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優しさ

〈晒されて結構寒い冬の東風(こち) 涙次〉



【ⅰ】


秩父の「猫nekoふれ愛ハウス」店長・岩坂十諺から、カンテラに連絡があつた。時軸麻之介から欠勤断りの打診はないか、と云ふ。カンテラは時軸が欠勤してゐる事は知らなかつた。岩坂「さうか... ぢやあやつぱり無断欠勤か... 彼は*『ふれ愛ハウス』スーパーヴァイザーと云ふ要職にありながら、勝手に休みを取つてゐる。由々しき事です。前回の猫逹の抗爭騒ぎは、鰐革Jr.の呪ひのせゐだと分かりましたが(其処ら邊はテオが調べを付けた)、彼の術なしでは、いつ『キッド』と『黑髭』の兩派閥がまた諍ひを起こすとも知れない。宜しくご裁断を」との事。



* 當該シリーズ第186話參照。



【ⅱ】


-「と云ふ話なんだが、じろさんだう思ふ?」-じろさん「やはり、ルシフェルを仲間に引き入れた事が、尾を引いてるんぢやないかな」-カンテラ「實は俺もそれは考へたんだ。麻は心身症なんぢやないかつてね」-「奴はルシフェルにはアンビヴァレントな氣持ちを抱いてゐる。樂しかつた靑春時代を* ルシフェルの時計係として過ごしたが、蓋を開けてみればルシフェルは奴の唯一の肉親である**『母ちやん』の仇」-「だがね、*** 復讐は一度してゐるんだよ」-「『和合空間』と云ふ術を使つてね。然もルシフェル退治は拳銃で、だつたよね」-「さう云へばさうだつた」-「男だつたら、特に母親の仇討ちと云ふ重要な案件は、術頼り・道具頼りなんかぢやなく、拔き身でぶすり、と。自分で手を下さないと」-「やつぱりさうかあ」



* 當該シリーズ第34・35話參照。

** 當該シリーズ第154話參照。

*** 當該シリーズ第155話參照。



【ⅲ】


其処で、カンテラ、墓の下のルシフェル(前回參照)に問うてみた。「あんた、麻にもう一度仇討ちの機會を與へる氣はある?」-「儂なら構はぬよ」-とルシフェル、意外に簡單にその提案を受け容れた。「だうせ一度は死んだ身だ。一味の役に立つなら、もう一度殺されるのなど、容易い事だ」



※※※※


〈信號機故障か電車停まりたり俺一人烟を吐く線路際 平手みき〉



【ⅳ】


カンテラは時軸と連絡を取つた。スマホでは返事がないので、マンションの家電に掛けた。「麻、何をくよくよしてゐる? ルシフェルはきみの復讐をもう一度、甘んじて受ける、と云つてゐるぞ」-「本當ですか!?」時軸はともすれば憂鬱に沈み勝ちな心を自ら叱咤激励して、さう答へたのだ。



【ⅴ】


カンテラ・じろさんはルシフェルの墓を暴いた。そして遺された骨を一つ殘さず拾ひ上げた。「さ、こゝから先はあんたの仕事だ、ルシフェルよ」-ルシフェルは彼に殘された妖力を振り絞り、だうにか自分の骨を人間(彼の場合は【魔】)の形に組み上げた。ルシフェル「これで良いのか?」-カンテラ「上出來だ」



【ⅵ】


そしてカンテラは、時軸に、自分の大小の傳・鉄燦の内、短刀を手渡した。時軸はぶるぶる震へてゐた。今、彼の心を、様々なシーンが去來してゐる筈だつた。「さ、麻之介、何処からでも突いて來るがよい」とルシフェル。躊躇ひ- じろさん「行くんだ、麻!」。だが、時軸にはそれはだうしても出來ない事だつた。彼は、それをするには、優し過ぎたのだ。



【ⅶ】


時軸「駄目だ。躰が動かない」-まるで彼の術・「和合空間」だ。結局、ルシフェルは地底に戻り、時軸はカンテラの*「秘術・雜想刈り」を受ける事となつた。カンテラ、大刀を拔き放ち、まづは靑眼に構へ、それから時軸の頭上を水平に薙ぎ拂つた。「しええええええいつ!!」-これで、時軸のルシフェルに對するネガティヴな氣持ちは消えた...


「今どんな氣分だい、麻?」-「はい。すつきりしました。無断欠勤、已めます」



* 前シリーズ第74話參照。



【ⅷ】


後でルシフェルが云ふに、時計、それも彼が生前愛した振り子時計が、彼の水晶玉と共に埋葬されてゐた、らしい。時軸の優しさは本物だ、と云ふ事、これでお分かり頂けたと思ふ。



※※※※


〈暖房が待つ部屋近し3時半 涙次〉



で、この時軸麻之介の、再度の復讐譚はこれで終はり。綺麗さつぱり片が付いた、と云ふ譯でもなからうが、取り敢へずの事は、皆、した。カンテラもじろさんも、そして時軸もルシフェルも。ぢや、また。アデュー。


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