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第百三十二話 飛竜乗りの訓練

「さて、約束通り飛竜を乗りこなす訓練をするか。すぐにでも必要になるかもしれないからな」


「マジですか、マシャリアさん! いやふぅうううう!!」


 前に一度マシャリアの後ろに乗って空を飛んだことがあるが、一人で飛竜に乗るとなると話が違う。

 ファンタジー好きなら、飛竜で自由に空を駆け巡る自分を想像する人も多いだろう。

 中二病の俺にとっては尚更だ。


 キュイも両親が空を羽ばたく姿を見て、興奮気味に小さな翼を羽ばたかせている。

 エリーゼはそんなキュイを見て嬉しそうに笑った。


「キュイちゃん、お父さんとお母さんを見てます。きっと一緒にお空を飛びたいんです」


 兵士の腕の中で羽ばたくキュイの頭を撫でるエリーゼ。

 フユはキュイの頭の上に飛び乗った。


「キュイちゃんいくです! 大空に羽ばたくです!!」


「はは、キュイにはまだ早いって」


 この間も、ラセルやアルサの真似をして飛べなかったときにしょげかえってたからな。

 エリーゼに慰められていたのを思い出す。

 空を見上げるキュイの頭を撫でながら、エリーゼは言った。


「エリーゼ、キュイちゃんと約束しました。大きくなったら一緒に大空を飛ぶって」


「キュイキュイ!」


 エリーゼの気持ちが伝わったのか、嬉しそうにエリーゼに頭を摺り寄せるキュイ。

 大人しくなったキュイを、兵士は静かにエリーゼに受け渡す。


「ふふ、キュイちゃん可愛いです」


 エリーゼの腕の中にいるキュイは確かに可愛らしい。

 と同時に、大空から舞い降りるラセルやアルサ。


 俺たちはつがいの飛竜に歩み寄った。


「キュキュ~!」


 キュイがそう鳴くと、アルサが長い首をこちらに向ける。

 そして俺に気が付くと。


『あら、エルリットくん! 貴方もここにいたのね? びっくりしたわ、こんな場所があるなんて』


 夫であるラセルも周囲を見回すと。


『ふむ、確かに驚いたな。食後の昼寝の邪魔をされた時は辟易したが、よい眺めだったなアルサ』


『……貴方ったら何言ってるんですか。もう昼寝っていう時間じゃありませんわよ、食べては寝ているから時間の感覚がなくなるんです』


 相変らずである。

 いつも通りの白竜の夫婦のやり取りを聞きながら、俺は言った。


『すみません、実は俺のせいなんですよ。これから飛竜に乗る訓練をすることになって、お二人に来てもらったって訳なです』


 それを聞いて、ラセルとアルサは顔を見合わせた。


『あら! それなら張り切らないと。ふふ、エルリット君のお蔭で、さっきも新鮮なレサ鳥の肉とオリマカの実をたっぷりと食べられたんだもの。ね、貴方』


『うむ、少年! 我が背中に乗るがよい!!』


 ……やばい。

 そう言われると出来ればアルサさんにお願いしたいとは言いにくい。

 何しろこちらは初心者だ、突然大あくびをされて振り落とされてはかなわない。

 アルサさんが、俺の微妙な表情を察したのかラセルに言った。


『初めて一人で乗るのでしたら、私の方がいいわ。貴方は、雄々しくて初心者向けとはいえないですもの』


『た、確かにな! アルサ! やはり君は俺のことをよく分かってる』


 確かに色んな意味で分かってるようだ。

 扱いが上手い。

 まるでラティウス公爵とエリザベスさんだな。

 完全に奥さんの手のひらの上である。


『はは、そ、そうですねラセルさんは雄々しいですからね。俺にはまだまだ難しそうです』


『ふふ、少年。精進せよ、いずれこの背の上に乗れる日がくるようにな!』


 まあそういう事にしておこう。

 マシャリアは俺の傍に立つと。


「エルリット、お前は雌の飛竜に乗れ。賢い飛竜だ、乗りやすかろう」


「了解です! マシャリアさん」


 俺は空を飛ぶ前に、マシャリアに細かい指導を受ける。

 鞍の上での手綱の操作など色々だ。


「しかし、お前の場合は白竜の言葉が喋れるからな。実際に会話した方が速いかもしれぬな」


「確かにそうですね!」


 その点は俺にとって大きなアドバンテージだろう。

 マシャリアは俺を見つめて大きく頷くと、ラセルを羽ばたかせた。

 大空に舞い上がっていくラセル。

 マシャリアの声が聞こえてくる。


「来い、エルリット! 恐れることは無い」


「はい! マシャリアさん!!」


 次の瞬間──

 アルサが大きく羽ばたくと俺は大空に舞い上がっていた。

いつもお読み頂きましてありがとうございます!

新連載の『追放王子の英雄紋』もよろしければご覧下さいませ。

画面の下に、新作へのリンクを貼っておきましたのでそこから作品ページに飛べるようになっています!

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