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第七十九話 赤い宝玉(前編)

「いらっしゃいませ、リスティ様、ハヅキ様、それから……」


 俺達に向かって礼儀正しい挨拶をしたのは、16歳ぐらいの少女だ。

 どうやら、リスティやハヅキの事は知っているらしい。


 もしかして、この少女がタイアスさんの弟子なのだろうか?

 年齢から考えると不自然だが、なにしろミレティ先生を知っているだけに見た目だけでは判断が出来ない。

 少女はブロンドで、まるで人形のように整った顔立ちをしている。

 そして額には、赤い宝石を飾りのようにつけていた。


(あれは、魔道具か? 凄い力だ)


 そこからは不思議な力を感じる。

 まるで湖のように静かだが、膨大な力が込められているのを感じた。

 少女は俺を見つめると。


「私はアーミアと申します。貴方は?」

 

「俺は、エルリット・ロイエールスといいます」


 俺は少女の挨拶に、自分も自己紹介をした。

 俺の名前を聞くと少女は頷く。


「ロイエールス家の血筋の方なのですね。どうりでガレス・ロイエールス伯爵に似ておいでだと思いました」


 俺はリスティにそっと尋ねる。


「もしかして、この人がタイアスさんの弟子ですか? 凄く感じが良い人じゃないですか」


「エル君、違うわよ。アーミアはいいのよ、問題は今向こうの柱の陰からこっちを窺ってる奴よ」


 リスティは露骨に不愉快そうな声でそう言うと、肩をすくめる。


「いい加減出てきなさいよ、フュリート。もうお互い大人なんだから、取って食ったりはしないわよ」


 リスティの大きな声に、大図書館の入り口の柱の陰から人影が現れる。

 背はそれほど低いわけではないが、少し前かがみの為、実際の身長よりも小さく見える。

 細身で顔色が青く、みるからにオドオドとした雰囲気を醸し出している。

 年齢はリスティと同じ20代前半だろうか。

 その男は、こちらに向かってゆっくりと歩いてきた。


「ほ、本当かい? リスティ。君にそう言われても、何だか信用できないよ」


 アーミアがフュリートと呼ばれた男に駆け寄る。


「お兄様! どうして隠れたりなさるんですか? いつもアーミアが言っているじゃありませんか『もっと堂々となさってください』と。今はお兄様が、大図書館の館長をされているのですから」


「そ、そうだな……すまない、アーミア」


 男はボソボソとつぶやく様にそう言った。

 どうやら、柱の陰に隠れていたこの人がタイアスさんの後を引き継いで、この大図書館の館長をしている人物らしい。

 お兄様ってことは、アーミアさんの兄ということだろうか?


(これは……意外だな。想像してた相手と全く違うぞ)


 何しろ四大勇者の弟子で、この図書館の館長という仕事を代理でこなしている程の人だ。

 何て言うか、もっとシャキッとした人を想像していた。

 

 だが、この年齢でそれだけの地位にいる相手だ、とても凡人だとは思えない。

 リスティがフュリートの前に進み出ると、彼は怯えたように後ずさる。

 それを見て、リスティがイライラしたように吐き捨てた。


「貴方、士官学校の頃から全く変わってないわね。魔道理論の成績はいつも断トツだったのに、私とのランキング戦を避けてばかりで、首席の座だって最初から放棄して。男として恥ずかしくないの?」


(首席の座? ってことは、二人は士官学校の同級生ってことか?)


 確かにリスティとは波長が合わなさそうなタイプだな。

 フュリートは、自分の鼻の頭を爪で掻きながら答える。


「実戦では君に敵わないことなんて、やらなくても分かっているよ。君と違って、僕が出来るのは勉強だけだったから」


「やらなければ、分からないじゃない! ミレティ先生も貴方のことを認めていたのに! 不戦勝で首席になった私が、納得出来るとでも思ったの?」


 リスティのことだ、首席になるとしたら正々堂々と一番強いことを証明したかったのだろう。

 リスティの言葉にフュリートは黙り込む。

 恐らく士官学校に居た時も、こんな調子だったのかもしれない。


(若い頃のリスティさんを考えれば、尚更だな)


「嫌いなんだ……戦うのも痛いのも。小さいころから体も弱かったし。君には一生僕の気持ちなんて分からないさ、リスティ」


 フュリートのその言葉を聞いて、リスティは顔を背けると言う。


「もういいわ、昔のことは。今日は仕事で来たのよ、タイアス様の研究室を調べさせてもらうわ」


 リスティの言葉にフュリートは驚いたような顔をする。


「あの研究室は、ミレティ様とマシャリア様が封印をかけている。無理を言わないでくれ、リスティ」


 俺はフュリートの前に進み出ると、ミレティ先生のサインが入ったカードを差し出す。

 そして言った。


「これがあれば入れるそうです。ミレティ先生の許可は頂いてきました」


「これは……確かに。しかし、ミレティ先生があの部屋に入る許可を与えるなんて信じられない。君は一体何者なんだ」


 どうやら先ほどのアーミアとの会話は、離れた柱の陰に隠れていた為に聞こえていなかったようだ。

 俺は頭を下げると、改めてフュリートに自己紹介をする。


「俺はエルリット・ロイエールスと言います。もし必要であればミレティ先生に確認して下さっても構いませんよ」


「ロイエールス……。まさか、あの炎の槍の勇者ガレス・ロイエールス伯爵の」


 フュリートの言葉に俺は頷く。


「ええ、孫です。五男の息子ですけどね」


「炎の槍の勇者の孫か、エルリット・ロイエールス……」


 俺のカードに目を通すと、フュリートはこちらに戻す。


「だが、あの部屋に入る許可は出せない。帰ってくれ」


 リスティは、フュリートを無視するかのようにその横を通り過ぎる。

 そして言った。


「貴方の許可は要らいないわ。四大勇者の一人『風のミレティ』の許しがあればそれで十分のはずよ」


 ハヅキも二人の様子に一瞬、逡巡をしたようだがリスティの後に続いた。

 その時、静かにフュリートの口が開く。


「あそこに行くと言うのなら、ここを通す訳にはいかないよ。リスティ、君を倒してでもね」


 その瞬間、俺は強力な魔力が辺りに広がっていくのを感じた。

いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。

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