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第四十九話 フユはプリンセス?

「あら、ミレティ先生からの手紙だなんて。なんて書いてあるのエルリット君」


 エリザベスさんの言葉に、俺はミレティ先生からの手紙を一読する。

 そして、みんなに伝えた。


「えっとですね『エルリット、貴方は三日後の御前試合まで学校に来なくてもいいですよ。試合に出る他の三人にもそう伝えるつもりです。では大会当日にまた会いましょう。 ミレティより』って書いてありますね」


 相変わらずフランクである。

 俺は肩をすくめた。


「大会参加者は、御前試合まで自由行動ってことですかね? ミレティ先生のことなので多分、大会まではお互いにこれ以上手の打ちを晒さないようにってことなんでしょうけど」


「エリルット……学校に行かないんですか?」


 ミレティ先生からの伝言を聞いて、エリーゼがちょっと元気がなくなっている。

 エリザベスさんがエリーゼの頭を撫でて俺に言った。


「ふふ、エリーゼはエルリット君と一緒に学校に行きたいのよね」


 エリーゼはちょっと頬を膨らませて、エリザベスさんのドレスに顔を埋める。

 俺はエリザベスさんとエリーゼに言った。


「授業に出る必要が無いだけで、学校に行くのは構わないでしょ? ラセアル先輩のことも気になりますし明日からも一緒に学校に行きますよ」


 エリーゼの顔がパッと輝く。


「本当ですかエルリット!」


「ああ、キュイの世話だってしないとな」


 俺の言葉に、エリーゼはにっこりと笑って俺に抱き着いた。

 フユもエリーゼの肩の上で胸を張った。


「フユちゃんも一緒に行くです! 学校に通うです!」


 エリーゼとフユのそんな姿を見て、メイド達がキャッキャと騒いでいる。

 ミレティ先生達がいる校内は安全だとしても、エリーゼ達の護衛も兼ねて学校の生き帰りはついていきたい。


 ランチもみんなで中庭のテラスで食べたいからな。

 エリザベスさんの隣で、満面の笑みで弁当を食べるヨハン先輩のことを俺は思い出した。

 あの人の楽しみを奪うのは酷だろう。


「授業に出なくていいなら、その間にリルルアさんの店に行くつもりです」


「ええ、そうね。私も一緒に行きますわエルリット君」


 確かに大きな買い物なので、エリザベスさんがついてきてくれるのは頼もしい。

 ギルドハウスの件が解決したから、値段も下げてくれるはずだ。

 

(そういえば、冒険者ギルドってところにも一度行ってみたいな)


 厨二病のサガだろうか、やっぱり冒険者とかギルドとか言う言葉にはどこか惹かれてしまう。

 例の地竜の杖タイタニウスっていうヤツのことも気にかかる。

 そもそも、あれがタイアスさんで、すんなり出てきてくれれば四大勇者の後継者問題も解決だろう。

 あの第二王子エルークのが、新しい四大勇者になることを心配する必要などなくなる。


 そんなことを考えていると、エリーゼがフユを手のひらの上にのせてメイド達に見せている。

 メイド達がエリーゼの側に集まっていた。


「お嬢様、何て可愛らしいんですかこの子」


「お揃いの赤い薔薇が、良くお似合いです」


 フユが頭の自分の頭の薔薇を触りながら、エリーゼを見上げてちょっとしょんぼりしている。


「エリーゼお姉ちゃんお姫様みたいです。フユちゃんもお姫様みたいになりたいです」


 確かにエリーゼの着ているドレスは、いかにもお姫様って感じだからな。

 それにエリザベスさんやディアナシア王妃の姿も見て、フユはあんなドレスが羨ましいのだろう。


(可愛いもんだ、こいつもやっぱり女の子なんだよな)


 小人姿のバロが俺の肩の上に現れて、笑っている。


「馬鹿かよ、エリーゼちゃんの格好をお前がして似合うわけないだろ。 一度鏡を、ブヘェ!!」


 フユが薔薇の鞭でバロに攻撃を加えた。

 これはバロが悪いだろう。


「喰らうです! フユちゃん似合うです! エリーゼお姉ちゃんの妹です!」


「こ、このガキ。さっきは俺のおかげで助かったんだろうが!」


 フユはエリーゼの体に隠れながら、バロに舌を出す。


「恩着せがましいです! 女の子にもてないタイプです!!」


(……おいフユ、それは言い過ぎだぞ)


「このガキ! もう許せねえ!!」


 図星をつかれるとブチ切れるものだ。

 フユを追い回すバロの姿に、エリーゼは楽しそうに笑っている。

 メイドの一人がそれを見ながら、何かを思いついたように小さく手を叩いた。


「そうですわ、お嬢様。お嬢様のお人形の洋服を、フユちゃんにお着せになられてはいかがですか!」


 それを聞いて他のメイド達も大きく頷いた。


「まだ着せてない洋服もありますもの、ちょっと手直しをすれば大丈夫ですわきっと」


「ええ、サイズ直しならお任せください」


 それを聞いて、エリーゼは嬉しそうに手を叩く。

 フユは不思議そうにエリーゼ達を見つめた。


「フユ? フユちゃんエリーゼお姉ちゃんみたいになれるですか?」


 エリーゼは頷いて、エリザベスさんを見上げた。


「お母様いいですか?」


 エリザベスさんはにっこりと微笑んで言った。


「ええ、もちろんよエリーゼ。フユちゃんも今日から大事な家族ですもの」


「フユ~、フユちゃんも家族ですか?」


 そう言ってフユは嬉しそうに笑った。

 エリーゼが俺の手を引っ張る。


「エルリットも一緒に来てください!」


 どうやら、エリーゼの部屋に行くようだ。

 メイド達も数名一緒に付いてくる。

 エリーゼの部屋は大きな天蓋付きのベッドがあって、綺麗な調度品が飾られたいかにも公爵令嬢といった部屋である。

 枕の側にはいくつかの人形が置いてあった。


(へえ、確かにこの人形が着てる服はリアルだな)


 公爵家令嬢の人形だけあって、着ている服の生地からして高そうである。

 メイド達はメジャーのような測りで、フユの体のいろんな場所を測り始めた。


「フユ~、くすぐったいです」


 メイドの一人がエリーゼに許可を得て、部屋の子供机の上にある箱を持ってくる。

 そこには着せ替えに使っているのだろう、人形達の服がしまってあった。


「フユ! エリーゼお姉ちゃんのお洋服にそっくりです!」


 箱の一番上にのせられている服は、確かにいまエリーゼが来ているドレスによく似ていた。

 純白で上品なレースがところどころに施され、胸のところに大きなリボンがある。


「フユ~」


 着てみたいのだろう、箱のふちに手を当てて中を覗き込む姿か愛らしい。

 エリーゼもそれを見て、にっこりと笑う。

 メイド達はさっそくそれを、フユに合わせてサイズの直しを始める。


(へえ、器用なものだな。あんなに小さなドレスなのに)


 20分ぐらい経っただろうか、細かい部分もしっかりと直してまるでエリーゼのドレスのミニチュアのような服が、フユに着せられている。

 頭の白い薔薇と、王妃から貰った赤い薔薇がそのドレスに良く似合っていた。

 メイド達に鏡を目の前に置いてもらって、フユは自分を映している。


「フユ~、可愛いです! フユちゃんお姫様みたいです!」


「ああ、良く似合ってるぞ」


 俺の言葉に、エリーゼがフユを手のひらに乗せて微笑む。


「フユちゃんとお揃いです」


 メイド達もほんわかとそれを眺めている。


「良く似合ってますわ」


「なんて可愛らしいんでしょう」


 バロが俺の肩の上で膨れている。

 

「ちっ、調子に乗りやがって。お、俺だってさもっと格好いい服を着れば、エリーゼちゃんにぴったりな王子様みたいによ……」


 それを聞いてメイド達がヒソヒソと何かを相談している。

 そして一人が俺にそっと耳打ちをした。


「ああ、いいんですか? こいつにそんな格好は似合わないと思いますけど? おいバロ喜べ、ちょっとじっとしてろよお前」


「何だよエルリット? ちょ! な、何しやがる!」


 メイド達は今度はバロの体をメジャーで測っていく。

 そして箱の中から赤い小さな男物の服を取り出して、サイズを直していく。

 15分ぐらい作業を続けたメイド達は、出来上がった綺麗な赤い服をバロに着せた。


「へ?」


 バロは鏡に映った自分の姿を見て、間の抜けた声を出す。

 そして、暫くすると髪型を整えてみたり、クルリと回ってみたりしている。


「お嬢様が好きな王子様の人形の服ですわ。着せ替え用に赤と白が御座いますから」


「へえ、結構似合ってるぞバロ」


 バロはそれを聞いて飛び跳ねると、エリーゼの手のひらに飛び乗った。

 そしてキザなポーズをとる。


「へへ、エリーゼちゃん! 見てくれよ俺、王子様みたいだろ!」


 エリーゼはそれをみてチュッとキスをする。


「バロちゃん可愛いです!」


「ふひゅぅうう」


 バロはいつも通り失神して、他の使い魔達に連れて行かれた。

 フユがそれを見て言った。


「だらしない王子様です! やっぱりもてないタイプです」


 それを聞いて俺達は笑った。

 その後ネグリジェも作ってもらって、すっかりご機嫌になったフユは眠くなったのだろう、ウトウトし始める。

 俺は風魔法で空気のベッドを作るとその上にフユを寝かせた。

 エリーゼも疲れたのだろうちょっと眠そうだ。

 俺も試合で疲れていたので、軽めの夕食を頂いてその日は俺も眠りにつく。


 次の朝、俺達は学校に向かったのだが、校門の前では昨日手紙をくれたミレティ先生が立っていた。

ご閲覧いただきましてありがとうございます!

少し時間が出来ましたので、今日中にはもう一話投稿する予定です。

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