第百四十二話 歴戦の勇者
「ガレス様のところへだったら私が案内しますよ! リスティ番長!」
「だから、その呼び方はやめなさいって言ってるでしょリリナ」
ふぅとため息をつくリスティ。
「じゃあ何て呼べばいいんですか? 士官学校ではいつもそう呼んでましたから」
リリナの問いにリスティは答える。
「リスティでいいわよ、リスティで」
「仕方ないですね。じゃあリスティ姉さんで」
「……ふぅ。もう好きにして」
騎士たちはヒソヒソと話をしている。
「人は見かけによらぬものだな」
「う、うむ……そういえば、リリナも時々人が変ったように鋭い目を」
「お、俺も見たことがあるぞ!」
リスティはそんな彼らを眺めながら、諦めの表情を浮かべて言った。
「とにかくリリナ、伯爵のところに案内して頂戴。今頃はガレス様の部屋にも、ミレティ先生からの手紙が届いていると思うわ」
「へえ、ミレティ先生の。懐かしいですね」
「ふふ、ほんとね」
リスティは学生時代を思い出して苦笑しつつも微笑んだ。
「ガルオン、一緒に来る?」
「うむ、あの小僧の育った家となるとワシも興味があるでな」
ガルオンは頷くと、大型犬程度の狼にサイズを変えていく。
屋敷の扉をくぐるにはいつもの巨体は大きすぎるからだろう。
「これなら問題はなかろう?」
「ええ、行きましょう。リリナ案内頼むわよ」
「はい、姉さん」
他の騎士たちも一緒にリスティを屋敷に迎え入れると、長い廊下を歩く。
リスティは周りを見渡して口を開いた。
「へえ、エルリット君もここで育ったのね?」
「ふむ、さすがに四大勇者の一人ともなると立派な屋敷に住んでおるな」
リスティとガルオンの言葉にリリナは頷く。
「ええ。エルリット坊ちゃんはガレス様の五男坊のアレン様のご子息ですから」
「いわゆる部屋住みというやつだな」
「ガルオン、悪いわよそんなこと言ったら。ふふ、でも小さな頃のエルリット君、可愛かったでしょうね」
その言葉にリリナは首を傾げた。
「可愛いい? 私がここに来たのは2年前ですけど、子供なのに時々ぐふふって笑って何だか不気味でしたよ?」
「あの小僧、どうやら幼い頃から変わっておらんようだな」
「……そうね」
はぁと溜め息をつくリスティにリリナは言った。
「でも、あの時は格好よかったなあぁ! あの歳で炎の槍の勇者に逆らったんですから」
「へえ、エルリット君がガレス様に?」
問い返すリスティにリリナは頷く。
そして、その時のことを思い出したように笑った。
「『自分の母親を侮辱されて謝るような野郎が、一体誰を守れるんだよ!!』ってあのガレス様に。あの炎の槍の勇者に一歩も引かないんですから! ふふ、やっぱりガレス様の孫ですよね。ガレス様も、自分の幼い頃にそっくりだと大笑いされて」
「へえ、そんなことが?」
「がはは、あの小僧らしいわい!」
リスティもクスクスと笑う。
「ほんとね。エルリット君らしいわ」
一行はそんな話をしながら二階への大きな階段を上がる。
その先にある白い扉を騎士の一人がノックする。
「ガレス様、ミレティ様の使いが参っております」
すると、扉の向こうから渋い男の声がした。
「分かっておる。通せ」
その騎士は扉を開いた。
リスティはシックな部屋の中に立っている男を眺めた。
(あら、エルリット君は頑固じじいなんて言ってたけど、とても素敵なおじ様じゃない)
強面だが整った顔立ちは若いころの面影がある。
歴戦の勇者といった雰囲気のその男はリスティの方を見る。
「遠路よく参った。我が師ミレティからの手紙は読んだ。早速詳しい話を聞かせてもらおうか? どうやらあの小僧も一枚噛んでおるようだからな」
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