第百二十八話 凝縮された力
「ふふ、仕方ないわね。こんな坊やに、あれを使うことになるなんてね。エルリット・ロイエールス、遊びはここまでよ」
どうやらまだ奥の手があるようだ。
マシャリアの残りの三本の尾と再生しかかっている尾が一つになり、巨大な尾と化した。
バロたちが俺に向かって叫ぶ。
「おい、エルリット! ヤバいぜ!!」
「あの尾から凄え力を感じるぜ!!」
「気を付けろ!!」
「来るぜ!!」
俺は頷いた。
「ああ、確かにヤバいな……」
九本の尾それぞれから感じる力もヤバかったが、それが一つに集まると桁外れな力を感じさせる。
先程までは様子見だったのだろう。
目の前の美女が嫣然と微笑む。
「ふふ、私にこれを使わせたのは誇りに思っていいわよ、坊や。ねえ、マシャリア」
「ああ、ファティリーシア。この技を使うのは久しぶりだからな」
ユラユラと左右に揺れる、長く美しい銀色の尾。
氷の女帝の魔力が美しい一本の尾に凝縮されていくのが分かった。
それに伴い、マシャリアの瞳に魔方陣が浮かんでいく。
一気に勝負を決めようという意志がそこから見て取れる。
その時──
マシャリアが動いた。
と同時に再び俺の周りに氷の薔薇のつるで壁が築かれた。
フユの体が青く輝いている。
「フユ~! いくですエルリット!!」
それを見て妖艶な美女は笑う。
「うふふ、同じ技を二度も使うつもり? 舐められたものね!!」
勝利を確信したその瞳。
確かに、今更こんな苦し紛れは意味がないだろう。
先程のように、真紅の薔薇が咲き誇る。
それは一気に燃え上がり辺りに霧を立ち込めさせた。
マシャリアたちの視界を奪うその霧。
だが勝ち誇るような声がその霧の中で響いた。
「無駄だ! エルリット!!」
「ふふ、霧を晴らすまでもないわね。棒立ちじゃないの、もう打つ手なしってところかしら?」
霧の中で立ちすくむ俺の魔力を感じたのか、長い尾が霧ごと俺のその体を横なぎにした。
その風圧で霧が晴れ。
同時に、強烈な尾の一撃を腹に受け、くの字型に折れ曲がった俺の体があらわになっていく。
その瞬間──
大きく見開かれる女騎士の瞳。
その唇は驚きを隠しきれずに声を発した。
「馬鹿な……これは!?」
バロたちの姿はもう消えている。
全ての力をあることに注ぎ込んだからだ。
子供の姿に戻った俺は、マシャリアが尾で薙いだ部分とはまるで違う場所で戦いを見つめている。
ならば、マシャリアが尾で薙いだものは一体何なのか?
それは、俺の分身ともいえる存在だ。
残された魔力の殆どをつぎ込み作り上げた、疑似生命体。
そして、その核にはドラゴニックバレット並みに圧縮した疑似的な賢者の石が存在する。
「マシャリアさん、ファティリーシアさん、悪いんですが俺の勝ちです!」
その瞬間──
彼女たちの美しい尾がめり込み、くの字に折れ曲がっている俺を模したそれは爆発した。
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