしたいのだが何を言ってもダメな気がする。
「立花様、申し訳ありませんでした」
暗くて良く見えないが棗は律儀に頭を下げているのだろう。
「いいよ。別に、驚いただけだし。あとは兄と仲良くして貰えると助かるかな?」
「いいんですか? 立花様はお兄様お嫌いでしょう?」
「それは違う。俺は兄の事は大切に思ってる。ただ……なんか申し訳ないだけだ」
「何が申し訳ないんですか?」
「ん〜説明できないけど、俺に関する全て、かな?」
「なんですか、それ?」
丁度城からの灯りが届く所に差し掛かり、棗の表情が良く見えた。心の底から訳がわかならないといった顔だ。
立花も尾花もきっと互いに罪悪感を抱えている。もう今更どうしょうもない事で、それでも、もしかしたらと思ってしまう。
「生まれてきてすいませんってこと」
多少冗談めかして言うと棗はからかわれたと思ったのだろう、不満そうだが相変わらず落ち込んだ顔だ。
「いいんですね? 棗はすぐに尾花様と仲良くなれますよ?」
「もう仲良しだろ? あんなに兄さんが笑ってるの見た事ないし」
棗は話題を変える事にしたらしい。優しいなと立花は思う。
「尾花様はお友達いないんですか……?」
「俺は見た事ないけど……まあ俺以上に面倒くさい人だから……」
「う〜ん。可哀想だから仲良くしてあげます」
棗は渋々と言った様子でそれが可笑しくて立花は久しぶりに声を出して笑った。
「なんだそれ? ……かわいそうって……クククッ」
出会う人の殆どに恐れられる尾花が可哀想などと聞いたこともない。
「じゃあ、色々言われた事は許してやってくれ、可哀想だから」
ひとしきり笑い終わるとどうにか言葉にするが可哀想でまた笑ってしまう。
「どうした?」
棗は立花を見つめたままぼんやりしている。
「いえ……立花様も笑うことあるんですね……」
「はぁ? 普段は笑うからな? 見た事ないって、棗さんは俺ともおトモダチのつもりですか?」
「え〜ダメですか? てか立花様は友達の前でしか笑わないんですか?」
「……知らん」
「じゃあ、棗とお友達になってください!」
「なんだそれ……フッ、そんな事を本当に言う人がいるとは思わなかった……」
言葉では否定しつつも笑いが込み上げている時点で認めてるようなものだろう。
別に断る必要もないのだが改まっていうのは普通の人には恥ずかしいものだ。
「まあ、冗談はこれぐらいにして、色々ありがとう棗さん。今日はここまででいいかな?」
立花は城内の一角で立ち止まる。建物の影になっていて暗い所だ。
「……立花様は何しにここに来たんですか?」
「えっ? 君を送りに……」
「嘘ですね? ロブちゃんを迎えに来たんでしょう!」
「良くわかったな、まあそういうわけだから、おやすみぃ」
立花は桐生の口調を真似て軽く言う。特に呼び止められなかったのでそのままロブを連れて帰った。
▽▲▽
「おやすみなさい……」
もう絶対に聞こえないと分かっていながら棗はつぶやく。動悸が激しい。
なんですかあれは? もう色々混乱のし過ぎでやってしまった感があるのだが、そんな事はいい。立花の笑い顔は色んな意味で破壊力抜群だ。”普段笑わない人は笑うと不細工になる”が持論の棗だったが、例外はどんな事にも存在する。
イケメンが笑うと幼くなって可愛いとか不公平です神様、バランスを考慮して顔面偏差値の再配分を強く要求したい。
「あ〜眠れる気がしない!」
棗はこんな時は一人で抱え込んではダメ! と言い聞かせて足早に寮へと向かった。




