8 人の不幸は蜜の味
レオモレアの北には戦神と呼ばれる王の治める国、シュラバナがある。
現在このシュラバナと首席将軍は交戦中だ。立花がこの時期に北に向かうと言う事は間違いなく新王の選定に関することだろう。
棗がこの報告をすると一ノ方は少し考える様子で言った。
「同盟でも結ぶつもりかしら? でも戦の最中に部外者がそんなこと出来るの?」
「実家の話では戦神は美しいものがお好きだそうですし、少なくとも話は聞いてくれるみたいです」
「それで子狐……? よく分からないけど首席との戦を考えての事でしょうね、本気なのねウチの人も」
楓は表情を曇らせる。
「桐生様ご本人に伺ったりはなさらないのですか?」
「聞いても答えてくれないもの。でも、戦となるとこっちで出来る事はないわね。
まあいいわ。今まで通りこちらは縁組を進めましょう。少し面倒になっている事だし」
「縁組、ですか?」
「そうよ。棗には話してなかったけど、近々大規模なお見合いを行います。ウチの者と全国の有力者の縁組です」
「大規模と言うと何人ぐらいですか?」
「参加者だけで三百人ぐらいの予定よ」
「ウチに百五十人も未婚の方いましたっけ?」
「男だけじゃ足りないから女の子もね、棗も参加者よ」
「ええっ! 聞いてません!」
「今話してるじゃない……何か問題あるの?」
「いえ、そういった事は実家が決めるものとばかり……」
「貴方の家にはきちんと話してあります。ちゃんと蘇芳がプロフィールも作ってくれてるし」
「兄が何を……?」
棗は想像しただけで怒りがこみ上げてくる。
「違うのよ、流石に百五十人も相手がいると話してなんて出来ないでしょう? だから、参加者にはプロフィールを見てある程度絞ってもらうためにね……変な事は書いてないから大丈夫よ」
棗の怒気が伝わったのか一ノ方は慌てて説明する。
「何故本人が書かないんですか?」
「だって、そっちの方が面白いでしょう? 性格とか他人方が分かってるし。もちろん最終的には本人にも見せるつもりだったわよ」
「…………」
「それでね、棗はせっかく子狐の事を調べたんだから、立花のを作って貰おうと思って!」
「それは海棠様にでもお願いすればよろしいのでは?」
「あの二人は絶対に嫌がるでしょう? だから出来るだけ秘密にしてたんだけど……」
「一ノ方様、何があったのか教えて頂けますか?」
「はい……」
怒ると恐ろしいと聞いていた楓は素直に白状した。




