第百三十話 マシャリアからの相談
「子供のくせに生意気な。だが、エルリットお前はきっといい男になる。もしかするとガレス以上の男にな」
マシャリアの言葉に、俺は照れ笑いを浮かべながら。
「ぐふふ、そんな。マシャリアさんに言われると照れますね」
そんな俺の笑い顔をマシャリアは、ジト目で見つめている。
そして、ファティリーシアが言った。
「変ね、笑い顔はガレスには似てないのね」
マシャリアも頷くと。
「何となくいやらしい笑い顔だな」
「はは、何を言ってるんですか。生まれつき爽やかな紳士の僕にそんな」
……やばい。
つい地が出てしまった。
何しろ相手は女神級の美人エルフで、しかも大きな狼耳と九本の尻尾までついているという激レアな存在だ。
色んな意味で男のロマンがぎっしりと詰まっている。
中二病の俺が、少しぐらいだらしのない顔になっても許して欲しいものである。
それにしても……確かに激レアだよな。
俺は改めて目の前の美女を見つめた。
「それにしても、九つの尾って凄いですよね」
ファティリーシアは少し自慢げに俺にいう。
「ふふ、そうかしら?」
再生中の尻尾がモコモコと動いている。
まだ短いのだが、逆にそれがマシャリアとはアンバランスで可愛らしい。
俺はコホンと咳ばらいをしながら、一つマシャリアに尋ねてみた。
「あ、あのですね。少しだけその尻尾をモフらせてもらってもいいですかね? 実は戦ってる時からずっと気になってたんですよ。はは、勿論学術的な興味ですよ。決して他意はありません」
その言葉に、マシャリアは顔を真っ赤にして俺から距離を取る。
「ば、馬鹿な! この尻尾は人に触らせるものではない!」
一方でファティリーシアはクスクスと笑って。
「あら、いいじゃない。坊やが勝ったんだもの、ほら少しぐらいなら触ってもいいわよ」
そう言ってこちらに尻尾をむける。
「ありがとうございます、ファティリーシアさん。では、遠慮なく」
「こ、こら! やめろ、エルリット!!」
俺が学術的な調査に入ろうとしたその時──
エリーゼがこちらに向かって駆けてくる。
戦いが終わったのを見て、闘技場の観客席から降りてきたのだろう。
護衛の騎士に付き添われたエリザベスさんも一緒だ。
「エルリット!!」
嬉しそうに息を弾ませて俺に駆け寄ると、ギュっと抱き着くエリーゼ。
「凄いです! エルリット、とっても強かったです!!」
「はは、ありがとな。エリーゼ」
エリーゼのことだ、観客席で必死に応援してくれていたのだろう。
以前、俺がマシャリアに負けた時にエリーゼは泣いてたからな。
エリザベスさんも、興奮したように俺の手を握る。
「マシャリアに勝つなんて! 凄いわ、エルリット君!!」
「ありがとうございます、エリザベスさん」
俺の肩にマシャリアの手が置かれる。
尻尾の件でまだ頬を少し赤らめてはいるが、凛々しく美しい顔で護衛の騎士たちに命じる。
「よいか、今日よりエルリット・ロイエールスを四大勇者として私と同列に扱うようにせよ。正式な任官は後日となるが、マシャリア・レティアースの名において皆にそう命じる!」
「「は! マシャリア様!!」」
そう言って恭しく頭を下げる騎士たち。
俺はマシャリアに尋ねた。
「いいんですか? マシャリアさん」
「ああ、ミレティから連絡があり陛下には内々に承諾は頂いている」
まあ、今は状況が状況だからな。
特例措置みたいなものだろう。
四大勇者の一角が不在で内乱が起きたらそれこそ悲劇だ。
そんなことを考えていると、マシャリアが俺を見つめながら言った。
「丁度いい。エルリット、お前に相談しておきたいことがある」
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