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第百十九話 新しい四大勇者

「その時は貴方が力で証明して見せればいいのです。ファルーガとフレイミリアの件もありますし、丁度いいじゃありませんか」


 何が丁度いいんだ!

 俺はふぅと溜め息をつきながら、あの頑固ジジイの顔を思い出していた。


(おいおい、じい様が来たらどこから説明したらいいんだ?)


 そもそも寄宿舎に入れって言われたのに、思いっきり無視して公爵家にいるからな。

 その上、サラリーにつられてつい王国の名誉騎士にまでなっちまったし。


「フユ~、どうしたです? エルリット元気なくなったです」


 フユが心配そうに俺を見つめる。

 俺はその顔を見て、思わず肩をすくめた。


「お前の事も紹介しないとな、フユ」


「フユ~、誰に紹介するですか?」


「はは、来れば分かるさ」


 まあ数日後には四大勇者にならなきゃいけないみたいだから、今更名誉騎士ぐらいおまけみたいなもんか。

 そうだ……。


「先生。あくまでもこれは知的好奇心からの質問なのですが……」


「なんです? 改まって」


 俺は軽く咳ばらいをして尋ねた。


「ええ、あの……いかほどなのかと」


「いかほどとは?」


 こういう時は察しが悪いな。


「あのですね。四大勇者のサラリーはいかほどかと」


「フユ~、エルリットがめついです」


「黙りたまえ。これは知的好奇心からの質問なのだよ」


 ミレティ先生は、俺の質問に可愛らしく首を傾げると答えた。


「そんなことですか。大体これぐらいですね」


 そう言って、指を二本立てて見せる。


「は、ははそうですよね。金じゃないですよね」


 指二本ってことは金貨20枚か、意外と安いな。

 それでも、名誉王国騎士が月に金貨10枚だからその倍はある。

 元の世界との物価の比較は一概には出来ないが、金貨一枚が大体10万ぐらいだからな。


(月給100万が200万に増額されるわけだ。まあ満足しないとバチが当たるな)


 ミレティ先生はふぅと溜め息をつくと。


「四大勇者ともあろうものが、やはり月に金貨200枚は安いですかね」


「ふぁ!?」


 思わず変な声が出た。

 俺は恐る恐るミレティ先生に尋ねる。


「あ、あのですね。さっきの指二本は金貨200枚ってことですか!?」


「ええ、幾らだと思ってたんですか?」


「は……はは。いや何でもないです」


 おい、うっそだろ!

 金貨200枚って、毎月大体2000万ぐらい貰えるってことだぞ。

 ヤバすぎだろ!

 フユが俺の顔を覗き込んでいる。


「エルリット笑ってるです。邪悪な笑いです」


「フユくん、馬鹿なことを言うな。これから四大勇者になって頑張ろうという爽やかな笑顔じゃないか!」


「フユ~、そうは見えないです」


 俺が思わず咳払いをして、なんとか邪悪な笑みを抑えようとしていると。

 ミレティ先生が言った。


「そもそも四大勇者になるということは、王家から伯爵としての地位と領地も与えられますからね」


「へ? 伯爵って……じゃあ、俺も伯爵になるってことですか?」


 先生は当たり前ですよ、と言った雰囲気で頷く。


「あら、知らなかったのですか? ガレスも嫡子ではありませんでしたから、実家の爵位を継いだわけではありませんよ。私やマシャリアも伯爵の爵位を頂いていますから」


(ああ、そう言えばマシャリアさんも女性の伯爵だっけ。レディ伯って言われてるもんな)


「私やマシャリアは都での仕事がありますから、所領の管理は部下に任せています。ですから、屋敷は所領だけではなく都にも用意されてますけどね」


「ああ、そう言えばマシャリアさんの都の屋敷は、冒険者ギルドのギルドハウスになってましたね」


 先生は頷く。


「ええ、彼女も私も王宮に部屋が用意されてますから。都の屋敷は殆ど使わないんですよ」


(ヤバいなこれ。金貨200枚に所領や屋敷まで貰えるのかよ)


「先程の金貨200枚には、伯爵としての所領の運営資金も含まれています。その代わり豊かにすれば、国に税金を納めても領地からの収入が大幅に黒字になりますからね。領主としての収入も得られますよ」


「へえ、運営資金ですか」


 確かに年間にして約2億以上の金額だからな。

 なるほど、それがこの国の仕組みなのだろう。

 領主にある程度軍資金を与えて、豊かな土地にすることで多くの税収を得る。

 そして税金から、また地方に金を分配するわけだ。

 そうすることで、国中が豊かになってまた税収が上がる。

 ファルルアンが豊かな国である理由の一つだろう。


(領地の運営とか楽しそうだな)


 錬金術も、そっちの方面のほうがいかせそうな気もする。


「俄然やる気が湧いてきましたよ、先生!」


「うふふ、現金な子ですね」


 こりゃあ勝つしかない。

 俺の未来のサラリーと所領の為にも、この国が滅んでしまっては困る。

 未だかつて、これ程やる気がでたことはないだろう。

 我ながら浅ましいものである。


(まあその代わり、下手すると命懸けの仕事になりそうだけどな)


 俺は先生に言った。


「とりあえずは御前試合で勝つことですね」


「ええ、せっかく向こうが用意してくれた場なのです。こちらも最大限に利用させてもらいましょう」


 なるほどな、その為にも御前試合で俺を四大勇者に就任させるのは意味がある。

 ミレティ先生は俺の表情を見て頷いた。


「そういうことです。相手の動きを封じるだけではない、新しい四大勇者がその地位を確固たるものに出来るいい機会です」


 先生はそう言うと、大樹の方に歩き始める。


「さあ、これから忙しくなりますよエルリット。まず最初に一つ、貴方にお願いしたいことがあります」

いつもお読み頂きましてありがとうございます!

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