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躍動編

(前回までのあらすじ)

 タカシは、高校に入学して初めての夏休みを楽しみにしていた。ネットワークゲームで知り合ったハンドルネーム「ぽぽろん」という女の子とリアルで合う約束をしていたからだ。

 しかし、期末テストの英語の点数は散々。結局、追試が決定。しかも、クラス一番勉強ができるが性格がねじ曲ってヒステリックなカヨコから、強制的に補講を受けることになってしまった。

 翌朝、日課の早朝ジョギングで不思議な老人と出会い赤い半透明の円盤を手にする。その円盤は運命の赤い糸ならぬロープが見える代物だったのだ。タカシは、自分のロープをたどって見たが無残にもぶっつり切れていてショックをうけた。意気消沈して学校でクラスメートをすかして見てみると、みんなロープが切れておりその切り口が少しづつ紡がれていることがわかり、このロープはどんどん成長することがわかって一安心。

 タカシは、カヨコとは小学校からの幼馴染だが、小学校5年生の頃カヨコのじいちゃんが亡くなってからというもの勉強一筋となり性格がガラリと変わってしまった。カヨコの補講では、最初の30分は、いかに自分が頭がよいかを自慢し、自分が補講してあげていることに感謝しなさいとの上から目線。タカシもそんな彼女の態度に耐えたが、ついにはブチ切れ喧嘩となった挙句、彼女を泣かせてしまう。

 翌朝のジョギングでも例の老人に会い、例のロープを伸ばし運命の人との出会いう方法について教えてもらった。それは「日頃から自分に素直になることを心がける」ことだった。タカシはカヨコとの喧嘩を少し大人気なかったと彼女の自宅まで謝罪のため訪れることにした。

 そこでカヨコの妹のサヨコから、おじいちゃんの葬式以後笑ったことのないカヨコが、タカシに補講することが楽しみだとニコニコしている話を聞く。タカシは、カヨコに部屋のドア越しに、少し言い過ぎたと喧嘩の件を謝罪すると同時に、カヨコとの初めて出会った時の事にも感謝した。カヨコはそんなタカシの言葉に心を動かされ、すっかり仲直りすることができた。追試までのラストスパートで着実にタカシの学力は向上をみせた。

 追試の結果は、信じられないほどの高得点。やっとの事で楽しい夏休みを迎えることができる。そして、追試決定から厳しい補講の件で、心のよりどころとなってくれた「ぽぽろん」との出会いを楽しみにしていたが、なんとカヨコの妹のサヨコであることがわかった。

 そして、夏休みには、3人で出かける約束をしたのだった。

赤いロープと夏休み(2)躍動編  トラキチ3


【2稿】20140222

【初稿】20140216


 ピピピ……目覚まし時計が部屋に響く。

 俺は、手探りで時計を探すとアラームを切った。いつもだと、このタイミングで親が部屋の扉をドンドンと叩いてくる。しかし、今朝は静かだ。

「夏休みかぁ、いいなぁ」

 俺は一人、ベットの中で笑みをうかべ、久々の開放感を感じていた。すでに窓のカーテンのすきまから部屋に暑い陽ざしがさしこみ、蝉の鳴き声が聞こえてきた。

「なんともいえない、この満足感、もう一眠りしよう……」

 目を閉じて、全身の力をぬいてベットに体を沈めた。


「タカシ! おきたの?」

 突如、部屋の扉をドンドン叩く音が聞こえた。

「なんだよ、今日は夏休みなんだから」

「あんた、月曜日に友達と図書館いくとかいってなかった?」

「あ……そうだ、忘れてた!」

 俺は、あわてて飛び起きた。時計を掴むと文字盤をみる。まだ9時だ。

「今日は、カヨコと図書館で待ち合わせしてるんだった」

 遅れたら何を言われるか、たまったもんじゃない。人の揚げ足をとることだけは天才だ。ネチネチ言われてはかなわない。

 俺は、急いで部屋から飛び出すと、シャワーを浴びた。

「なんとかなるか……、ご飯食べて9時半に出れば……」


~~


 先週の金曜日は終業式だった。

 蒸し暑い講堂に生徒が集められ、式典がおこなわれる。長い校長先生の話にウンザリしていると、なにやら列の前のほうでドサっと音が聞こた。

「なんだ?」

 列の前のほうを覗き込むと、担任のゴジラ(イワモト先生)が、女生徒抱えて列の後ろのほうへやってくる。どうやら、倒れたのはカヨコらしい。

「おい、ヤマモト、スギモトを保健室に連れて行け」

「お、俺ですか?」

「お前、保健委員だったろう?」

「ソウデシタッケ?」

 俺は、シラをきったが、ゴジラの眉間にシワがよるのがみえた。

「わ、わかりましたよ」


 チラリとカヨコの様子をみてみると、顔は真っ青でマジ具合が悪そうだ。

 俺はため息をつくと、カヨコの手を取って講堂の外へでた。

「だいじょうぶか」

 カヨコは、俺の顔をみると驚いた表情をして、俺から離れようとしたが、フラフラして俺の腕に寄りかかってきた。

「少し止まって休んでいく?」

「だ、だいじょうぶ、こんなの平気だから……」

 カヨコは、口では強がりをいっていたが、一人立っているのもやっとのようだ。

「そんなことより早く、保健室につれていきなさいよ」

「なんだよ、人が心配してやってるのに」

 俺がカヨコを支えると、突然、カヨコが俺に倒れ掛かかってきたかとおもうと意識がなくなってしまった。

「マジかよ」

 俺は、カヨコをお姫様抱っこすると保健室まで急いで運んだ。

「こいつ意外に重いな……」


 なんとか保健室へやってくると、保健担当の先生がカヨコを診て笑っていた。どうやら、単なる寝不足と女性特有の状況が重なったらしい。しばらく、保健室のベットで眠れば回復するとのことだった。

「なんですか? 女性特有の? って」

「男の子にはわからないものよ」

「はぁ」

 結局、うやむやにされてしまったが、俺は、役目を終えてホッとした。


 その後、講堂にもどったがその後も30分程度は終業式は続いていた。

 やっとのことで終業式を終えて、クラスへもどると、保健室で寝ているはずのカヨコの姿があった。

「あれ? 保健室で寝てたんじゃないのか?」

 俺が心配して声をかけると、髪の毛をサラリと掻き揚げて、言い放った。

「別に、たいしたことじゃないし」

「ああ、そうかよ」

 本当に頭にくる。人が心配してやさしい言葉をかけても感謝のかけらも感じられない。夏休み前の補講での一件で、俺的には、小学校のころの明るいカヨコを感じていたのに、まったく残念だ。


 担任のゴジラが、夏休みの注意点をアレコレ説明していた。そして、各教科からの宿題一覧がプリントで渡され、あちこちからため息が聞こえた。

 ホームルームも終わり、俺も帰ろうと立ち上がると、カヨコが呼び止めた。

「タカシ……」

「うん?」

「ちょっと話があるんだけど……残ってくれない?」

「俺にか?」

「いいでしょ?」

「まぁ、いいけど」

 珍しく、弱々しいカヨコに、俺は逆らえなかった。


「おい! タカシ、いっしょにかえろうぜ、上手いホットドッグ屋が商店街にオープンしたらしいぜ」

「わりぃ、今日は、用事があるから、またな!」

「そっか、じゃぁな! 夏休み、遊びすぎるなよ!」

「おまえもなー、じゃな!」

 クラスの男友達からの誘いは、魅力的だったが、チラリとカヨコをみると、悲しそうな目で見つめられると断ざるをえなかった。

 結局、カヨコと俺の二人だけがガランとした教室に残った。


「で? 話って?」

「タカシ、お願いがあるんだけど」

「なんだよ」

「この参考書、一緒に家まではこんでくれない?」

 そういうと、カバンを指差した。

「はぁ? なにかとおもえば、荷物運びかよ」

 俺はため息をついた。

「この間、補講してあげたじゃないの、そのくらいしてくれたっていいじゃない」

 まぁ、確かに、補講をしてくれたことには感謝してるし、それに、体調が悪いんじゃしかたない。

「わかったよ」

 そういうと俺はカヨコの参考書のはいったカバンを持った。

「おもっ、おまえ、いつもこんなのもって歩いてるのかよ」

「当然よ、男のクセにだらしないわね」

 口では強がりをいっているが、なんとなくいつもの暴言も声がにキレがない。

「まぁいいか」


~~


 カヨコの家までカバンを運んだ。玄関を入ってカバンをおろしたが、肩が痛い。よくもこんなに重い本を毎日運んでるもんだと改めて関心してしまった。

 カヨコは、フラフラしながらも叫んだ。

「はい、タカシ、荷物運んでくれてありがと、じゃ、もう帰っていいから」

 そう言い放つと、振り返ることすらなく、家の奥へ消えてしまった。

「なんだよ、俺は、おまえの召使かなにかか?」

 俺は、呆れて玄関を出ようとすると背後から声がした。

「あ、タカシにーちゃん!」

「あ、サヨコちゃん!」

「あれ、ねーちゃん、なんか顔色悪いけど」

「今日、終業式で倒れちゃってさ、なんでも寝不足で女性特有のなんからしいぞ」

「ああ、そうだったんだ。いつもすみません。」

「いや、サヨコちゃんが謝らなくてもいいことだし……」

「あ、よかったら、ちょっと冷たい麦茶でもどうですか」

 そういうとスリッパを出してくれた。

 しかし、姉妹でこうも性格が違うとはどういうことなんだ。昔は、カヨコもサヨコちゃんぐらい素直だったのに……。

 まぁ、そんなことを考えてもしかたがない。俺は、麦茶をいただくことにした。


 よく冷えた麦茶に口をつけると、ネットのチャットで「ぽぽろん」に話すのと同じように愚痴をぶちまけた。

 就業式のこと、保健室へのこと、荷物のこと、玄関での召使扱いのこと……。するとサヨコはクスクスと笑った。

「え? なんかおかしい?」

「あのね、昨日、ねーちゃんの寝不足の理由、知ってるんだ」

「へぇ?」

「ほら、夏休みに3人ででかけるって話をしたじゃない、その話、昨日ねーちゃんに話したんだよ」

 急に、サヨコが小声でヒソヒソと話をしはじめた。

「そしたら、ねーちゃん、すごい興奮しちゃってさ」

「なんで、興奮するんだ?」

「まぁ、あれは、いわゆる『恋』だね」

 俺は、サヨコちゃんをみつめて呆然とした。

「恋って?……まさか、相手って俺とか?」

「鈍いなぁ、タカシにーちゃん」

「ないないないない、ぜったいありえねー、今日の態度にしたってそうだけよ、ヒトをカチンとさせることしか言わないぞ」

「うーん、表現がへたっぴなだけだとおもうんだけど」

「いや、表現がどうのこうのってレベルじゃないから」

 サヨコはクスクス笑いながら、カレンダーを指差した。

「むふふ、まぁいいや、ともかく早く3人ででかける計画を立てようよ」

「そうだな」

「えっと、ねーちゃんの予定はすでに聞いてあるんだけど、やっぱり、土日は混むから、月曜日はどうかなぁ?」

「いいよ、じゃ、今度の月曜日だな」

 サヨコは、ニコニコしながら、カレンダーに大きく丸印をつけた。

「でもどこにいく? プールとか? 遊園地?」

「あ、わたし、夕方くらいまで外に出れないかもしれないから、タカシにーちゃんは、ねーちゃんとデートしてて! あとで合流するから」

「デ、デート!?」

 俺は、思わずのけぞってしまった。

「デートっていうんでしょ? 好きなもの同士が一緒に街中歩くの」

「ちょっと、まてまてまて、いや、好きなもの同士……って、俺とカヨコはそんな仲じゃないし」

「だから、ねーちゃんは、タカシにーちゃんに『恋』してるって! さっきも言ったけど、タカシにーちゃんの話になるとベットの上で転げまわってウザイもん」

「はぁ?」

 到底信じられない話だ。あのカヨコが、そんな子供じみたことをするだろうか……。

「そういえば、タカシにーちゃんも、この間うちに来たとき、ねーちゃんに告白してたじゃない」

「告白? してない! してない!……あれは、昔、俺のことをかばってくれたカヨコに感謝しただけだし、その頃のカヨコに戻ってくれたら嬉しいってことだし」

「ふーん、でも、昔のねーちゃんに戻ってくれたら、好きってことでしょ?」

「好きとか嫌いじゃなくて、昔のカヨコでいてほしいってことだよ」

 サヨコは、ジロジロ俺を見つめて、クスクス笑った。

「まぁいっか! ともかく、月曜日、ねーちゃんのことよろしくお願いね!」

「それじゃ、夕方合流したら映画でも見に行こうよ」

「うん! ちゃんと予定は立ててあるから! お楽しみに!」

「なんだ? 予定って?」

 俺は、麦茶を飲みほし、カヨコの家をでた。


 カヨコとデート?……想像もできない。第一、今のカヨコは、俺のことをそんな風に思っているとはおもえない。だか、万が一、そんな風に思ってくれているなら、俺はどうすればいいんだ。デートなんてしたことないし、カヨコを喜ばせることなんてできるだろうか……。


~~


 月曜日朝6時。カヨコは目が覚めた。すでに窓の外から明るい陽が差し込んでいる。朝のうちは、まだ涼しいけれど、日中は日差しが強くなりそうだ。

 今日は、タカシと会う約束の日。もともとサヨコがタカシと会うのを約束していたみたいだけど、サヨコの話では、タカシが追試の件でいろいろお礼をしたいから、ぜひにということだった。

「ちょっと! ねーちゃん、テキパキやらないと遅れちゃうよ!」

 サヨコがドアをドンドンと叩いている。

「わかったわよ! もう起きてるからだいじょうぶ!」

 サヨコがドアをあけると、大声をはりあげた。

「なに! その髪型。ちゃんとしないと!」

「え? 別にいつもとおなじよ!」

「あのねー。学校行くときとはちがうでしょ、ちゃんと身支度しないとタカシにーちゃんに嫌われちゃうよ」

「別に、嫌われてもかまわないし、そんなことはどーでもいいし」

 サヨコは、ドアにもたれると、疑いのまなざしでカヨコのことを見つめている。

「もしもーし、誰だっけ? タカシにーちゃんとでかける話がでたとき、ベットの上で転げまわってニタニタしてたの」

「あんた、うるさいよ!」

 そういうとマクラをサヨコに投げたが、サヨコはサッと交わして舌をだした。

「わかりやすい性格! ともかく、学校とか学習塾とかに行く格好じゃだめだからね」

「え、学校の制服じゃだめなの?」

「ダメにきまってるでしょ! もっとちゃんと個性をだしていかなくちゃ!」

 個性……。カヨコは、小学校の頃までは、親が用意してくれる洋服を着ているだけだったし、中学生になっても学校も学習塾も制服のまま。友達と洋服を見に行くこともまったくないし、洋服を買うといったら、ネット通販で部屋着のジャージを買う程度だ。

「サヨコどうしよう、私、着ていくものない……」

「ふふふ、そんなことだろうからと、ちょっと用意しておいたんだ! コレ」

 サヨコが白いワンピースを取り出した。

「どうしたの? これ?」

「えへへ、自分用に買っておいたんだけど、特別に貸してあげる! この帽子もセットなんだ」

「うーん私らしくなくない? それにサヨコはどうすんのよ?」

「うふふ、いいから、着てみてよ! 夕方映画を見に行くときに合流するよ、私のはちゃんと用意してあるからだいじょうぶ!」

 カヨコは、ワンピースを合わせて姿見をみてみた。

「うー、はずかしいかも……」

「そうかなぁ、いい感じだよ! 似合ってる!」

 そういうと、サヨコがカヨコの髪の毛にブラシをいれはじめた。

「ねーちゃんはいいよね。この黒髪いつもツヤツヤしてるのに、ちゃんと手入してればもっとキレイになるのに」

「いいわよ、髪の毛くらいちゃんと自分でやるから」

「だめだめ、ねーちゃんは乱暴だから、ブラッシングはやさしくやらないと」

 サヨコは、ブラシをしたあと髪の毛を編み始めた。

「いつもボサボサのロングだから、少し編みこんでアップにしてイメージ変えてこうよ」

「ちょっと、まってよ! その前にシャワー浴びたいんだけど」

「あ、そうだね。無駄毛の処理もちゃんとしといてよ」

「無駄毛? 見えないからいいじゃない」

「わかってないなぁ、ちょっとぉ、そういう問題じゃないってば!」

 カヨコは、シャワーを浴び、サヨコに言われたように無駄毛処理もほどこし、結局、朝ごはんを食べ終わったのが7時半。

「それじゃ、髪の毛アレンジしちゃおうよ!」

「まだ、時間あるじゃない……」

「まだまだ、やることあるんだから……お弁当もつくらなくちゃいけないし!」

「え? そんなのいいよ!」

「ま、いいから、座って」

 サヨコは、手馴れた仕草で髪の毛にブラシを通し、ツインテールにするとそれぞれをツイスト編みにしてまとめ、髪留めで仕上げた。

「こんなもんかな、じゃ、つぎメイクね」

「え? メイクもするの? 今までしたことないし」

「リップとチークをちょっと足して、それから今日はメガネ禁止でコンタクトレンズだからね!」

「っていうか、サヨコなんでそんなに詳しいの?」

「え? 女の子の常識でしょ、雑誌とか読んでいろいろ試してみてるし!」

「ふーん」

 明るめのリップにチークをのせると、カヨコの顔がグッと明るくなった。

「ツケマツゲもしてく?」

「やめてー、私自身が誰だかわかんなくなるもの」


 準備ができたところで、サンドウィッチを作り始めたのが8時半。9時半には家をでないと間に合わない。

「でも、なんで、こんなことまでしなくちゃいけないの」

 カヨコが、サヨコに話をすると、サヨコはサンドウィッチを紙袋に詰めながら口を開いた。

「ねーちゃんの一番を見せて上げる相手なんでしょ!」

「べ、別にそんなことする相手というわけでもないし……」

 カヨコの目が泳いでいるのをサヨコは見逃さない。

「まぁ、いいや、じゃぁ、タカシにーちゃんを驚かすつもりでいいじゃない!」

「それはいいかもね!」

 まぁ、たしかに、タカシがびっくりする姿をみるのも悪くはないけど、そのあとの展開が続くのだろうか。どうもこの格好では頭も働かない気がするカヨコであった。

「ちょっと、ねーちゃん! いつもの黒のローファーなんかはいていかないでよ!」

「え? だってビーチサンダルってわけにはいかないでしょ」

「うーん、まだ白いスニーカーを履いていくほうが無難かなぁ」

「ワンピースにスニーカー? でいいの?」

「とりあえず、時間もないから、今日はそれで行ってみようよ、はやく!」


 なんだかんだいって結局、家を出たのは9時半になってしまった。

 ワンピースのヒラヒラ感が、なんとも恥ずかしい限りだし、幅広の白い帽子も私らしくない。でも、せっかくサヨコが準備してくれたんだし、タカシが驚く姿もみてみたいというのも本音。

 図書館のロビーに入ってみると館内の冷房がキツイ。それにしてもロビーを通る男の人の視線が気になって仕方がない。

「やっぱり、私、おかしな格好しているのかなぁ」

カヨコは、不安になってサンドウィッチのはいった紙袋を握り締めた。ちらっと外を見るとタカシが時計を気にしながら図書館に入ってくる姿が見えた。


~~


「間に合った」

 俺は、時計が10時キッカリに図書館の扉をくぐった。

 急いでロビーをみまわすと、白いワンピースの少女が、心細そうに俺のことを見つめていた。

「カ、カヨコ?」

 俺は、白いワンピースの少女に釘付けになった。

「カヨコなのか?」

「ふん、笑いたければ笑えば、いいじゃない」

 そういうと、カヨコは真っ赤な顔をして横を向いた。

「お、おどろいたよ、別人みたいだ、すごい可愛い……」

「え……」

 カヨコは、おどろいた顔でタカシを見たが、眉間にシワをよせた。

「バカにして……」

 正直びっくりするぐらい自然に「可愛い」という言葉が口から出たことに俺はおどろいた。今、目の前にいるのが、いつも机にかじりついて勉強ばかりしているメガネ女子のカヨコとは全くの別物だ。いつもは黒髪をバサバサさせ、青白い顔をで、メガネをいじりながらきつい目つきをしているのに、今目の前にいるカヨコは、まるでどこかのお嬢様のようだ。

「ご、ごめん、俺、鼻血でそうな気分だ」

「はぁ? なに言ってんの」

 ロビーにいたほかの男たちからの視線が俺に突き刺さって痛い。なんで、俺がこんな目にあわなくてはならないんだ。

「ともかく、図書館をでよう」

「そうね、私、冷房って苦手だし、でも、この格好おかしいいよね」

 カヨコはヒラヒラのワンピースを左右に振りながらうつむいた。

「そんな事ないって」

「だって、みんなが、ジロジロ私のことをみるから、ちょっとおかしな格好なのかとおもってたのよ」

「そりゃ、可愛い女の子が、さびしそうに一人で立ってれば、みんな気にするって」

「また、バカにして!」

 そういうと、カヨコが俺の腕をバシっと叩いた。


~~


 俺は、カヨコと一緒に図書館を出た。急に日差しが強くなり、カヨコは幅広の帽子をかぶって俺の横を一緒に歩いた。ところが、どうもいつもと様子がちがう。いつもなら、大きなカバンにあの重い参考書をたくさんつめてセカセカ歩くカヨコだが、今日はなぜかとってもおしとやかだ。

 しかし、ドキドキするこの感覚はなんなんだ。俺がチラリとカヨコを見ると、カヨコはあわてて目線をずらすし、カヨコの横顔を見ると、緊張して言葉も出ない。

 すでに10分間。ただただ図書館の周りの公園を黙々と散策しつづけている。

「もう、ダメ……」

 突然、カヨコが叫んだ。

「私もう耐えられない!」

 そういうと、綺麗にセットしていた髪の毛をほどいてしまった。

「なんで、私がこんな緊張しなくちゃいけないのよ!」

「え、カヨコ、ドキドキしてたのか?」

「べ、別に……ただ、このワンピースに悪いとおもって」

「ワンピース?」

「だって、私、こんなワンピース着たことないもの、ワンピースに失礼よ」

「じゃ、どうして着てきたんだよ」

「それは……ま、どうでもいいじゃない! そんなこと!」

 どうも良くわからない。まぁ、いつもカヨコの言動にはツッコミどころ満載なのだが、こじれると大変なことになりそうなので深くは追求しないことにした。

 カヨコは、俺のほうを指差し話し始めた。

「だいたいタカシが、補講のお礼をしてくれるって言うから来てあげたんじゃない!」

「ああ……そうだった」

 サヨコが、デートなんて言うからすっかり忘れていた。

「あらためて……」

 俺は、カヨコをじっと見つめて静かに話した。

「補講してくれたのは、本当に助かったよ、おかげで少しだけ、英語も好きになったし、感謝してるよ、ありがとな!」

「う……ん、まぁ、わかってればいいけど……」

 カヨコは、急にモジモジしながら紙袋の口を丸めては伸ばしている。

「あのさ、さっきから気になってたんだけど、その紙袋なんだ?」

「こ、これは……お昼のサンドイッチ……」

 カヨコは、ハッとして口をつぐんだ。

「え! カヨコおまえサンドイッチつくってきたの? っていうか、俺に?」

 カヨコは、思いっきり目をつぶりしゃがみこんだ。

「あああ、私何やってるの、なんでサンドイッチなんて、朝早くから作って持ってきたんだろう」

「おい、今日のおまえ、話していることと行動が一致してないぞ」

「わかってるわよ、そんなこと!」

 カヨコは、すくっと立ち上がると、無表情な顔で、俺の胸に紙袋を押し付けた。

「作ってきたんだから! あんた! 食べなさい!」

「おいおい、いくらなんでもそんな言い方はないだろう?」

「いいわよ、食べないならこんなもん捨てちゃうから」

「どうして、そうなるんだよ!」

 ついつい俺も大きな声をあげ、袋を持ったカヨコの腕を押さえた。

 カヨコがビクっとして俺を見つめた。そして、目には涙をためていた。

「カヨコ……」

 俺は、自分でも驚いたが、いきなりカヨコを抱きしめてしまった。どうもカヨコの涙をみるといてもたってもいられなくなってしまう。

「え……」

 カヨコは突然のことで驚き、両手で俺の腕から逃げようともがいた。

「ストップ! カヨコ、ありがとな! ちゃんと食べるよ」

 そうカヨコの耳もとでつぶやくと、カヨコはヘナヘナと身体の力がぬけてしまった。俺はあわてて、彼女を支えるとベンチに腰をおろした。

「タカシ……ごめんね、私、どうして、いつも、こんな言い方しかできないんだろう……」

「まぁ、気にするなって、それがカヨコなんだし……いっしょにサンドイッチ食べようよ」


 ベンチで二人に座り、赤と白のチェックのナプキンの包みを開くと、カヨコの顔が真っ赤になった。

「私の愛を食べてください(ハート)」

 というメモが入っていたのだ。これには俺も吹いてしまった。

「もう! サ、サヨコ……やったわね」

 カヨコは、メモを捻り潰すとポケットにしまいこんだ。


~~


 サンドイッチを食べ終え、夕方、サヨコと合流して映画を見るまでどうしようかということになった。

「なぁ、カヨコ、今日は、いつもとは違うキャラになりきってみないか」

「ちがうキャラ?」

「しゃべり方とか行動とかさ、別人になりきってみるってことだよ」

「うーん、まぁ、私のワンピース自体、いつもの自分じゃないから、コスプレみたいだけどね」

「そうそう、もちろん、お互いそれを承知でやてみようよ」

「笑ったりバカにしたりしない?」

「しないしない、逆に、そっちもするなよな」

「うん、わかった」

 すると、カヨコは、急にニコニコ笑い始めた。

 俺も今までの自分とはちがうキャラクタに成りきってみることにした。


「あのさ、カヨコ! 博物館か水族館でもいく? それともショッピングモールをぶらついてみる?」

 ともかく、雑誌で集めたデートの知識を総動員し、雑誌のモデル風にニコニコしながら提案をしてみた。

「うーん。タカシ、それもいいけど、図書館で本を借りて読まない?」

「っておい、ぜんぜんキャラかわってないじゃないか」

「変えてるって、いつもだったら「図書館の自習室で勉強しない?」だもん」

「アア、ソウデスカ……ジャ、図書館ニイリビタリマスカ?」

「ごめん。私冷房が苦手だしぃ、できれば本を借りて、木陰で読みたいんだけど……どうかな」

「イイデスネ! ジャ、ソウシマショウ!」

 俺的には、もっと、真逆なキャラ設定で楽しみたかったのだが、カヨコでは無理そうなのであきらめた。まぁいいだろう。これでしばらくは緊張しなくてよさそうだ。

 ベンチから立ち上がると、カヨコは、白いワンピースをひるがえしニコニコしながら、いきなり、俺の腕に抱きついてきた。

「うぉ」

 俺はたじろいだが、カヨコはそんなことにはお構いなしで、俺の腕に絡みつきカラダを寄せてきた。

 彼女の黒髪がサラサラとカラダに振れるたびに、いい香りがしてクラクラしてしまった。

「こんな感じでいい? 別キャラだし!」

 カヨコは、意地悪そうに俺の顔を覗き込んでクスクス笑った。


 図書館にもどると、カヨコは分厚い小説を借り、俺は薄っぺらなSF小説短編集を借りた。冷房の効いた図書館から出るのは残念だが、冷房が苦手なカヨコは急いで図書館から抜け出していた。木陰のベンチに座ると案外心地がよい。カヨコは一心不乱に本を読み進めている。俺は、こんなデートってあるんだろうかと思いつつも本をめくった。

 夏の日差しを木陰がさえぎり、心地よい風が木々を揺らしている。しずかに目を閉じるとマブタに陽の光あたりユラユラと揺らめいている。そして、知らないうちにうたた寝をしてしまったようだ。


~~


 俺は、灼熱の太陽が照りつける中、長い登り坂をトボトボと歩いていた。汗はダラダラと流れ落ち、喉はカラカラだった。近くの森からは蝉のけたたましい鳴き声が聞こえてくる。だんだん目の前がかすみ、このまま歩いていては倒れてしまうとあたりを見まわした。

 すると大きな木の下に涼しそうな木陰がみえた。最後の力を振り絞りその木陰までやってくると、一人の真っ白なローブをまとった美しい女性が立っていた。俺に気がつくと女性は優しく俺の額に手を当てた。するとどうだろう、全身がみるみる冷え、汗がひいていくではないか。

 女性は微笑むと、額に当てていた手を外し、手を握り締め、ゆっくり手を開くと青い円盤があらわれた。

「よく聞け、若者よ、お前は赤きロープを知っているようじゃが、この青き鏡を持ってすれば赤きロープなど、いかようにも切り離すことができようぞ」

 そう言うと女性は青い円盤を俺のシャツの胸ポケットに押し込んできた。すると、胸ポケットの中がどんどん冷え、そこから、カラダがミシミシ音をたてながら凍っていくではないか。

「げっ」

 俺は必死に凍らないように体を擦ったが、もはや全身が凍ってしまい腕を動かすことさえ出来ない。そして意識がなくなっていった。


~~


「ちょっと! タカシ! タカシってば!」

 俺は驚いて飛び起きた。カヨコは呆れた顔をしてこちらを見ている。周りをみると太陽がだいぶ西に傾いていた。

「ごめん、俺、寝てた?」

「寝てた。しかもなんだかうなされてたよ。胸ポケットを掴んで苦しそうにうなっていたからどうしたんだろうと思って」

「そうだな、ごめんよ、変な夢見てたよ」

「綺麗な女性が出てきてさ……」

「はぁ? 綺麗な女性……エロい夢でも見てたんでしょ! やっぱり男子ってヘンタイだわ!」

「違うって! エロい夢じゃなくて、奇妙な話だったんだよ……俺が坂道を……」

 と夢の話をし始めたが、まるで興味がないのかカヨコは勢い良く立ち上がると図書館の方へツカツカと歩き始めてしまった。俺は、恐る恐る自分のシャツの胸ポケットを触ってみた。

「よかった、何もなかった」

 安心して立ち上があった瞬間、チャラリと音がした。なんと、夢で見た青い円盤がベンチの下に落ちたのだ。

「こ、これは、さっきの夢にでてきたあの青い円盤か」

 手にとって見ると、丁度赤い円盤と同じ大きさだったが、今回の青い円盤は半透明ではなく、片面が鏡のようだ。

「たしか、赤いロープを断ち切るといってたが……」


 突然、背後から声が聞こえた。

「お前、あやつにあったのだな」

 おどろいて後ろを振り向くと、ローブをまとった少年がたっていた。そのローブをよくみると朝のジョギングのときに出会った老人と同じデザインであることに気がついた。

「キミは、誰だ?」

「お前と前にであったときには老人の姿じゃったな。だが今はこの姿じゃ、まだ月が若いからのぉ」

 そういうと少年は西の空をみた。西の空に細い三日月が見える。

「その青い円盤は、取り扱いには充分注意するのじゃ、相当強烈なパワーを秘めているからな」

「赤いロープを断ち切れるといってたけど、断ち切るとどうなるんだ」

「ロープは断ち切れるが、一度断ち切るとその相手とは二度とつながることはない」

「なんで、そんなものが俺に託されるんだ」

「それは、いずれお前が必要になる宿命にあるからじゃろうて」

「宿命だって?」

 少年は、何か言いかけたが、ふっと消えてしまった。あわてて西の空をみてみると三日月は沈んでしまった。

 ともかく、俺は、ポケットに青い円盤もしまいこみ、カヨコの後を追うことにした。


「ちょっと、早くきなさいよ! タカシ」

遠くからカヨコの声がきこえた。

「ごめん! 映画はまだ間に合うだろう?」

俺はいそいで図書館で本を返すと、バスに飛び乗り、郊外にあるショッピングモールと映画館がある大きな施設に向かった。


~~


「おそい! おそい!」

 サヨコが待ち合わせの時計台の下で待っていた。彼女は、黒いワンピースに黒いデニムパンツと全身黒づくめだった。

「まだ時間あるじゃない、そんなに怒らなくてもいいでしょ」

 そうカヨコが言いながら、ハッとして俺の腕から離れた。

「あれれれ、ねーちゃんラブラブだね」

「ち、違うわよ」

「それじゃ、チケット買っておいたから入場するよ、もう始まるから!」

 そういうと、サヨコがチケットをヒラヒラさせている。俺にもホール13と書かれたチケットが渡された。チラリと映画館の上映スケジュールを見ると「黒の食卓」R指定という文字が見えた。なんとなく嫌な予感がした。


 ホールはすでに暗くなっており、カヨコ、俺、サヨコと3人並んで指定された席に座った。場内には、ほとんど人の姿がなく、後ろのほうにカップルが2,3組いるだけだ。

 映画がはじまると、さすがR指定のホラー映画だった。血潮が飛び散るような演出は一切ないのだが、深層心理に刻み込まれる恐怖を感じた。ざっとストーリーは、こんな話だった。


 森にハイキングに来ていた若者5人が、突然の落雷に、立ち入り禁止の立て札を無視して築200年のボロボロの石造りの洋館に迷い込む。天気はますます酷くなり、しばらく洋館に滞在することを決めた5人は、洋館のホコリだらけの食堂の中に異様なまでに黒く磨かれた食卓を発見する。不思議におもった5人は、手分けをして洋館を探検することにしたが、1人を残し4人が探検からもどってみると、食堂から良い匂いがしてくる。なんと食卓には美味そうな食事が用意されていたのだ。のこっていた1人の姿は消えていたが、疲れていた4人は、争うように料理を平らげると眠りにおちた。そして、目が覚めると最後まで食べていた1人がさらに消えていた。3人はその食卓の天板に消えた仲間の指輪が埋め込まれているを発見し、この食卓が人を飲み込んでは残された人間が好むものの幻影をみせているのだということに気づく。

 洋館からの脱出を試みる3人だったが、食卓が形状を変化し、脱出する若者を阻み、1人がつかまり飲み込まれていく隙に2人は洋館から抜け出した。

 しかし、洋館の外には、真新しい黒い食卓が、所狭しと置かれていたのだった。


 映画の最中、俺はチラリとカヨコをみると、カヨコは画面に釘付けで放心状態。ずっと俺の腕を握っている。一方のサヨコは、キャーキャーといいながら、俺の腕に抱きついていた。それはそれで俺的にはうれしいかぎりだが、カヨコがこの映画を選んだとはおもえない。となれば、映画が終わった時点でサヨコと喧嘩になることは必須だろう。

 どうやって、カヨコをなだめようかと、俺は映画どころではなかった。

 しかし、サヨコのほうがカヨコより胸が大きいのはびっくりしたが、これは秘密にしておこう。


 映画が終わり、場内が明るくなると、カヨコが掴んでいた俺の腕をあわてて離した。

「サイテーな映画ね、それに……」

 カヨコがキツイコメントをしてきた。これはまずい展開になりそうだ。

「派手さが足らないし、最後もちょっと消化不良だわ! もっとグロっぽくてもよかったのにね」

「へ?」

 意外だった、作品をコケにするのかと思ったら、冷静な映画解説者のようなコメントだ。

「へー、カヨコってこういうの好みなの?」

「別に、そういうわけじゃないけど、でもストーリー的にはそのほうが商業ベースにのるかなっておもっただけよ、こんなに入りが少ないんじゃ失敗作じゃないの」

 俺は、おまえは何様だ? とおもいっきり突っ込みをいれたかったがガマンした。

 一方、サヨコは、俺の腕をゆすりながら、うれしそうに話かけてきた。

「そっかなぁ、面白かったけど……、あの後どうなったのか気になるね」

「そうだな、ドキドキしたから、これはこれでいいかな」

「でしょ? でしょ?」

 サヨコは、スッキリした感じで座席から立ち上がると出口に向かって歩き始めた。

 俺も座席から立ちあがりホールを出ようとすると、カヨコが俺のシャツを引っ張った。

「うん?」

 俺が振り返ってみると、さっきまで映画をアレコレ批判していたときとはうって変わってカヨコが悲しそうな顔をしているではないか。

「どうした?」

 カヨコは小さな声で俺に言った。

「ゴメン、私、腰ぬけた……」

「なんだ!?」

 思わず笑ってしまいそうになったが、カヨコの困った顔を見ると今にも泣き出しそうだったので、あわてて手を差し出し、カヨコを座席から引っ張りあげた。カヨコは、映画がよほど怖かったのか、手のひらにじっとり汗をかいている。

「ほんと、カヨコは、素直じゃないなぁ」

「うるさいっ」

 そういいながらもカヨコは、俺の腕にすがりやっとのことで立ち上がり、一緒に場内を出た。


~~


 カヨコ達と別れて、家にもどると時計は夜の9時を回っていた。

 俺は、晩御飯を食べ、自分の部屋にもどり、PCを立ち上げてみると、めずらしく「ぽぽろん」が先にログインしていた。いつもは、俺がログインしてからでないと入ってこないのだが……。

「めずらしいね、先にログインしてるなんて」

「カヨコねーちゃんが、帰ってから大変なことになったので報告したくて!」

「え? なんかあったの?」

「家に帰ってから、最初は、テンションあがりっぱなしでウザイくらいタカシにーちゃんの話ばっかりしてたんだ」

「まぁ、よろこんでくれたなら、それはそれでいいけど」

「うん、私もよかったっておもってたんだけど、ついさっきから、急に暗くなっちゃって」

「え? なんで?」

「なんだか『どうしていつも素直なところを出せないのかなぁ』って自己嫌悪モードが発動しちゃったのよ」

「へ? べつに、いつもどおりでいいし、気にすることないのになぁ」

「でね、それならタカシにーちゃんに電話してみたらっていってみたんだけど」

「俺に?」

「そしたら、ねーちゃん泣き出しちゃって」

「なんで?」

「『そんな面倒な女は誰からも嫌われちゃう』っていう始末」

「サヨコちゃんも大変だね、俺は、カヨコのこと理解してるほうだとおもっていたんだけどなぁ、いつものことだし、気にもしてないって言っといてよ」

「うん。ともかく、ねーちゃんは、変なところでプライドが高いし……そういえば、来週から始まる夏期講習もトップの成績とらなくちゃってひとりハードル高くしてる感じだし、ちょっと心配」

「まぁ、目的意識っていうのかなぁ、それは高いほうがいいかもしれないけど、変に自分にストイックになりすぎても疲れちゃうだけだとおもうけどなぁ……」

「そうだ! タカシにーちゃんも夏期講習でカヨコねーちゃんのそういうところ矯正してよ!」

「うーん、親からは夏期講習へ行けとは言われてるけど、でも、カヨコは勉強のことになると性格がガラリとかわるから、下手なことするとやっかいなことになりそうな気がするんだけど」

 俺は、夏休み前のカヨコの補講を思い出した。ともかく、勉強のことになると、目つきがかわってビシビシきつい言葉を浴びせたおしてくる。あの時は、俺もさすがにキレた。

 ここ数日でなんとかカヨコの昔の面影がでてきたのに、へたすると逆戻りしそうな気がしてならない。

「タカシにーちゃん、おねがい! カヨコねーちゃんともデートできるし……」

「いやいや、デートというか、どちらかというと針のムシロ状態になりそうな予感なんだけどなぁ……うーん」

「私もできるだけ協力するよ、タカシにーちゃんしか、おねがいできないもん」

 俺は、深くため息をついた。

「わかったよ、でもあんまり期待しないでくれよ」

「やったー!」

 まぁ、いずれにせよ勉強はすることになるのだろうし、覚悟をきめて、翌朝、親に夏期講習の話をしてみた。もちろん、親は大いに喜んでくれた。

「あああ、俺の夏休みが、試練の時になるとは……」


~~


 夏期講習会までの間に、ともかく宿題をできるだけ片付けておくことにした。この先、何が起こるか予想ができない。最悪、俺も酷い精神状態になり、宿題どころでなくなる可能性もあるかもしれない。

 サヨコには、俺が夏期講習会に参加するかわりに、今回の夏期講習会には学校の制服では行かせないようにお願いをしておいた。カヨコは、制服を着ると鉄壁の布陣になることが容易に想像できるからだ。幸い、サヨコは、カヨコとほぼ体型も一緒(ただし胸はべつだが)なので、サヨコが、毎回カヨコに服をコーディネートすることを約束してもらった。

 まぁ、あの図書館であったワンピース姿のカヨコの姿にあえるとおもうと、夏季講習会に参加する楽しみも増えるというものだ。


 夏期講習会は、電車で15分の予備校が会場になっている。予備校そのものにあまり縁がない俺は、いくつもある教室を迷いながらも席についた。あたりを見回すと、みんなまじめそうなヤツラばかりで、ちょっと異様な感じもする。

「すみません、隣あいてますか?」

 突然、背後から爽やかな声がしたので振り向くと長身のイケメンが立っていた。綺麗に髪の毛は整い、白いポロシャツが爽やかだ。

「ああ、どうぞ」

 なんとなく他のヤツラとは違う、清潔感と人当たりの良さを感じたので、となりの席に置いていたカバンを机の下に押し込み、席を空けた。

「オレ、ウエハラマサキっていいます、この講習会ははじめてなんで」

「ああ、俺は、ヤマモトタカシ。俺もこの講習会ははじめてなんだ……」

 と挨拶を交わしていると、俺の視野にあの白いワンピースのカヨコの姿がはいってきた。

「あ、カヨコ……」

 俺が立ち上がると、カヨコがこちらに気がつきツカツカとやってきた。

「タカシ、本当に夏季講習会にきたんだ、やる気になったんだ」

 とまるで幼稚園児をあやすように頭をポンポン叩いた。

「あれ、スギモトさんちのお姉さんじゃないですか?」

 突然、隣のイケメンマサキがカヨコに声をかけた。

「あ、ウエハラさん!」

 カヨコは驚いた様子で、明らかに俺に話すのとは違うよそゆきな声を出した。どうやら、マサキのことを知っているらしい。

「あれ、知り合いなの?」

 俺がマサキとカヨコを交互に見ながら話すと、カヨコがマサキを紹介してくれた。

「えっとね、ウエハラさんは、サヨコの通っている道場の先輩なのよ」

「道場?」

「オレんち、剣道の道場やってて、サヨコちゃんが通ってくれているんですよ」

「サヨコちゃんって剣道やってるんだ、そういえばウエハラ道場って聞いたことがあるような」

 マサキは、爽やかにニッコリ微笑むと、ノートをカバンからとりだした。道場日誌とあり、試合の様子などが記録されている。そこから一枚の写真を取り出し見せてくれた。写真には数名の防具を身につけて正座している剣士が写っていた。そしてその剣士の中にサヨコの姿もあった。

「あの子、身体が弱くて、小学校のころから道場にかよってるのよ」

 そういいながら、カヨコは、マサキの隣に座った。


 講習会は、なんとも異様だった。独特の雰囲気というか、周りの連中は、みんな懸命にノートをとりながら講師の話をきいていたが、俺はさっぱり頭にはいらない。この状況が2週間も続くと思うとげっそりだ。


 講習会が終わり、マサキと別れるとカヨコが意地悪そうにこちらを見て言った。

「どう? 夏期講習会、出てみてよかったでしょう?」

「ま、まぁな……」

 カヨコから目をそらして受け答えると、カヨコが俺の顔を覗き込んでさらに言い放った。

「復習しておく? ビシビシ教えてあげてもいいけど」

「いや、遠慮します」

「ところで、タカシ……ちょっと聞きたいんだけど、サヨコになんか言わなかった? 夏期講習会の間、普段着たことない服着てみないってうるさくいわれたのよ、ほんと恥ずかしくてしょうがないわ」

 カヨコが少し照れながら話す。俺は、はじめて気が付いたような素振りで答えた。

「い、いいじゃないか、制服なんかよりもずっと明るくていい感じだよ」

 カヨコの顔が一瞬パッと明るくなったが、俺を睨んで指をさした。

「あやしい、やっぱり、タカシがサヨコにそうさせたんじゃないの?」

 俺は、一瞬たじろいでカヨコを直視できなかった。

「なるほどね、図星みたいね……」

「し、しらないよ、俺は……」

「まぁいいわ、この間のときにやってたコスプレごっこも、悪くはないしね」

 そういうと、カヨコは笑いだした。

 どうやら、前回の別キャラ設定というのはまんざらではなかったようだ。

「なぁ、カヨコ……」

「え? なに?」

「ごめん、やっぱり補講お願いしてもいいかな……実は、今日のところさっぱりわかんなかった」

 カヨコは、じっと俺を見ると嬉しそうにニッコリした。

「ふーん、やっぱりね、じゃ、うちでザッと復習しますかね」

 そう言いうとカヨコの目つきが変わった。両手をこねくり回しポキポキ指を鳴らしはじめた。

「補講だよな……」

「いや、復習……」

 さっきまでのニコニコしていたカヨコとはうって変わって、悪魔のような笑いに「復習」というフレーズが「復讐」と脳内変換している自分に俺は頭を抱えた。


~~


 カヨコはその次の日から、日替わりでいろんなワンピースやサマーセーターやらカラフルな装いを楽しんでいる。そのたびに、いちいち感想を述べなければならないのはつらい。ところが、マサキは、なんとも歯の浮くような賛美のセリフを毎朝カヨコにさらりと伝え、そしてカヨコの隣にニコニコしながら座わる。

 別段気にすることはないのだが、マサキとカヨコを見ていると、なんとなく俺の存在が二人からは消えてしまっているのではないかと思えることがある。しかも、そんな状態が続くと、無性にムカつく。昨日なんかは、マサキがカヨコに問題の解説をしたりして、カヨコもすっかりマサキと楽しいそうに話をして二人の世界になっている。もういい加減にしてくれと叫びそうになってしまった。

 しかし、なんで俺がムカつくんだ? 別にどうってことじゃない。俺にしてみれば学校で一人机にかじりついて黙々と勉強するカヨコの姿をみるよりは、小学校のころの明るいカヨコの姿、ニコニコ笑い、ワイワイ楽しく勉強する姿でいてくれればそれでいい。

 ともかくこの夏期講習会で、カヨコが俺が思っているとおりに変わってくれているのだから喜ぶべきことだ。楽しそうに会話が弾むカヨコとマサキの姿を見ては、自分に何度もそう言い聞かせた。

 しかし、連日、講習会後の2時間はカヨコの家で、厳しいスパルタ補講では、マサキと楽しそうに会話をするときのカヨコとは違い、夏休み前のあのヒステリックで暴言の嵐が吹き荒れるカヨコになる傾向が強い。何度かキレそうになったこともあったが、俺は、必死に耐え、我慢してきた。


 長かった夏季講習会も、いよいよ最終日となった。今日は午前中、最終チェックテストがある。まぁ、カヨコの補講のおかげでだいぶ講習会の内容もわかってきたし多少は自信がある。

 案の定、テストは手ごたえを感じることができた。試験はすぐに集計されて、昼過ぎには、掲示板に成績上位30位の成績一覧表が張り出された。

 カヨコは、成績一覧表の前で固まっていた。俺には関係がないとおもっていたが、あまりにカヨコが固まっていたので、のぞいてみた。すると、成績トップは、あのイケメンマサキではないか。そしてカヨコは、2位。さらに、なんとこの俺は奇跡的にぎりぎり30位にランクインされていた。

 そういえば、サヨコから「カヨコが夏期講習会で常にトップになる」と宣言していた話をを思い出した。実際2位ということで、ショックをうけているのかもしれない。何か声をかけなければ……と思ったが言葉がでてこない。

 カヨコは、俺に気が付くと、深くため息をついて俺をにらみつけた。

「タカシ、あなた、どーして10位以内にいないのよ」

「はい?」

「あれだけ、復習したのに、どうして?」

「俺的には30位なんて夢のようなランキングだよ、カヨコには感謝してるよ」

「ふん、もうちょっとキビシクしないとダメみたいね」

 カヨコは、そういうと俺の腕をギュッと掴んだ。

 そこへ、マサキがやってきた。するとカヨコは、俺の腕をはなすと、マサキに近づき「さすが、ウエハラさんすごいですねー」などと楽しそうに会話をしはじめた。


 俺は、今までになくムカついた。俺は、カヨコのペットか? 育成方法がちがったから成績があがらなかった? なんで、そんなんで俺が怒られなきゃならないんだ。頭にくる。カバンをとると成績一覧表から離れ、ジュースコーナーのベンチにカバンを無造作におくと、カバンから例の赤と青の円盤が床に落ちた。

「あ、すっかり忘れてた」

 爺さんにもらった赤い円盤。そして夢のなかで女性からもらった青い円盤。赤い円盤を透かしてみると、運命の赤い糸ならぬロープが見え、青い円盤では、それを切断することができるらしい。

 俺は、赤い円盤をすかしてカヨコを見てみた。すると、カヨコのロープは太くしかもそれは俺の足につながっている。

「え?」

 俺はなんども確かめた。なんだって、俺がカヨコとつながっているんだ?

 まぁ、たしかに、カヨコのことは気になる存在になっている。図書館でのカヨコ、夏期講習会でニコニコしているカヨコ、マサキと楽しそうに話をしているのにイラだっている俺……。

 だが、俺の運命の人なのか? いや、ペットのようにあしらわれる関係が、俺の運命なのか?

 俺は、赤い円盤を透かしながら青い円盤を見てみた。するとこの青い円盤は背面が凹面鏡になっていて光を一点に集めているのがわかる。おそらくこの光でロープを焼き切るということなのだろう。


 二つの円盤をカバンにしまうと俺は考えた。

 俺の素直な気持ちってどうなんだ。カヨコは、小学校のころやさしく接してくれて、俺が好意をよせた女の子だ。5年生になってカヨコが変わってしまい、そんなカヨコを俺は何もできずに、ただ見守るしかなかった。そして高校生。夏休み前の補講でカヨコに、俺の素直な気持ちをぶつけたときに、ちらりと昔のカヨコの笑顔が垣間見えれたときは、うれしかったのも事実だ。

 ところで、カヨコは、俺のことをどう思っているんだろう。サヨコちゃんは、俺に『恋』していると話をしていたが、夏期講習会では、明らかにマサキと俺では対応がちがう。自分でもこれだけはよくわからない。

 俺は、その答えを聞きたくて、どうにも自分を抑えられなくなった。もし、カヨコが俺をペットのようにしかみていないのなら、俺はそんな運命はお断りだ。それこそ、さっきの青い円盤で赤いロープなんかは焼き切ってしまいたい。むしろ、マサキとロープを結びつけてやりたいぐらいだ。


 心臓の鼓動が早くなる。カヨコは、あいかわらずマサキと成績一覧表の前でニコニコしながら話をしている。俺の視野はどんどん狭くなり、カヨコしか見えなくなっている。周りの音も聞こえず、ただただ心臓の鼓動だけが聞こえた。


 ドキン、ドキン……


 俺は立ち上がり、カヨコに近づくと彼女の腕を掴んだ。

 カヨコは、突然のことでびっくりした様子で俺のことをみている。

「な、なによ?」

 俺は息を胸いっぱいに吸い込むと、カヨコを睨みつけて大声を張り上げた。

「カヨコ、俺、お前のことが好きだ。俺と付き合ってくれ」

 成績一覧表の前にいた学生達が一斉に俺たちを見つめて、シーンと静まり返った。

 カヨコの顔が真っ赤になった。

「えっ」

「俺は、お前のことが好きだ。俺の彼女になってくれ」

 成績表の前の学生達は、一斉にカヨコのほうを見つめた。

「バ、バッカじゃないの……」

 カヨコは、そういうと廊下を走って出て行ってしまった。

 残った俺は、頭の中が真っ白になった。突然、周りの学生から、ため息と笑い声が、けたたましく聞こえてきた。俺はどうすることもできず、その場で固まってしまった。するとマサキが俺の腕を引っ張って人混みから連れ出してくれた。そして小声で俺につぶやいた。

「何やってるんだ、タカシくん、血迷ったのか?」

 あわてた様子のマサキがなんだか滑稽に見えたが、自分でもびっくりするくらいの虚無感に襲われていた。

「もういいさ」

 っていうか、何だってこんな場所でコクってるんだよ、こんなところじゃ誰だってまともに答えるヤツはいないって」

「もういいって……」

 マサキは、あきれた様子で俺の顔を覗き込んだ。

「ともかく、誰もいない二人っきりのときに、きちんと告白すべきだよ」

 そういうとマサキはニッコリ微笑んでオレの肩を叩いた。


 しばらく、オレはジュースコーナーのベンチに座り込んでいた。

「なにやってるんだ、俺」

 冷静に考えると、たしかにマサキの言うとおりだ。あんな人混みでなんだって告白したんだろう。自分でも恥ずかしくなってきた。

 大きくため息をついて、カバンを持つと予備校を出た。


 夕方というのにまだまだ暑い。西の空の太陽がオレンジ色に輝いている。一方、空には半月が高く登っていた。

 とぼとぼと駅前にやってくると、不意に背中を叩かれた。

 振り向くとローブをまとった怪しげなイケメン兄さんがたっていた。例の老人や少年とおなじローブだ。不思議なことにそんな目立つ格好をしているのに回りの人はまるで気づいていない様子だ。

「おぬし、ほんとうにおかしなヤツだな、まぁ素直すぎるのはいいんじゃが……」

 そういうとイケメン兄さんは両手の親指と人差し指をつけて丸く形を作った。

 その丸い形は光輝き、さきほど俺がカヨコに告白していたシーンを映し出した。

「おぬしは、自分のことしか考えておらんな、もっと彼女のことをよく考えられなかったのか?」

 そういうと、別のシーンに切り替わり、駅のホームでじっと階段の上をみあげているカヨコの姿がみえた。

「自分の価値観じゃなくて、彼女の価値観で考えるのじゃ、おぬしほどの若さで、運命のロープがあれほど強固につながっておるのは珍しいことなんじゃぞ」

 イケメン兄さんは、俺の額に手をあてるとなにやら呪文を唱えた。

「アドバイスをやろう。いいか、青い円盤は、お前のロープを切るためにあるんじゃない、彼女のロープを切るためにあることを忘れるな……いいか……」

 そういうと、イケメン兄さんは、突然、目の前から消えてしまった。俺は、あわてて空を見上げると、さっきまでの月が厚い雲に阻まれてしまっていた。

「俺の運命の赤いロープは切らずに、彼女のロープを切る? そんなことありえないだろう」

 俺は、おもわず、空にむかってつぶやいた。


 俺は改札口を抜けてホームへ降りると、さっきの怪しいイケメン兄さんがみせてくれたイメージと同じようにカヨコが待っていてくれた。

「ごめん、カヨコ、俺……」

 そういうと、カヨコが不機嫌そうに横を向いた。そして横を向いたままとつぜん話し始めた。

「私も、タカシのこと大好きだよ」

「え?」

「でも、付き合うとか、彼女とかって、今の私には考えられないのよ」

「どうして?」

「もっと勉強したいのよ……」

「そうなのか……」

 そういうとカヨコはうつむいてつぶやいた。

「でもね、すごく、うれしかったよ」

 俺は、突然、さっきまでの虚無感が、一気に満たされていくのを感じた。


 電車がホームにすべりこんでくると、カヨコは、ニコニコしながら、俺の腕に抱きつき、一緒に電車に乗り込んだ。


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