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異世界で魔法を極めたい  作者: 井上
4.少年期、二年目・春〜夏「ジン」
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79.初めての杖

 時間はまだ夕方になるかどうかくらい。帰るには早すぎるし、まだ何かしたい気もする。エメラルドシティって他に副都市あるのかな?


 地図を開いてみる。副都市のところだけは色が分けられているから見やすい。地図上には緑色の魔法都市エメラルドと青色の学園副都市アクアマリン、そして、ピンク色の工学副都市モルガナイト、そしてモルガナイトタウンに隣接している最近できたらしい黄色の商業副都市ヘリオドールがある。


 モルガナイトタウンに関する説明が地図の端のほうに書かれていたので読んでみる。まあ、字の通り、モルガナイトタウンは工学……魔法ではなく、物理的なことを主にやっているところだ。魔法都市には似合わないように思えるが、需要はもちろんある。主に魔道具方面で。


 術式を刻む基盤に魔力がこもっていたら変なところに魔力が流れる危険性がある。だから、魔法を用いない加工が求められるってわけだな。魔法館の魔道具コーナーでなんかそう説明してました。


 そんな感じで、モルガナイトタウンには職人たちがいっぱいいる。ドワーフはそもそもこの世界には存在しないが、ドワーフっぽいおっさんならいるかもしれない。店も金物店とか、宝石店とか出てるらしいぞ。露店とかもさかんな方らしい。


 魔導式馬車バスのあの枠もだいたいがここで作られているそう。これは地図の裏に豆知識的な感じで書かれていた。こういう観光情報って、地元の人は知らないこと多いよな。俺も正直地元(前世と今世どっちも)の観光案内しろって言われてもできない気がする。


 そもそも俺の今世の地元観光名所があるようなとこじゃねーし……ただの住宅街だよ。森とか川とかなら……まぁ、あるかな……。うちは土地貸して利益得てるからな。質の高い騎士団が常駐しているので治安がいいと人気です。ぜひお越しください。すでにパンパンだから入るには住民を蹴落とさにゃならんがな。


 話が逸れた。アクアマリンタウンから、モルガナイトタウンまで距離はそこまで離れていない。三十分もかからずにつくだろう。すぐそばに道具類が売っている副都市あると便利そうだよね。これは意図した配置なのだろうか。


 というわけでてくてくと歩き、モルガナイトタウンに到着。今度はピンクい。空には煙がもうもうと立ち込めている。吸ったら体調崩しそ~。まだ日の沈む時間ではないが、建物がかなり密集しているので薄暗い。治安は正直悪そう。まあ、ダイジョブじゃろ。俺はひったくりをとらえた男だぞ。(28話参照)


 ただの鉄板とか、加工前の素材も売っているし、加工された後の皿とかそういうのも売ってる。ねじとか、あとはそれらの加工を請け負うであろう鍛冶屋も定間隔で出ているようだ。


 へぇ〜杖とかも売ってるんだ。いろいろ素材とか形があるんだなぁ。動物のものとか、植物のものとか。杖の加工ってどういう風にするんだろう。素材によって決まった形でもあるのかな。趣味だったらナルキスのあのレイピアみたいな杖はどういう人を想定してつくったんだろうか、奇跡的に使いこなせる人に出会ったから良かったと思うけど。


「オウ、そこの坊ちゃん、杖に興味があるのか? アクアマリン……の人じゃぁねえよなあ」

「ああ、今日は観光で来てるんです」

「へえ、観光でこんなとこにくるとは変わってるねぇ。面白いもんなんてそうそうないだろう」


 眺めていたら店主のおっちゃんから話しかけられた。なんかデジャヴ。今日はそういう日なのかな。


「面白いですよ。俺のとこはこんなの売ってないので」

「まあそれならいいが。どうだい、一発撃ってくかい?」


 このセリフだけ見るとパチンコの勧誘みたいだな。それかエッチなとこ。内容はいたって健全だけどさぁ……。


「でも杖を買えるようなお金は持ってないですよ」

「いーんだよ、どうせ減るもんじゃねぇし」


 減るでしょ。なんか耐久値とかが。


「子供がそう遠慮するんじゃないよ。適性も調べてやるから」


 ぐいぐいくるぅこの人……。でもまあ悪い人ではなさそうだ。


「じゃあ……やってみます」

「よしきた。これに触れてみろ」


 差し出されたのは魔道具。ふむ、これ館長のリフレクションオーブのあの触れる部分とちょっと似てるな。触れてみる。うん、中の術式もかなり似通っている。


「これ、いいだろ? 魔法館の館長さんが考案したもんらしい。特許があるから質の低い杖店では御目にかかれない代物だ。本家とは違って適正属性はみれんがな」


 あ、やっぱそうなのね。てか特許とってるんだ。


 ……ふう、一瞬焦った。もしやこの人にまた適正属性がバレるのでは無かろうかと。ドキドキさせるんじゃないよ。クソ、館長め……。


「ふむ、この魔力だとお前さんにあうのは……こいつだな」


 おっちゃんは店内をうろうろし杖を見繕って、俺に渡してくる。


 何かの木の素材にしたもののようで、これまた植物から作られたらしい布が持ち手部分にまかれている。パッと見はただの木の棒だが、持ってみるとバランスなどが実にちょうどいいことがわかる。もっとも俺にとってはデカいけど。俺より少し大きいくらいで、今俺の身長が大体156cmだから、160cmくらい?


「試し打ちは店の裏でできるぞ。やっていくか?」

「やりたいです」


 せっかくだしね。やりたいよね。まあ、杖なんて使っても大して変わらんだろうがな! いままでも杖なしでやれてたわけだし。


「あれが的だ。試しに打ってみてくれ」


 中庭らしきところに出ると、おっちゃんが店から的を持ってきて地面にぶっさす。人型ぁ……的が人型だ……ちょっと躊躇しちゃう。撃つけど。


 杖の先を的に向け、「炎弾ファイアボール」を放つ。杖の先から炎の弾が飛び出て、的に当たる。的は少し焦げたが、どうやら大した傷は与えられなかったようだ。


 そして……俺は驚いて固まっていた。そう、杖の使い心地のよさに。


 術式が構築しやすく……方向を定めやすい。そして威力が向上しているうえに、感覚でわかるが、魔力酔い(マジックドランカー)になりにくい気がする!


 うそ……なんで俺今まで逆張りしてたんだろう……杖めっちゃいいじゃん。素直に使っておけばよかった。だが、今知れたと喜んでおこう。うん。


「あ、これ、返します」

「おうよ。結構よかったろ?」

「はい、使わせてもらってありがとうございました」


 まあ、俺初めての杖だから比較対象ないんだけどね。

おっちゃん(ほう……無詠唱か。この坊主、若いのにやるな……)

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