episode3:目が覚めたら虫でした
ああああだれかっ誰かたすけてええっ!!
俺は叫びながら草をかき分け一心不乱に走った。
一瞬でも脚を止めることはできない。
うしろからおびただしい数のカサカサ音が聞こえるからだ。
俺の人生にモテ期が来たのはこれが初めてかもしれない。虫にモテたかったわけではないのだが。
それも自分の身長ほどもある緑色の虫にだ。
しかし、やつら俺が草の中に隠れても余裕で見つけてくる。
どうやって感知してるんだ?
幸運なことにやつらは足が遅いらしく、どうにか撒くことができた。
しばらく全力疾走で走ると、動物の足跡と草が湿っている場所を見つけた。
近くに川か池がある?喉も乾いたし、後ろから追ってきてる気配もないから探してみるか。
辺りを散策していると探していた池が見つかった。綺麗ではないが、まあまあ大きな池だ。息切れをしていた俺は水を飲み休憩することにした。
しかし、走っていて気が付いたが、ここはなにもかもがでかい。不思議だ。
さらに見たことのない植物や、ヌメヌメした動物、発光する動物などもいた。
木々は高く生い茂っていて、まさに樹海という言葉がふさわしかった。
俺がイメージする樹海と違うのは木の太さだ。ここの木は見たことのないほど太い。
強い日光が葉の間からこぼれ出ており、神秘的だった。
俺は異世界にでも迷いこんでしまったのだろうか…。いや、確実に異世界だろ。あんなクソデカ虫とか見たことないぞ?
ふと、水を飲みながら揺れる水面に映る自分を見た。
ん…?
むむむ?
は?
「グギャっ!」
俺は悲鳴を上げた。水面には先ほど撒いたはずの緑色の虫がいた。おれはビビりすぎて失禁した。
ビチョジョジョ
いつからだ?いつからそこにいたっ
おしっこを漏らしていることにすら注意をむけず周囲を見渡す。しかし、何も見当たらない。
もう一度水面を見る。たしかに緑色のなにかがいた。
先ほどは、俺を追いかけてきたクソデカ虫かとおもったが、そうではない。
似ているが違う。
不思議なことにあいつらには目がなかった。そして足は蟻に似ていた。
対して水面にうつるものには適当に取り付けたような眼球があり、足も爬虫類のようだ。そして何より衝撃を受けたのはでかい頭だ。
総合的に見れば爬虫類にも見えなくはないが、両方にある背中に生えたトンボのような羽が虫っぽさを際立たせてしまう。
これは、もしかして俺なのか?
これまで妙に頭が重かったり、体の様子が変だったりしたことにつじつまが合っていく。
もしかして、俺、虫に転生しちゃった?
俺はショックすぎてその場で意識を失った。




