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勇者はいぬ  作者: 圧倒的……負け犬!!
デンバーと吟遊詩人編
2/14

思いつきいぬ 行動しいぬ 奇跡おこりいぬ


僕たちは旅に出るために、話し合った。

「思うんだが、こんな家もう俺には必要ないね! 」

ミカエルは胸を張ってそう言った。

「売るのか。」

僕は言った。

「そうだ! 50ヘッドで買取してくれるらしい。」

ミカエルの言葉のテンションから察するに、相当条件は良いと思った。

そして僕たちは半日家の売却手続きをした上で、荷物をまとめて飛び出した。

50ヘッドのうちの20ヘッドは荷物運び用のロバに使った。

「旅の始まりだ。 」

ミカエルは哀愁漂う表情でリュートを弾き始めた。

「ところでこのロバを見るとなぜかわからないが、リードを引っ張りたくなるな」

そう言って僕はロバのリードを引っ張った。

「こっちは常にリュートが弾けて万歳だけど? 」

ミカエルは横目で見てきた。

「そうだなぁ」

僕はロバのリードを引っ張りながら進んだ。

「まさか犬にリードを引っ張られる日が来るとは……」

ロバはそう呟いた。

もちろんミカエルには解らない言葉だった。

「不服ならミカエルにやらせてもいいぞ。」

僕は寛大な処置を考えた。

「いや別に変わんないですけど。」

ロバはそう言ってよたよた歩いた。

道中やせ細ったローブを来た老人を見つけた。

「よければ……何か物を恵んでくれんかの……。」

するとミカエルは1ヘッドを渡そうとした。

もちろん大金だがミカエルは旅の始まりに、善行を積んでおいても、損はないと思ったのだ。

「身に着けてるの以外全部あげるよ」

僕はそう言い放った。

ミカエルはその言葉に驚きつつも彼もまたうなずいた。

「なんと……、欲の無い方々じゃ……。」

そう言って老人はミカエルに1粒の大きな種を渡した。

「これは精霊の種じゃ……、お守りとして持っていたが御主等に渡すためにワシは拾ったのかも知れぬ。」

老人はそう言うとどこかへ去った。

不思議な出来事だったが起こるべくして起こったことで、何も含みはなさそうであった。

「よくわからないが、デンバーお前はすごい考えの持ち主だ」

リュートを弾きながらミカエルは言った。

「賛同するとは思わなかったが、旅に荷物は必要ない、ついでに全部あげるって勇者と冒険の香りがするだろう? 」

僕はそう言った。

「確かに不思議な種が手に入ったな。」

ミカエルは僕の口にくわえさせた。

「丁度いいサイズなので遊ぶのにいい」

僕は道中暇なので種を口に入れて遊んだ。

ロバがいなくなったのでくわえるものが無くなっていたのだ。

次の村に着くと貧困で困った農夫達がいた。

「大変だな……、作物が全部枯れている」

ミカエルはそう言って枯れた植物を摘んだ。

「ここは肥料を」

そろそろ僕はそういう時間なのだ。

ミカエルは凝視してきたので正気を疑った。

「さてデンバーこの村を助けてみないか?」

ミカエルはそう言った。

「いいだろう。」

僕も彼の肝っ玉に負けないように乗っかった。

「旅人の方ですか……、この村には何も在りませんがごゆっくり。」

今にも押しつぶされそうな貧困の状態でも、村人は旅人にはそれなりの礼儀を、払ってくれた。

「農業のプロとかを連れてくればいいんじゃないか?」

ミカエルはそう言った。

「確かに・・・、そうなれば大きな街に行くべきだろう。」

僕はそう言った。

「この村の人達に少し歌を捧げよう。」

ミカエルは食堂に行くとポケットに入った酒の小瓶を取り出しおもむろに飲んだ。

そしてリュートを手に持ち詞の本のページをめくった。

「思う気持ちあれば、人は思われる、優しさの花は、気づけば見える、さぁ咲かそう、気づきの花を」

ミカエルの演奏はその後もいくらか続いた。

村の人々は貧困して困っていたがやはり笑顔は忘れてはいない。

その間僕はミカエルの歌は、ちょっと聞き飽きていたので外へ出た。

すると一人の少女が農作業をしていた。

「ふーむ、勤勉だなぁ……村の為に頑張っている訳か。」

デンバーは村で食料が取れなくなった時一人で狩りをした。

今思えばきっと危険な事だっただろう。

だがデンバーには少女の気持ちは理解できた。

「よし励ましてやろう。」

僕はのしのし歩き少女に近づいた。

「やぁ。」

少女は喋る犬に驚くも挨拶を返した。

「勤勉だなぁ。」

国の中の種をもごもごさせながら僕は言った。

「いえ……みんな頑張ってるので、というか何食べてるんですか?」

少女は聞いてきた。

「ああ……、これはまぁ遊んでるんだよ」

僕は答えた。

しかし種を転がしながら喋ると言うのはなかなか難しいもので口から落ちてしまった。

「いけね。」

僕はすぐさまくわえようとした。

こういう時には鼻に土が付くのだがしょうがない。

だが種は拾う暇もなく根が延びて芽が出た。

そしてどんどん葉が増え茎が大きくなっていった。

「何この種!?」

少女は驚いた。

「あ~これはなんか貰ったから僕もよくは知らない。」

僕は目の前の光景を眺めていた。

木はみるみる成長し、大木となった。

そして大木が現れるとそれは喋り始めた。

「お主が私を復活させたのか、感謝しよう」

それに対し僕は言った。

「それはいいんだけど、この村の作物が育たないんだけどどうすればいいと思う? 」

僕は聞いた。

木の精霊なら解るはずだ。

「ああそれなら私がなんとかできるぞ」

そう言って大木は力を入れると村の枯れた作物は一気に育ち実を付けた。

「じゃあこれでいいか」

木の精霊は眠りに付いた。

「よく分からないけど良かったじゃん! 」

僕はそう言って食堂に戻った。

「みんな、作物は育つようになったよ大木のおかげだ。」

僕はそう言うとミカエルのズボンを引っ張った。

「さぁ次の街に行こう、目的は達成だ」

僕たちは歩き始めた。

「何したんだ? 」

ミカエルは頭をかきながら問いかけた。

「種を落としたら何故かああなった。」

僕の知っている事実はこれまでだった。

「種を食べて運ぶ虫みたいだな。」

ミカエルはそう言ってリュートを弾きながら歩いた。



とつぎーの

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