【備忘録】ルーカスの訓練日誌
記録者:ルーカス
日付:焔月の中弦第17日(午前)
訓練形式:
特別学級内・模擬戦形式による実地訓練(実戦想定・符術使用可)
対戦順:エミリア → アストリッド → エリク
使用武器:制式槍(訓練用)
負傷なし、装備破損なし
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一戦目:対 エミリア
相手は正面突破型の剣士。剣の重さ、踏み込みの深さ、そして戦意の強さが特徴。
初手から一気に距離を詰めてきたため、迎撃ではなく一度引いて態勢を整える選択を取る。
攻防の中で、途中から攻め筋が変化した。剣の軌道がやや流麗に、あるいは緩急が加わる形に変わった。
以前は直線的な重さで押し切ってくる印象だったが、今回の変化は確実に読みを外しにきていた。
対応としては、相手の変化を感じた時点で“あえて”回避を選択肢に加えることで剣筋の軌道を探ることにした。
剣の重みで体勢を崩させるタイプの一撃には、柄による制圧で対処。
接近を許しても力で押し返すだけの余力はあり、最終的には間合いを取り直して突きで制した。
所感:
単純な力勝負であれば、こちらが優位。ただし、剣の変化は気づかなければ危険だった。
相手の成長に対して「これまで通り」を貫くのは危うい。常に“変化”を読むこと。
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二戦目:対 アストリッド
初手から投擲。真正面からの近接ではなく、遠中距離での揺さぶりを主体とした戦法。
ナイフによる対角からの投擲を回避後、接近戦に移行。動きは軽く、ナイフから短剣、そして再投擲と連続攻撃の構成が巧みだった。
斬撃・投擲を連ねる動きには迷いがなく、狙いも正確。中でも、三撃目の短剣は本当に危険だった。
咄嗟の判断と反射でなんとか弾いたが、あと半歩遅れていれば試合が終わっていた。
ただし、全体としては“打ち込み”が足りない。詰めはするが、最後の一手が浅い。
そのため、攻勢を受けながらも体勢を保ち、逆に踏み込みで一気に制圧する展開を選べた。
最後は喉元で突きを止め、制止。勝利。
所感:
彼女の動きは鋭いし、軽い。だが、それゆえに“重さ”が足りない。
こちらの疲労も進んでいたが、捌いて反撃に移るには十分な余力を残していた。
反射と読み、どちらも求められる戦いだった。
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三戦目:対 エリク
初手から三段突きを選択。しかし踏み込みにわずかな遅れ。
相手にそれを見抜かれ、攻守が目まぐるしく入れ替わる展開となった。
エリクは中間距離での剣技と、符術による一手を絡める戦術。
符術は風を用いた簡易的な衝撃波。槍の突きの軌道をわずかに逸らす形で使われ、三撃目の連携を阻害された。
本来ならばそこで詰められていたが、石突による反撃で再び主導権を奪取。
最終的には間合いを保ったまま、眉間への制止突きで勝利。
所感:
符術の使用に際して、動作が見えた。間合いを詰めた際の構えも高く、踏み込みが浅い。
だが、それでも読みと判断の精度は高い。危険な攻め筋だった。
符術を絡めた攻撃を仕掛けてくる者が今後増える可能性がある。読みと構えの修正を訓練項目に加えるべき。
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総評・自己評価:
三戦すべてに勝利。ただし、完全な内容ではない。
•エミリア戦では攻め筋の変化に対応できたことが成果。
•アストリッド戦では疲労の中でも反射と読みで捌ききった判断が良かった。
•エリク戦では符術を絡めた攻撃に対して、破綻はせずに対応できた点は評価できる。
だが、どの戦いにも共通して疲労の影響が出ていた。
特に後半になるにつれ、初動の遅れや筋の緩みがわずかにだが確実に現れていた。
三戦で学んだのは、自分の限界と、継戦力の計測。それと同時に、崩れかける自分を“読みと反射”で繋いだこと。
慢心はしない。だが、自信は持っていい内容だった。
次に備えるべきは、疲労時の初動の安定化と変則攻撃への反応強化。
訓練項目に反映し、継続する。
──記録終了。