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勇者はいぬ  作者: 圧倒的……負け犬!!
デンバーと吟遊詩人編
9/14

新たな出合い

 竜の城下町は、今まで来た街にはない上品な雰囲気を持つ街だった。

この街の雰囲気は、優雅な貴族に相応しいもので商人や農民のような階級のものでもおおよそ成功者のオーラを纏っていた。

 僕たちのような浮浪者めいた雰囲気の人間にとっては面白くも無い光景ではあったが。

ポピーとミカエルは、宿場で休み長い休憩をとっていた。

あそこまではしゃいだ後なので、しようがないのではあるが、僕はつまらなさを感じ冒険を求めて一人で街を歩き出した。

 鋼の通りと呼ばれたそこはカチカチと職人の道具の音が聞こえた。

僕は息苦しい優雅な雰囲気とは違う職人気質な雰囲気に居心地の良さを感じた。

誰もが目指す雰囲気の最終系の展示場のようなこの城下町は色々な雰囲気がある通りが時折在ったのだ。

 鋼の通りの横にある筆の通りとよばれる場所は、貴重な本や魔術の学校、植物の展示場などがあり、それはこの世界を知らない僕にとっては心躍る場所であった。

もちろん鋼の通りも、この世界の魔法や宝石によって作られた武器などがあり、それを見て時間を潰してもいいと思える程でもあったが。

僕は手始めに一番気になった魔法の学校へ行った。

 竜の城下町 筆の通り 魔術知識学校 と木の装飾で書いてあったその学校の外見は、おおよそ森の小屋のようなものだった。

だけど3階程の高さがあり、ところどころに装飾されている魔術的なものは森の小屋を神秘的な建物へと変えたのであった。

玄関のベルを鳴らせば入れるようだった。

 もちろん僕にとってはこれが難関で、1m20cm程の高さにある、このドアノブでさえも捻ることなどできなかったのだ。

赤子を捻るような事の反対はきっとドアノブを捻るような事であろう。

 僕は心中でそんなジョークを飛ばしながら看板犬のように玄関に座り込んだ。

おおよそ、このような施設に出入りする人物は、好奇心旺盛な人か、野心家であろう。

前者だった場合、この茶色い毛玉のホワイトティースを見逃すはずもないのだ。

みすみす冒険の予感が宿るこの勇者との対面を逃すなんてありえない。

 「いやいや、なかなか興味深いものではあったよ。」

そう老人の研究者のような喋り方をする、声の主の声色は男の若者のものであった。

なるほど知識人とは老人臭くなるものなのか? と僕は思った。

僕もかなりの知識犬で、元の世界の知識はほぼほぼ全部そらんじているだろう。

この世界に着てから知らない知識も多少思いつくようになった、これは僕の持つ能力なのかもしれないな。

普通に考えて、このような能力を持っていることに気づけば、色々試したりしたくなるものだろう、とは思うが僕にとってそれはどうでもよいことなのであった。

自分が何者であるかなんて問題ではない、現状好奇心を満たすものはそれではないのだ。

 「マンドラゴラの苗なんだが遅くはならないよ。」

マンドラゴラ……、その響きは何か思いつきそうだ。

だけどこの世界に転生したときに手に入ったと思われる能力は、それほどまでに良いものではないらしい。

日常生活に差し支えがない程の順応性の獲得には役には立ったが。

 「しかし先天的な能力の後天的獲得とは……。」

不思議なもので、自分の考えてることにマッチした情報が手に入ることもありそうだ。

その声の主がドアを開けようとしたときに、僕の体の脂肪にドアが食い込んだ。

 「おや? 見たこと無い犬だな。」

その青年の興味は、さっきのマンドラゴラなんかよりも、すぐに僕に移ったのだ。

研究者というのは、変わり者を通り越して哀れとも思える程単純である。

 「そして喋るんだぜ。」

僕は興奮を抑えきれなくなりカミングアウトした。

 「何! これはガクジュツ的にキチョーですな! 」

その若い革のの探索者の服とも、鎧とも言えない様な物を、着た青年は僕を持ち上げた。

 「君は、飼い主なんかいるのかい?」

ふむ、良心と常識を持ってるのか、一応はそういうことをちゃんと聞くのか。

だが研究者である以上飼い主がいるといったら、次に思い浮かぶ思考は、どうやって飼い主を説得するかであろう。

 「いないな、だが友人はいる、一緒に旅をしている。」

僕は真顔で答えた。

この真顔がツボに入ったのか少し若者は笑いをこらえているようだった。

 「ふむなるほど、不思議なもんだが、君は自分に責任を取れる犬であろうからちょっと話をしないか。」

その研究者の若者は、近くの古びたアパートのような場所に来ると部屋のドアの前に僕を置いた。

彼は足早に自分だけ家の中に入ると物が崩れる音と悲鳴が何度かした後ドアを開けて僕を招いた。

 「何もないところだが、ゆっくりしてくれ。」

彼の部屋は、何もないとは程遠いほど物で溢れていた。

もちろん僕を招き入れた部屋は片付いていたが、隣の部屋には物が詰まってるようだった。

床に時折落ちているモンスターの骨や杖は、価値がそこそこありげではあったが、とてもそのような扱いを受けては無かった。

 「そうだな、じゃあちょっとこの部屋にあるものの説明してくれよ。」

僕は未知なるものがありすぎて逆に聞くのも面倒だがここは新たな探求をしてみようと決心した。

彼は、適当に頭蓋骨を取った。

 「これはゴブリンの頭蓋骨ダヨ! いやー一時期頭蓋骨コレクションにはまったんだ、いや学術的な研究も兼ねてね? 僕が発見したゴブリンの持つ生態は貴重だよ。」

おおよそこの若者は評価はされてないが、それなりの能力はあるのだろうと僕は思った。

なにやら僕と雰囲気が似ていたのである。

 「この骨の杖は、まさしくリザードの背骨で作られたものだよ。」

ほほう、価値が高そうなものだ。

ぜひ効果が知りたい。

 「これはどういうことができるんだ? 」

僕は首を傾げた。

 「物理的にすごく強いよ! 」

彼はそう言って近くのおよそ、価値のなさそうなクマの木彫りに対して杖をたたきつけた。

するとクマの木彫りは粉々になった。

 「ほほう、じゃあ次。」

なにやら面白いことになってきたと僕は思った。

 「これはラフレシアの花粉! これだけだと毒なんだけど数々の薬草と調合した結果! 」

彼はすり鉢に、薬草と毒を入れて石を砕いたものを入れてすり始めた。

僕は部屋にお腹をつけて待っていた。

 「できた! これは植物にかけると逆に育っていくんだ! 」

彼はそう言ってなにやらちょっとずつ枝が動いている小さな木にかけた。

その木は生き物のように暴れ始めたが、すぐに種になってしまった。

 「なるほど、種に戻すってことか。」

僕は納得した。

 「これは僕だけの力で発見したわけじゃないが、これによって貴重な植物の人工的栽培が飛躍的に容易になったんだよ。」

この若者はその後もなにやら微妙に意味の無いものや良く考えたらすごいものを淡々と説明した。

 「さて、君はなんで喋れるの? 」

自分の時間は終わりとまでに僕への質問をした。

 「元々僕たちは喋れる世界にいたんだ。」

彼はこの言葉に対して少し考えて納得した。

 「犬の世界ね、転生してきたんだろうね、しかし犬が文明的社会を持って言葉を持つなんてね。」

彼は言った。

 「手先はみんなそこそこ器用なんだぞ。」

そう言って僕はテーブルにあったペンを持って適当に文字を書いた。

 「驚いた! 君の友人もきっとその事は知らないだろうよ! 」

彼はそう言って文字を眺めた。

 「この世界の知識についても、そこそこ詳しいがなぜだろう、普通転生してきた人は、語学を学んだりとか色々大変だと思うんだけど。」

彼はそう呟いた。

 「それなんだが僕の頭には、どんどん知識が入ってきてるみたい。」

僕はそう言った。

彼はそれを聞くとなにやら紙を取り出した。

 「君ちゃんと転生したときの書類みてないな? これは運命紙って言って君の運命や能力をおおよそで記すんだ。」

そう言って彼はその紙を僕の口に入れ込んで、少しすると取り出した。

 「ふむふむ、君の運命は、好奇心の虜ねぇ。」

彼はそう言って続けた。

 「夢は勇者か、この運命で勇者になれるとは思わないが、それもできるかもしれないな、多くの人は見落とすだろうが。」

そう言って彼はテーブルに紙を置いた。

「このルーンは、知識のルーン、これがあると知識が自然と身につく、例えばここにボールがある、おおよそ多くの人は、ボールの仕組みは覚えないと知らないが、君はそれを見た瞬間仕組みを思いつく。」

彼はそう語りだした。

「もちろん知識ルーンは持ってる人が多いんだけど、この僕もそうだけど、君には突破のルーンと、加護のルーンがある。」

「突破は、種族的な限界を超えれる素質のある人でね、君は種族の中でも特段優れていて、運も良い! 」

彼はルーンそのものについては説明しなかった。

だけど僕にはルーンがなんらかの属性的なものであると分かった。

 「だけどまぁ、種族的な基本的な値があって、君の運命を見た人はこの優れたルーンにも興味は示さなかったようだね。」

彼はそう言って何か思いついたように話し始めた。

「実は、僕はこのルーンが後から獲得できないか研究してる。」

彼はそう言った。

「ふむ、そうなると俺が勇者になるために必要なルーンも取得できると? 」

僕はそう尋ねた。

 「野心家だな、まぁ現状でも君は不可能なわけでは僕は無いと思う。」

彼はそう言って続けた。

 「だけど勇者の持つ天性ルーンがあればきっと目標に近づくね。」

彼はそう言って何かを思いついたように言った。

 「マンドラゴラは魔力に優れる植物で、ルーンの構成にも関わる運命力を蓄えている。」

「だが、生物が摂取する際に手に入るのは魔力だけ。」

「だけども、食べ方を工夫したら運命力も手に入るんじゃないかと思ってる。」

彼はそう言ってキャンパスに自分の思う間を書き記した。

僕はなにやらすごいことに巻き込まれそうな気がしたが期待で胸が躍った。

今回から続き物の話です。

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