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鬼ごっこは命がけ  作者: 伊代
2章
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天使な悪魔

「あれ、おネエさん……? Hello!」

「おわぁっ!」


 ある日、朝一番の静かな図書館。

 あれでもないこれでもないと片っ端から本を探していたわたしは、背後からの明るいアルトの声に悲鳴をあげた。

 本棚の前でじっとしてる時ってすっごい無防備だし、集中してるから突然声を掛けられた時の驚きって半端じゃないよ!


 振り返ると、そこに居たのは尾丹山公園でパンをくれたあの美少年くんだ。

 大量の新聞を両手で胸の前に抱えてニコニコしている。

「エンジェルくん!? び、びっくりしたー!」

 わー、また会えるなんて思わなかった!

 こうして間近で見るとやっぱり可愛い。

 高い棚に囲われた薄暗い室内ではハチミツ色の髪が茶色っぽく見えるけど、薄手のチェックシャツに焦げ茶のベストが凄く似合ってて今日もおしゃれー!


「…………エンジェルって……ボクのこと?」

 エンジェルくんは急に眉をしかめて不機嫌そうに声を低くする。

 しまった、つい心の中で使っていた呼称を口にしてしまった―――。

「ご、ごめん! 君の名前知らないから、勝手にイメージで呼んじゃって……」

 謝ると眉間の皺は消えて、すぐに気を取り直したように笑顔が戻ってくれた。良かったぁ。


「ん……。そうだったネ、いいヨ。ボクは車尾焔星くずもえんせい

 あれ、意外。てっきり優雅で高貴な感じのカタカナな名前だと思ってた。

「焔星くんね。わたしは河原崎 葵、よろしくね。―――そんなにたくさんの新聞どうするの?」

 一番上の新聞にちらりと目をやると、地元発行の地方新聞のタイトルがある。

「この辺で起きた事件を色々調べてるんだヨ」

「へー、大変そう。宿題か何か?」

「ううん、ビジネスだよ。ボク社会人」

「ご、ごめん……」

 中高生かと思ってた事を正直に謝る。

 わたし自身も学生に間違えられる事が多いけど、自分と同じような境遇の人に初めて出会えたことでじわじわと親近感が湧いてくる。


「葵サンは何してるノ?」

―――う。それを聞いちゃいますか。

 実は、魑魅の事を調べに妖怪とか幽霊に関する資料を調べに来たんだけど……そのまま言うのはかなり気が引ける。

 ここは「ちょっと調べ物」で誤魔化しておこう。


「何を調べるノ? ボク、手伝ってあげるヨ」

「え!? だ、大丈夫だよ。わたしより焔星くんの方こそお仕事大変そうだし!」

「ボクのは急ぎじゃないからノープロブレムだヨ。で、何調べるのかな、葵サン―――?」

「!?!?!?!?」


 周囲の空気が一変した。

 ぴくり、頬の筋肉がひきつる。


 正直に言おう。

 怖いです。

 すごく。


 焔星くんは先程からずっと笑みを崩さないでいる。

 なのに、純白の天使の羽が生えていたはずの背中に今あるのは、漆黒の悪魔の翼。

 これは―――ブラックエンジェルのご光臨でしょうか……。

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