プロローグ
暗めの照明にノリのいい音楽。
中央のステージではセクシーな格好の女性が思い思いに踊っている。そんな女性達を眺めながらリズムにのっている男達の格好が、少しおかしい。
ある者は頭に角が付いていたり、ある者はまるで一騎当千の中華風武将の様な格好をしていたり、服装にも季節感などまるでない。
そして茶色いロングヘアに狐耳を付けた、男性の割には小柄で端正な顔立ちの若い男の目の前には、華やかなスーツにショートカットでウエーブの掛かった白髪、そこに羊の角についた爽やかな背の高いイケメンが居る。
「何の格好?」
「悪魔紳士だって……」
うんざりした様子の背の高い男の瞳はカラコンのせいで赤い。
「どこら辺が紳士?」
「この服だろ?」
背の高い男が着ているのは妙にレースやら刺繍のついた仮面舞踏会のような服だ。残念ながら紳士と執事の区別がつかない狐耳の男には、とても紳士には思えない。
「う〜ん。なんか微妙……」
「そりゃあ、お前に比べたら誰だって似合わないよ」
「うっ……」
狐耳も狐の尻尾も大きめで小動物感を強調した格好は男にとてもよく似合っている。しかも耳は先の方が重くなっているのか、男が頭を動かす度に大きく揺れる。今は俯いているのでお耳がペタンと伏せた形になっており、大変可愛らしい。
二人が話していると、音楽が止み、ステージに王様の格好をした四十代ぐらいの、派手な男が現れる。
「あーみんな少し聞いてくれ」
男が大きな声で言うとマイクがハウリングを起こす。
「まずはみんなにお礼を言いたい。今日まで俺みたいないい加減な奴に着いてきてくれて、本当にありがとう!
二十年ぐらい前、俺は陛下と少し知り合いだったってだけで、レオモレア軍に入った。それから十年かけて、少しずつ人が増えて、みんなの力で将軍になった。俺が今ここにいるのは間違えなくお前らのお陰だ! だから俺はここでお前らに誓う!
今度は俺の力でお前らを王直属軍にする!」
派手な男が高らかに宣言すると、聴衆が歓声を上げる。
「ありがとう、だからお前らも、俺に誓ってくれ! 俺のために死んでくれ! 心残りがある奴はこれからすぐにやってこい! 好きな人がいる奴は今すぐ告ってこい! 金を溜め込んでる奴は、今日で全部使え!」
男の言葉に聴衆は再び歓声を上げる。
「十年前、俺達の軍は、影も形もなかった! 死んで元々だ!今までの俺達は今日死ぬ! 勝って、新しい俺達に生まれ変わろう!今日は最後の晩餐だ! 死ぬ気で盛り上がれ!!」
会場を割れんばかりの歓声が包む。
「いいか、勝つぞぉ!!」