友人よ永遠に
別に誰も死にません
近くの牧場の鶏の声が聞こえた。
朝を運んできたその声で目覚めた僕は、ミカエルのベッドの布にのしかかってミカエルを起こした。
出発の合図に気付いたのかミカエルは足早に支度をして代金を払うと外の井戸から水を汲んで顔を洗った。
「さぁて、いくか。」
少し早いがポピーも僕は吠えて起こした。
「ああ、デンバーさん、どうも。」
ポピーは、僕からのささやかなプレゼントを気に入ったようだ。
「どうかね、これは特殊なルートでしか手に入らない上質なものだ。」
僕は言った。
「なるほどですねぇ、確かにおいしいですよ。」
起きるなりもぐもぐ食べだしたポピーを見て僕はロバののんびりさに驚かされた。
「食事の途中で寝たのか? 」
僕は尋ねた。
「あっはい。」
そう言って続きを食べる彼の食事を終るまでじっと見ていた。
「ヘッヘッヘッヘ。」
そんな僕の息の音に少し気を散らせながらも淡々と食べていた。
「さて、何か運ぶんでしたっけ? 」
ポピーはそういうと体を震わせた。
「ああそうなんだ、肉を10kg程運んでもらう。」
僕はそう言った。
ポピーも準備はできてるのか体を休め始めた。
僕は、昨晩宿屋に肉を預けてもらっていたことをミカエルに伝えミカエルに運ばせた。
「よいしょっ。」
ポピーの背中には大きな肉の入った袋が括り付けられた。
「交渉材料としては申し分なさすぎるよな。」
僕は言った。
「ああ、いけるよ。」
ミカエルはそう言って空を見た。
「まだちょっと早いか? 」
それもそうなので僕は例の研究者のところへ行くことにした。
トントン。
僕は前足で叩いた。
「どうも、ってデンバーか。」
そう言った彼の名前は、レグルス。
もちろん前に知り合った研究者だ。
「マンドラゴラはどうだい? 君の体には荷が重すぎる仕事だろうが。」
彼は微笑した。
「ああ、それについては問題ない、戦いもなくマンドラゴラは綺麗なまま持ち帰れるだろう。」
僕は言った。
「じゃあその段取りで。」
そういって彼はドアを閉めようとしたが僕が頭を突っ込んだ。
「なっなにかな。」
レグルスは言った。
「昼にはちと早い、少し時間をつぶさせろ。」
そのあとマンドラゴラやこの世界の魔力についての知識を少し深めた。
「まず、魔力ってのは僕たちの体の中の魂が保有できる未知の力だ、簡単に言えば世界に命令を送れる信号エネルギーに近い。」
彼の説明は、おおよそわかりやすく番人受けであった。
彼が新米とは思えないから、きっと彼は説明に関しても長けているのだろう。
「じゃあ、もうこんな時間だ、仕事にいかないといけないだろう? 」
そういって僕の肩をたたいた。
「ああそうだな、僕は仕事に行ってくる、山までね。」
そういって僕はレグルスの家から出た。
そして宿屋に、ミカエル、僕、ポピーの3人で集まるとゴブリンの村に繰り出した。
ゴブリンの村の前で待っているとドラムが気付いたのかこちらへやってきた。
「たくさんの報酬だな、よし快く引き受けるぞ。」
そういってドラムは、村の倉庫に袋を運ばせた。
「ここの竜の山は、魔物が多いが、俺がついていれば問題ない。」
魔物はドラムが事前に伝えたのか静かにしていた。
ドラムの案内は、言葉足らずだったので、道中木に引っ掛かったり、虫がついたり大変ではあったがおおよそ、山の中部まで来るとマンドラゴラの気配がした。
「ここらへんだろう。」
僕たちのいる場所から、竜の城下町を見ると、大きな竜の城が僕たちの立ってる地点くらいの高さがあった。
城下町の人が米粒に見えた。
僕たちは山の中部でマンドラゴラの群生地帯を見つけた。
僕とミカエルはそれを4本程取り籠に入れた。
「さて、目標は達成したから帰ろう。」
僕たちは思いがけない程うまく言った旅に不思議さを感じた。
だがこれも僕の念入りな根回しのおかげだろう。
ゴブリンを仲間にすることがここまで心強いとは思わなかったが。
帰り道は、下にある城下町や森が下るほど現実味を帯びていくようで面白かった。
すると竜がばさばさこちらに飛んできたのである。
「お前ら、何をしている。」
どうやらここの番人のようだ。
「案内をしている、マンドラゴラ4本程しかとってない。」
ドラムは物怖じせず答えた。
「ふむ、ならよい、だがお主等最近竜の姫に何かあったか知らないか? 」
竜は言った。
「竜の姫っていうと、竜の城の姫だよな、知らないな。」
ミカエルは言った。
「僕は初耳だが何かあるなら調べてきてもいい。」
僕は言った。
「お前、なんでも首つっこむんだな。」
ドラムは呆れていた。
「ていうか4本なら僕が運ばなくてもいいんじゃないですかね。」
ポピーは言った。
「お前と一緒に旅をしたいんだよ。」
僕は言った。
「その言い方はずるいですね。」
ポピーはまんざら嫌でもない顔をして帰り道を歩いて行った。
旅は、ハプニングのないものだったが、竜の山の神秘的な光景は見ていて飽きなかった。
僕たちはゴブリンの村まで戻るとドラムに別れを言った。
「楽しい旅だった。」
そういうとドラムも手を振った。
僕たちは、全員種族は違うけどみんなどこかが似ている。
きっとどこかぶっ飛んでいてそこが面白い。
僕たちのようなはぐれ者は、感動の話は作らないかもしれない。
だけど言える。
僕たちの生き方はとても楽しい。
僕はマンドラゴラをレグルスへ届けた。
「うーん、確かにいいよ! 」
レグルスは、嬉しそうな表情をしてマンドラゴラの皮を鋭利な刃物で切っていった。
「よし……見えるか?、この薄い皮の中身が実だ、そしてこの実に穴が開くとルーンの力は抜けていく。」
彼は自身の研究について語り始めた。
「だけど、この状態で丸のみしたらどうだ?、なんてこんな大きなやつ現実味ないか、なら別の方法を思いついてる、これにストローをさして飲めばルーンの力が手に入るはずだ。」
そういって彼はデンバーに木の実を近づけた。
「覚悟はいいか? 」
彼は言った。
「いいぞ。」
僕はストローを使う覚悟をした。
難しいが負けるわけにはいかない。
僕は口の形を一生懸命変えた。
するとそれを見たレグルスはストローを刺した。
勢いよく僕は、木の実の汁を吸い始めた。
そしてその光景が20分続いた。
「疲れた。」
僕はストローで吸うのをやめていった。
「もう十分だ、マンドラゴラの水分のあった空間にエネルギーが流れそれが水分に混じった、それは君を取り込んだ。」
そして彼は言った。
「これで君の中でルーンの残量が増えたから、何か獲得できたはずだ。」
レグルスのその答えはいささか曖昧すぎるものだった。
「何かねぇ、紙で試してみますか。」
僕はそう言った。
「その通り! 」
彼は紙をまた僕の口に突っ込んだ。
「もがもが。」
彼は紙を取り出すと驚いた。
「おおっ! これは、占いのルーン! 」
彼は紙を見せた。
「おおよそ、勇者とは違うがうれしいな。」
僕はそう言った。
「さて、残りは研究に使わせてもらうよ。」
彼は言った。
「お前が全部使えばいんじゃないのか? 」
僕は言った。
「研究者は、娯楽でやってんだよ、最強の力で賢くなってもしょうがないだろう。」
彼はそう言ってマンドラゴラを得体のしれない液体に突っ込んだ。
液体は紫色の煙をあげた。
「ほげええええ」
彼の叫び声と共に爆発が起きたのは今ではいい思い出だ。