81.魔法史館に行こう!
朝、起きてご飯を食べたらすぐに魔法館に向かった。
受付でコインを見せると、受付の人から「研究室でお待ちくださいとの伝言です」と言われた。言われた通り、研究所のほうに通されたあと、ロデルさんの研究室に入り椅子に座る。今日はジンはいないのか、実験室の扉は施錠されていなかった。
しばらく待っていると、ロデルさんがやってきた。
「おはようございます、一昨日ぶりですね、ディート」
「おはようございます、ロデルさん」
「では、早速本題に入るのですが、魔法史館の方に問い合わせたところ、よろこんで受け入れてくれましたよ。魔法史館副館長は今からでも来ていいと言っていましたが、もう向かいますか?」
「では、お願いします」
「わかりました。案内をしますので、ついてきてください」
どうやら無事入れるようだ。良かった良かった。それに俺が来ることに対しても、ネガティブじゃなさそうだし。すでに一波乱あった後だからまた事件が起きるのは嫌だぞ。
「そうですね……事前に魔法史館の副館長について紹介しておきましょうか」
本館から別館までは距離があり、すぐにつくようなものではない。そこを歩いている間にロデルさんからそういわれた。きっと変わり者なんだろうなぁ。
「彼女はクロック・スレン、もっぱらここ魔法都市ではなく古代都市にいる魔法史学者です。正直なことを言うと、あのとき副館長に連絡をするとは言いましたが、ここにはいないんだろうと思ってました。ディートは運がいいですね」
ほらね? 魔法都市所属なのに古代都市にばっかいるとは……でもまぁ、魔法史をやってるんなら当たり前なのかな? それにしたって、ずっといるのは普通なのか気になるけども。普段は誰が代表やってるんだろう。
「ネックスの魔法史版とでも考えてもらえばいいですよ」
わぁ、とてもわかりやすい説明。
「着きました。ここが魔法史館です」
ふむ。本館よりは小さいな。それでも全然大きい部類の建物だが。
本館のほうは石造だったが、こっちは木造らしい。扉がガラス製なので中も見える。中の設備もシックだ。重厚感があって、歴史! って感じがする。
「副館長の部屋は最上階のさらに奥にあります。ここは本館と違って、シュードンはありませんし、階段で参りましょう」
「シュードン?」
「上下に動く箱です。この街だと、エルア書店などに設置されていますね」
ロデルさんと一緒に階段を上っていく。
エルア書店は俺が時属性の魔法書買った店だね。てか、この世界のエレベーター、シュードンって名前なの? え、なんか……ダサくね?
「開発者曰く、シュっと昇ってドンっと落ちるからシュードンらしいです」
名付けが適当すぎる! 開発者館長では? いや、館長のネーミングセンスって別に悪くはないんだよな。魔法館にあるパンフレットには館長がもちろん載ってるわけで、一緒に館長の開発したものも載ってるんだが名前は大してダサくなかった記憶がある。
「開発したのは魔道具館の副館長ですね。あの人は正直ネーミングセンスがありませんから……」
ロデルさんがため息をつく。そういえば、副館長同士の仲っていいのかな、悪いのかな。ロデルさんの様子見る限り悪くはなさそうだな。今のところロデルさん以外の副館長、キャラ濃いな〜ってイメージしかない。ロデルさんもまあぶっ飛んでるところはあるけど、しっかりしてるからね。魔道具館の副館長にもいつかあってみたいなあ。
「ここが副館長のいる部屋ですね」
歩きながら階段を上っていたら、いつの間にやらついていた。足がいてぇぜ。階段は膝にくる。
ロデルさんがノックを三回すると、中から、どうぞ、という女性にしては低い声が聞こえてきた。声質は女性だけど音程が低い。
「やあ、待ってたよ、ディートくん。私はクロック・スレン。魔法史館の副館長だ」
部屋……と、いうよりも、研究室と呼ぶべきだろうか、本棚が壁一面を覆い、なにやら価値の高そうな出土品らしきものが飾られている。とはいえ、散らかってはいない。たぶんほとんど使ってないんだろうな。床が抜けそう。
クロックさんは黒い髪を後ろで一つにまとめていて、三白眼でそばかすがあるカッコいい感じの人だ。
「久しぶりですね、クロック。調査がひと段落したようで」
「いや、調査は正直したりない。ディートくんが帰ったらすぐにもどるつもりだよ」
「? なら、なぜ魔法都市に帰ってきたのですか?」
「オーレンズ教会の聖者から手紙が来たんだ。『汝のもとを訪ねる者あり。直ちに緑の街にもどるべし』、ってね」
クロックは机の上に置いてある紙をみせる。確かに、そこにはたった二文の簡素な文章とオーレンズ教会の紋章が押されている。この紋章はオーレンズ教会以外の組織や個人が使用したらふしぎなちからで死ぬらしいから、きっとマジのオーレンズ教会から来てるんだろう。
オーレンズ教会か、まさかここでその名前が出てくるとは。
「……ディート、あなた、聖者と面識は?」
「ありませんよ」
「ですよね……」
聖者なんて、話したことも見たこともない。ジンの話から転生者疑惑は持っているがそれも一方的なものだ。向こう側が知る由もない、はず。
でも、いまの状況からみて明らかに未来を予言したとしか思えない。ならもしかしたら俺らのことを知っているやもしれん。
「まったく、神の力とは不思議なものだな」
クロックさんは椅子の背もたれに体重を預ける。座っているのは高そうな革の椅子だ。
「さて、ディートくん。魔法史に関して尋ねたいことがあるとロデルさんから聞いたのだが、何が気になるんだ?」
クロックは手を顔の前でくみ、肘をついてこちらを見てくる。
「えーと、魔法の起源についてなのですが、魔法が登場した時期の史料が大量に残っているならそのあとの時代も魔法が残っていると思ったんですけど、実際は魔法が超能力扱いになっているのが不思議だなと思って……なぜ魔法が超能力になってしまったのかが気になりまして」
「ふむ、いい着眼点だ」
満足そうに微笑んで、こういった。
「それは、魔法が一度淘汰されたからだ」
いつの間にか一万PVいってました! わーい! ありがとうございます!




