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鬼ごっこは命がけ  作者: 伊代
3章
18/32

思い出の山で

 翌朝。

 飲みつぶれた男性陣二人は昼まで寝ていたので、おばあちゃんの手伝いをして過ごした。

 平屋だけど広さだけはあるから掃除も大変。暑いのも手伝って朝から汗だく。

 あー、シャワー浴びたいぃぃー!

 けれどこの家にはそんなものはなくて庭で井戸水を汲み、それに足を浸して涼んでいるとばあちゃんが「ご苦労さん」とスイカを持ってきてくれた。

 わーい、これぞ日本の夏だね!


 昼過ぎ。

 ばあちゃんが醤油を切らしたというので、一人でお使いに出た。

 田舎だし人目も気にならないので、膝上丈のデニムパンツに黒いリブ素材のタンクトップ、それに薄手のパーカーを羽織って楽ちんスタイル。

 熱中症対策にシンプルなキャップも忘れずにね!

……ほら、男子中学生の出来上がり★



 畦道を下る。蝉の声が五月蠅い。

 駅前を通る。風鈴の音が風流だ。

 商店に着く。店先でカキ氷を食べた。

 さて、帰るか。


 …………あれ、何しに来たんだっけ?



 このまま帰っても時間を持て余すなーと、少し散歩をすることにした。

 ああ、ちゃんと醤油は思い出しましたよ!

 散歩と言っても、普通に歩くと暑いだけなので森林浴と決め込み山際へ移動する。

 山からは冷たい水が豊富に沸き出している。

 濃い木々に囲まれた水辺の涼しさはまさに楽園!

 アロマとかも良いけど、こういう自然の清々しい空気は本当に美味しくて癒されるんだよね。


「あっ、カニ」

 サワガニが穏やかな水流の中を歩いている。

 腰を落として手を伸ばしてみるが、呆気なく逃げられてしまった。


 子供の頃、夏休みになるとよくここで川遊びしたっけ。

 お母さんに「帰るわよ」って言われても「まだ遊ぶ」ってダダこねて泣いてた気がする。

 子供用の小さいバケツにサワガニいっぱい入れて「家に持って帰るんだ」って我が儘言ったり。

「懐かしいな……」

 ぼーっと感傷に浸っていたら、突然目の前が真っ暗。

 あれ、目眩かな? なんて思った瞬間、口を塞がれる。

 それから耳のすぐ横でパチパチという音がして、全身を強烈な痺れが襲った。




 最初に目に入ったのは蜘蛛の巣。

 それが視界いっぱいに広がっている。

 「蜘蛛の糸」というお話が頭をよぎって、ここは地獄だろうかと靄のかかった頭でボンヤリ思う。

(…………あれ?)

 他に何が見えるだろうかと、頭を動かそうとする意志に反して身体が命令を聞かない。

 手足も同様だ。まったく動かない。

 指先がピクリと微かに反応するのみ。

 仕方なく目線のみを動かして狭い範囲を見渡す。


 ヒビの入った窓ガラスの外は、茜色の空と新緑の山。

 サビだらけの鏡が傾いたドレッサー。

 6畳程度の狭い室内。

 照明は点いていない。

 寝かされているベッドからは埃とカビの臭い。

 虫の声がやたらと五月蠅い。

 狭い視覚・嗅覚・聴覚で得られる情報はこれだけ。

 それと、顔の下方に違和感がある。どうやら猿ぐつわをされているらしい。


 相手が人間か魑魅かは分からないが、誘拐されたと考えるのが妥当だ。

 夕焼け空だから、あれから2~3時間程経過している。

 荒れた室内の様子からして、昨晩話題になっていた廃館である可能性が考えられる。


 ともかくイヤな予感しかしない。逃げ出さなければ。

 けど、この動かない身体でどうすれば良いのか―――。

 それに身体だけではなく、元々回転の鈍い頭が一段ともたついている。

 痺れと関係しているのだろうけども、何かしら策を練らなければと必死になっているところに、足音と人の話し声が聞こえてきた。

 くぐもってはいるが、奇妙に高い男性の声だ。

 段々と近付いてくる。


「ああ、気付いた?」

すっかり忘れられた存在のエロオヤジはもう少しお待ちを><

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