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鬼ごっこは命がけ  作者: 伊代
4章
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苦悩する首領

この話から4章に突入します。

空耶の視点となりますのでご注意ください。

 葵が魑魅憑き男に襲われた事件の後、俺は丸一日身動きが取れない状態に陥った。

 不覚にも背後からあのオカマに取り憑かれ、魂を吸われ掛けて危うく地獄へ逝ってしまうところだった。


 いつもいつも気色悪く絡んでくるあのオカマ―――瑠惟とか言ったか。人に取り憑く事を得意とするヒダル神としては、かなり上位のようだ。

 地上に属する魑魅が、何故地獄の鬼である車尾に従っているのか分からんが……次に会ったら絶対に殺ってやる……。



 ギリ、と歯噛みをした俺は、知らず周囲に不穏な気をまき散らしてしまったようだ。

 会社帰りのサラリーマン達が怯えたように俺を避けて通ってゆく。

 だがそれには構わず、俺は駅前のベンチに腰掛け更に一人思案する。


 俺を悩ませるもの、それはもちろんあのオカマ……ではないっ! 葵の事に決まっている!!

 というのも、あの日以来俺は葵に無視され続けているのだ。



 1日目深夜、葵の自宅を訪れた。チャイムを押し続けた俺は、顔も見せてもらえずインターフォン越しに五月蝿いと怒鳴られた。近所迷惑らしい。

 2日目昼頃、自転車を走らせる葵の横で駆けながら弁明を続けた俺は、「ウザい」という一言と共に股間に華麗な蹴りを喰らった。あれは見事だった。

 3日目夕方、ピザの配達員を装った。なんとか家に押し入り話をしようとした俺は、家宅侵入未遂だとかで警察に連行された。これは流石に凹んだ。


 もうどうしたら良いのか分からない。

 ただ俺は自分の気持ちを伝えたいだけなのだ―――葵の事が好きなのだと。



 思えば図書館の公園で、顔を寄せ合い話す葵と車尾を見て激情してしまったあの日からすれ違いばかりだ。

 葵と車尾の接触を知らなかった自分。

 俺の気持ちを知りながら他の男と親しげにする葵。

 葵に気安く接近する車尾。

 そのどれもが耐え難く、激しい嫉妬の怒りを抑える事が出来なかった。



 初めて欲しいと思った人間―――菊の時にも、確かに嫉妬は感じた。

 しかし相手の男と菊の仲睦まじい様子を目の当たりにして、こみ上げる苦く胸の痛みは自分の中で納める事が出来たのだ。

 遙か昔に自制出来た事だというのに、何故今になって制御不能になってしまったのか。


 人間に転生し続けて400年以上経つというのに、自分は成長するどころか退化しているようだ。子供のように激しい感情をどうしようもなく持て余している。

 それとも、これが人間というものなのだろうか……?

 もしそうだとしても、葵を諦める気はさらさらない。これだけは譲らん!

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