ワイルドスピード
オアシスにいる間に全て食料を使い切る、という暴挙にでた僕たちは、砂漠をさまよっていた。
「暑いな……。」
ミカエルは汗を布切れで拭くと息を大きく吸った。
その後大きく息を吐き溜め息のように聞こえたのがますます気を滅入らせた。
「まぁ……楽しかったし良かったんじゃないかなぁ。」
今度ばかりは自分の破天荒スタイルも考えものである。
「こうなればヤケになるしかなさそうですね。」
ポピーはそう言って立ち止まった。
「ヤケにはもうなってるけども。」
僕ははそのまま歩いて言った。
「変化魔法……ご存知ですか! 」
ポピーは足で砂をカシカシと鳴らした。
「なんて言ってるの?」
ミカエルは言った。
「変化魔法とかいうの知ってるかって」
僕は言った。
「私はさまざまな所を旅して恐るべき能力を手に入れてしまったのです。」
ポピーはそう言って力を込めた。
「なんと私ロバなのに魔法使えるんですよ。」
ポピーはそう言った。
「頭がついに……、おおポピエニション! しかし私の前にはもうまともな頭を持ったポピエニションはいない! 」
僕は冗談交じりに言った。
「あなたの方が頭参ってますよ! 魔法の世界にいなかったデンバーさんには、わからないかもしれませんが魔法を使えばこの状況を打破できるかも。」
ポピーは言った。
「なるほど! 最初からそれをなぜ使わなかった!」
僕は言った。
暑くて耳が垂れてしまった。
「何か方法があるのか? 」
一人置いていかれているミカエルは頭を掻きながら言った。
「ですが、もし失敗したら足手まといが増えることになります。」
ポピーはそう言った。
「魔法を使うらしい、失敗したら色々めでたくなるそうだが試してみよう。」
僕はそうミカエルに言った。
「やってくれー! 」
ミカエルはそう言ってその場に座り込んだ。
「パイポパイポ、ホウレンソウ、ナナクサガユ、アサガオノタネ!! 」
ポピーの詠唱してる呪文に出てくる言葉は酷かった。
「これは呪文? 」
僕はそう言った。
「キエーー!! 」
ポピーは叫んだ。
周りには煙が俟った。
「こっこれは……」
ミカエルはその場で涙をこぼした。
「なんという……作品! 」
僕もその素晴らしさに唸った。
目の前には名匠が造ったと思えるような非情に造型の良い馬の彫刻が合った。
そしてその彫刻が喋りだした。
「魔法をしようと思った結果がこれだよ! 」
彫刻は逆切れすると地面をばんばん蹴った。
「まぁポピー、これは良い作品だよ。」
僕はフォローした。
「というかロバが馬になってどうするの?」
ミカエルは言った。
「ウサギウマとも呼ばれているロバは、ウマ科ウマ属ではありますがロバ亜属に所属するのです。」
彫刻のポピーは答えた。
「ウマの中では賢く力強い! ウマの中でも優れた私がこんな普通のウマになるなんて耐えられない! 」
ポピーは答えた。
「すまん凡犬である私は、お前が馬になって大地を駆け巡るつもりかと。」
僕は答えた。
まぁ考えてみたらロバである時点で乗れそうなものだ。
でもきっとこいつにその体力は無いだろうなぁ。
僕は心の中でそう思った。
「よくわからないけど馬で思い出したけど、ロバって乗れたんじゃ。」
ミカエルは言った。
ポピーはそれを聞いてしばらく動揺していた。
「乗る!? 何に!? 私はドラゴンに変身できてないですよ!? 」
どうやらポピーは自分が荷物運びしかしてないので、乗せるという発想はなかったのであった。
「よくよく考えたらポピーのままでも乗れたじゃん! まぁいいや! 乗せてくれポピー。」
僕はポピーのリードを引っ張って言った。
「ひえ!? 私はロバなので人なんか乗せれ! あっそっか馬の彫刻ですよね。」
やっと理解したのかポピーはミカエルに持ち上げられた僕を乗せてくれた。
ミカエルも続けて乗った。
「さていきま……ひょえええええ!! 」
ポピーは叫んだ。
「僕は彫刻だから無理です! 」
ポピーは叫んだ。
「いや無理なのはお前が決めることじゃないだろう、ポピー、暑さでおかしくなったのはわかるが、もう話をややこしくはしたくない。」
僕はそう言った。
話の流れがよくわからなくなってるのは、きっと暑さのせいだろう。
「ゴーゴー! 」
ミカエルは言った。
するとポピーは大地を駆けていった。
「うおー! はやーい! 」
僕はそう叫んだ。
雄たけびもあげてみた。
「疲れを感じない! これが私の魔法の力ですね! 」
ポピーは機嫌よく叫んだ。
「いやーよかったよかった。」
一時はどうなることかと思ったが、よく分からない魔法の暴発で助かった。
そしてドラゴ山の目の前の竜の城下町に着いた。
「はやかったなー。」
ミカエルは満足気な表情で軽々とポピーから降りた。
僕も飛び降りるとポピーが叫んだ。
「疲れが一気に! 」
周りに煙が舞い元のロバの姿に戻ると、ポピーはこう言ってすぐ眠り込んだ。
「足手まといが確かに一匹増えたな。」
僕はそう呟くと、ミカエルと僕は、近くの宿屋までポピーを運んだ。
「あっ違うんです、これ生きてるから売り物じゃないんです、100gで50ボトム? いいですってだめだめ。」
僕たちは何度もそのやりとりをしたのは、今ではいい思い出だ。
もちろん本気ではないが彼は、その話を聞いた後、怒ったのはいうまでもない。