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【備忘録】用水路の調査報告書

今は教室となっている王城の一室。

机の上には紙が広げられ、アルフレッドは羽ペンを手に唸っていた。


「……うーん」


用水路の水量低下の原因調査。

実習として命じられた仕事ではあったが、きちんとした報告書の提出も条件に含まれている。


とはいえ、戦闘や魔術の訓練と違い、こうした文書作成はあまり慣れていない。


向かいの椅子では、エリクが腕を組んで座っていた。


「まだ書いてるのか」


「書いてるよ。君も同行者なんだから、少しくらい手伝ってくれてもいいんじゃない?」


「んー……面倒くさい……」


少し考えてから答えるエリクに、アルフレッドは小さくため息をついた。


それでもペンは止めない。


東の穀倉地帯で起きた、小さな水路のトラブル。

森の奥で見つけたのは、思いがけない原因だった。


アルフレッドは紙の上に題名を書き込む。


「用水路閉塞の原因調査および対処報告」


こうして、今回の実習の記録がまとめられていくことになった。

用水路閉塞の原因調査および対処報告


提出者:アルフレッド

同行者:エリク

提出先:エリーナ教官



要旨


王都東部農地において用水路の水量減少が確認されたため、上流の水源付近の調査を行った。その結果、水源近くに形成された森トカゲの集団営巣が水路を部分的に閉塞していることが判明した。営巣構造の一部を除去することで水流は回復した。巣内部には卵が確認されたため完全除去は行わず、今後の再確認が必要と考えられる。



1. 調査目的


農地用水路の水量低下の原因を特定し、必要に応じて流路の回復措置を行う。



2. 調査地点


王都東部農地用水路上流部。

森林内の湧水を水源とする地点。


当該地域は通常人の往来が少なく、地面は湿潤で足場が不安定である。



3. 観察結果


3.1 水流の状況


湧水自体は正常に流出していたが、水路上に枝・草・落ち葉などが堆積しており、水流が大きく阻害されていた。


堆積物は自然堆積とは考えにくく、一定の構造性を持っていた。


3.2 生物痕跡


周囲の泥地に三本爪の小型足跡が多数確認された。

また、枝葉の堆積構造は森トカゲの営巣習性と一致する。


3.3 個体の確認


現地にて複数の森トカゲを確認した。

体長は概ねウサギ程度であり、特別に大型の個体は見られなかった。


人間への攻撃性は高くはないが、接近時には威嚇行動を取る。


3.4 卵の存在


営巣構造の内部に複数の卵を確認した。

森トカゲは集団営巣する例が知られており、本件もそれに該当すると考えられる。



4. 原因の推定


森トカゲのコロニー形成に伴う営巣構造が水路上に形成された結果、水流が阻害されたものと推定される。


なお、森トカゲが水源を目的として営巣したのか、偶然流路上に営巣したのかは不明である。



5. 対応措置


以下の作業を実施した。

•水路を塞いでいた枝葉の除去

•営巣構造の一部破壊

•周囲個体の追い払い


完全な巣の除去は行っていない。

これは営巣内部に卵が存在していたためであり、また部分的な除去のみで水流が回復したためである。



6. 結果


水流は正常な状態まで回復した。

農地への用水供給に支障はないと判断される。



7. 今後の対応


森トカゲの卵は比較的短期間で孵化する可能性があるため、

•数週間後に再度現地を確認

•必要に応じて幼体の分散を促す追い払い


を行うことを提案する。


また、営巣構造が残っている場合、同地点での再営巣が発生する可能性がある。



付記


森トカゲは人間にとって重大な脅威ではないが、営巣場所によっては今回のように水路等の構造物に影響を与える場合がある。


そのため、水源付近の定期的な観察は有効であると考えられる。


【教官コメント】


調査・対応ともに問題なし。

判断も妥当。


孵化後の再確認を行うこと。


——エリーナ

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